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経営個人事業主/フリーランス 2023/11/14

青色申告で所得税の負担を軽減!個人事業主が活用できる税制と所得税額のシミュレーション

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所得税の負担を軽減するために、青色申告には様々な制度が備わっています。
今回の記事では個人事業主の所得税の概要を解説したうえで、税額の計算シミュレーションを行います。
これから事業を始める方だけでなく、改めて青色申告にどのようなメリットがあるのか知りたい方もチェックしてみてください。

所得税の課税目安と税額計算

所得税は、個人の所得に対してかかる税金です。
1年間のすべての所得金額から所得控除額を差し引いた残りの金額を課税所得といい、この課税所得に対して税率をかけることで税額を算出することができます。

課税所得 = 所得金額 – 所得控除額
所得税額 = 課税所得 × 税率

※関連記事:控除の計算、ちゃんとできてる?所得控除、税額控除で賢い税金対策を

個人事業主の場合は、主に給与所得、事業所得、雑所得などが所得税の課税対象となります。
このほか、株などを運用している場合には利子所得や配当所得も課税対象です。
ただし、こうした所得が発生した場合、必ず所得税を納めなければならないわけではありません。
所得税には48万円分の基礎控除があるため、その年の所得が48万円を超えない場合には、所得税を納める義務が発生しないのです。
また、パートなどで給与所得控除が適用される場合は55万円分も控除されるため、合計で103万円分の控除を受けることができます。


所得税の税額計算(税率)
所得税には、所得が多くなるほど税率が高くなる、累進課税制度という仕組みが採用されています。
課税所得に対する税率は速算表から確認します。
以下は速算表の抜粋です。
課税される所得金額 税率 控除額
3,300,000円から6,949,000円まで 20% 427,500円
※参考資料:国税庁「タックスアンサーNo.2260 所得税の税率

例えば、課税所得が500万円の場合は、上記の表から税率は20%、控除額は427,500円であることが確認できます。
この表を用いて、課税所得に税率をかけたうえで控除額を差し引いた金額が実際の納税額となります。
これを基準所得税額といいます。

基準所得税額 = 所得税額 – 控除額

上記の例の場合、基準所得税額は以下の通りです。

5,000,000円 × 20% – 427,500円 = 572,500円

なお、当面の間(令和19年まで)は基準所得税額に対して追加で2.1%の復興特別所得税が課されます。

復興特別所得税額 = 基準所得税額 × 2.1%

上記の例の場合、復興特別所得税額は以下の通りです。

572,500円 × 2.1% = 12,022円

青色申告者の特典

確定申告には青色申告と白色申告の2種類があり、所得税の負担を減らすためには、青色申告の特典を利用するのも有効です。
青色申告の代表的な特典は以下の通りです。

  • 青色申告特別控除
  • 青色事業専従者給与・事業専従者控除
  • 貸倒引当金
  • 少額減価償却資産の特例

青色申告特別控除
⇒青色申告をした場合
不動産所得または事業所得を生ずる事業を営む青色申告者は、複式簿記で記帳を行ったうえで貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付して申告期限内に提出している場合、状況に応じて10万円から65万円までを所得から控除することができます。
なお、65万円の控除を受けるためには、その年の仕訳帳と総勘定元帳について優良な電子帳簿の要件を満たすことと、電子申告を行うことが求められます。
その他の場合は、55万円または10万円を限度に所得から控除することができます。
※関連記事:「優良な電子帳簿」とは?電子帳簿保存法で過少申告加算税や青色申告特別控除額が優遇される要件を解説!

⇒青色申告をしなかった場合
白色申告者については、この規定の適用はありません。


青色事業専従者給与
⇒青色申告をした場合
生計を一にしている(生活費を共有している)配偶者や年齢が15歳以上の親族に支払った給与は、事前に提出された「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載された金額の範囲内で、全額を必要経費に算入することができます。
なお、この時対象となる親族は、所得控除の計算時は控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。
※関連記事:「生計を一にする」とは?扶養控除の要件や適用金額を総チェック!【2023年の改正対応】

⇒青色申告をしなかった場合
白色申告者については、この規定の適用はありません。
ただし、事業専従者控除として、配偶者は最高86万円、15歳以上の親族は最高50万円を限度に控除を受けられる制度があります。


貸倒引当金
⇒青色申告をした場合
売掛金や貸付金などが回収できなくなった場合の損失に備えて、年末の売掛金や貸付金の残高のうち、一定の割合(5.5パーセント以下)を貸倒引当金として必要経費に計上することができます。

⇒青色申告をしなかった場合
白色申告者は、会社更生など特定の事由に該当する債権に限って、その事由に応じた一定の割合で貸倒引当金を設定することができます。


少額減価償却資産の特例
⇒青色申告をした場合
取得価額が30万円以下などの要件を満たす減価償却資産を取得して業務に使用した場合、その年の取得価額の全額を必要経費に計上することができます。
ただし年間300万円が限度となります。

⇒青色申告をしなかった場合
白色申告者は、この規定の適用は認められていません。
このほかにも租税特別措置法などで減価償却計算の特例が定められる場合がありますが、基本的には青色申告者のみが適用対象となっています。


