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経理/財務消費税 2023/11/28

輸出消費税は還付される?輸出免税の仕組みと必要な手続きとは

国内での売買取引には基本的に消費税が発生します。
ただし、海外の取引先を相手に輸出取引を行っていると、消費税が還付される場合があります。
今回の記事では、輸出取引における免税の概要と、還付の仕組みについて解説します。

輸出免税取引

消費税は国内での商品やサービスなどの提供に対して課される税金です。
そのため、商品の輸出や国際運送など、国外を対象とした取引には消費税が課されません。
日本の消費税の計算上、輸出取引については免税取引として消費税率を0%とし、消費税が課税されない仕組みが作られています。


輸出免税の適用要件
消費税法では、事業として行う資産の譲渡、貸付け、サービス(役務)の提供などを、「資産の譲渡等」といいます。
事業者が行う資産の譲渡等について、輸出免税を適用するための要件は以下の通りです。

  • 課税事業者によって行われるものであること。
  • 国内において行われるものであること。
  • 一定の特例の適用がある場合を除いて、課税資産の譲渡等に該当するものであること。
  • 輸出取引や輸出類似取引に該当するものであること。
  • 輸出取引や輸出類似取引に該当するものであることにつき、証明がなされたものであること。
※参考資料:国税庁「消費税基本通達7-1-1(輸出免税の適用範囲)


輸出取引の範囲
輸出免税を適用できる「輸出取引」の範囲については、以下の通りです。

  • 日本からの輸出として行われる資産の譲渡または貸付け
  • 国際輸送、国際通信、国際郵便などで一定のもの
  • 非居住者に対する鉱業権、工業所有権、著作権、営業権などの無体財産権の譲渡または貸付け
  • 非居住者に対する一定の役務の提供
※参考資料:国税庁「タックスアンサー No.6551 輸出取引の免税

上記の通り、日本から外国に向けての輸出や、外国貨物の譲渡、国際輸送・国際通信などは輸出取引として扱うことができます。
外国貨物とは外国から日本に到着した貨物において、輸入許可前のものを指します。
このほか、日本に住所や居所がない非居住者に対する著作権などの無形資産の貸付けや役務の提供も輸出取引に含まれます。

非課税取引、不課税取引との違い

免税取引と似たものに、非課税取引と不課税取引があります。
それぞれ区別しておきましょう。


非課税取引
国内取引のうち、課税対象とされない取引は非課税取引といいます。
例えば、土地や有価証券などの譲渡、預貯金や貸付金の利子などが該当します。
非課税の売上に対しては消費税が課税されません。
また、非課税取引のために行った課税仕入れについては、原則としてその仕入れに係る消費税額を控除することはできません。


不課税取引
課税取引、免税取引、非課税取引のどの条件にも当たらない取引を不課税取引といいます。
例えば寄付や贈与、給与などが該当します。
不課税取引には消費税が課税されません。


免税取引と非課税・不課税取引との違い
免税取引は消費税の課税対象とされていますが、税率を0%とすることで結果的に売上に対する消費税が課されないようにしています。
これに対して、非課税取引や不課税取引は、消費税のそもそもの課税対象から除かれているために消費税が課税されないという点に違いがあります。

※参考資料:国税庁「タックスアンサー No.6209 非課税と不課税の違い


課税売上割合の計算上の違い
課税売上割合は分母を総売上高、分子を課税売上高とした割合で、課税売上高がどれくらい生じているかを示すものです。
課税売上割合が95%未満だと、自社が負担した消費税の一部が控除できなくなる場合があります。


非課税取引は、分母のみに算入しますが、不課税取引は、そもそも消費税の適用の対象にならない取引のため、分母にも分子にも算入しません。
なお、免税売上高は課税売上高と同じように分母にも分子にも両方に含まれます。
免税取引、非課税取引、不課税取引は、売上に対して消費税がかからないという点では同じですが、こうした消費税計算上での取り扱いに違いがあるので区別して管理する必要があります。

輸出消費税の還付について

国への消費税の納付税額は、受け取った消費税から仕入れや経費にかかった消費税を差し引いて算出します。

国への消費税の納付税額 = 売上税額 – 仕入税額

※消費税の実際の納税額は、国への納付分に応じて一定の金額として計算される地方消費税についても考慮する必要があります。

輸出免税取引については、売上を行った際の消費税を0%とするため消費税がかかりませんので、売上税額は0円となります。
一方で、その輸出免税取引を行うのにかかった経費については仕入税額として控除することができます。
そのため、輸出免税取引における原材料の大半を国内で調達している企業などでは、期末に消費税の申告をすることで消費税が還付される可能性があります。
例えば、売上税額が80万円、免税取引の仕入れ分を含めた仕入税額が100万円の場合、納付税額は△20万となることから、必要な手続き行うことで消費税の還付を受けることができる可能性があるのです。


還付を受けるための事前準備
消費税の還付を受けるには、当然ながらそもそも課税事業者であることが条件となります。
免税事業者は「課税事業者選択届出書」を提出することで課税事業者になることができます。
ただし、課税事業者を選択すると原則として2年間は継続して課税事業者とならなくてはいけないため、事業の状況を考慮しながら慎重に選択する必要があります。


輸出取引の証明
輸出免税取引として納税額を計算するためには、行っている取引が輸出取引であることを証明した輸出許可書などを入手し、納税地に7年間保存する必要があります。
区分 輸出証明書等
輸出として行われる資産の譲渡または貸付けである場合 輸出の許可を受ける貨物である場合 輸出許可書など
(税関長が証明した書類)
郵便物として輸出する場合 その輸出した資産の価額が20万円を超える場合 輸出許可書
(税関長が証明した書類)
その輸出した資産の価額が20万円以下の場合 郵便物を輸出した事実が記載された帳簿または書類で一定の要件を満たしているもの
国際輸送、国際通信、国際郵便及び信書便 国際輸送等があった事実が記載された帳簿または書類で一定事項が記載されたもの
非居住者に対する鉱業権、工業所有権、著作権、営業権等の無体財産権の譲渡または貸付け、役務の提供など 契約書その他の書類で一定事項が記載されたもの
※参考資料:国税庁「消費税法基本通達 7-2-23」など

例えば、取引自体が輸出取引に該当するものであっても、事業者が輸出許可書などの書類を保存していない場合は、輸出免税の適用を受けることができなくなりますので注意してください。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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今回は輸出取引について解説しました。
インターネット販売など、輸出取引が行われる場面は増加しています。
消費税の還付を受けるためには前提として課税事業者になる必要があることや、輸出証明の保存が必要となることを忘れないようにしてください。

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