純損失の繰越しと繰戻し
⇒青色申告をした場合
事業から生じた純損失の金額(赤字)を、翌年以後3年間(特定の災害によるものについては最大5年間)にわたって、順次各年分の黒字所得の金額から控除することができます。
また、前年も青色申告をしている場合は、純損失の繰越しに代えて、その損失額が生じた年の前年に繰り戻して、前年分の所得税の還付を受けることもできます。

⇒青色申告をしなかった場合
白色申告者の場合は、変動所得や事業用資産などの特定の事由から生じた損失に限って損失の繰越控除が認められています。
純損失の繰り戻しによる還付については認められていません。

所得税額の計算シミュレーション

ここからは、例を用いて青色申告と白色申告それぞれの試算を行ってみます。

例:
個人事業主Aさんの所得税に関する試算とします。
Aさんに関する情報は以下の通りです。
  • 事業所得を生ずる事業を行っている。
    ※この事業の他に所得は発生していない。
  • 65万円の青色申告特別控除の要件を満たしている。
  • 適用可能な所得控除は以下の通り。
    ・基礎控除:48万円
    ・社会保険料控除:60万円
    ・生命保険料控除:12万円
    ・地震保険料控除:5万円
  • 所得税の速算表は以下の通り
課税される所得金額 税率 控除額
3,300,000円から6,949,000円まで 20% 427,500円
Aさんには配偶者のBさんがいることとします。
Bさんに関する情報は以下の通りです。
  • Aさんの事業に専ら従事している。
    ※この給与の他に所得は発生していない。
  • 給与の額は毎月10万円、年間120万円。
  • 青色事業専従者給与の要件を満たしている。

Aさんの税額計算結果の要約表
今回は、所得税及び復興特別所得税についての試算と比較を行います。
試算結果の要約は以下の通りです。
青色申告 白色申告 差額(青色-白色)
事業所得の計算
事業利益 7,000,000 7,000,000 0
青色申告特別控除 650,000 0 650,000
青色事業専従者給与・事業専従者控除 1,200,000 860,000 340,000
事業所得の金額 5,150,000 6,140,000 -990,000
所得控除の計算
基礎控除 480,000 480,000 0
社会保険料控除 600,000 600,000 0
生命保険料控除 120,000 120,000 0
地震保険料控除 50,000 50,000 0
所得控除の合計 1,250,000 1,250,000 0
課税所得~所得税額の計算
課税される所得金額 3,900,000 4,890,000 -990,000
基準所得税額 352,500 550,500 -198,000
復興特別所得税額 7,402 11,560 -4,158
所得税及び復興特別所得税の合計額 359,902 562,060 -202,158
白色申告の場合
青色申告特別控除の適用はありませんが、事業専従者控除の適用要件を満たしているため、配偶者であるBさんについては86万円の控除を受けることができます。
そのため、事業利益から事業専従者控除と所得控除を差し引き、Aさんの課税所得は以下となります。

7,000,000円 – 860,000円 – 1,250,000円 = 4,890,000円

速算表を確認すると、基準所得税額は以下の通りです。

4,890,000円 × 20% – 427,500円 = 550,500円

この金額に復興特別所得税額を考慮すると、合計は562,060円となります。

550,500円 × 2.1% = 11,560円
550,500円 + 11,560円 = 562,060円

青色申告の場合
65万円の青色申告特別控除の要件を満たしていることから、青色申告特別控除額は65万円となります。
また、AさんからBさんに対して払われている年間120万円の給与は、Aさんの事業所得から控除可能です。
※この給与についてはBさんの所得税の対象となるため、AさんとBさんの税負担を総合して考える場合には、Bさんについて支払った給与に関するBさんの所得税の適用関係についても考慮する必要があります。
今回はAさんの所得のみで検討します。

これらを考慮するとAさんの課税所得金額は以下の通りです。

7,000,000円 – 650,000円 – 1,200,000円 – 1,250,000円 = 3,900,000円

速算表を確認すると、基準所得税額は以下の通りです。

3,900,000円 × 20% – 427,500円 = 352,500円

この金額に復興特別所得税額を考慮すると、合計は359,902円となります。

352,500円 × 2.1% = 7,402円
352,500円 + 7,402円 = 359,902円


青色申告と白色申告の差分
以上の計算から、この例の場合、白色申告の所得税と青色申告の差は以下の通りとなります。

562,060円 – 359,902円 = 202,158円

これらの差額が生じている項目については表の右列にも記載していますが、青色申告の場合は青色申告特別控除と青色事業専従者給与を必要経費に算入できる規定の適用があるため、同じ前提であっても20万円ほど負担が少なくなっていることがわかります。
なお、今回の例では所得税と復興特別所得税についてのみ比較していますが、実際はこれらに加えて、住民税、事業税、社会保険料などの金額にも影響が及ぶことになりますので、注意が必要です。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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1年間に生じた所得金額を正しく計算して申告するためには、日々の記帳を正確に行い、関連書類を適切に保存しておく必要があります。
今回ご紹介した通り、青色申告には様々なメリットがありますが、これを理解したうえで一度、自分の手で所得税額を試算してみると新たな発見があるかもしれません。

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