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経理/財務公認会計士の仕事術 2026/02/18

第69回 比較分析のいろいろ(9) ~B/Sの月次推移分析(その6)

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前回に引き続き「比較分析」をテーマに「B/Sの月次推移分析」についてお送りいたします。本テーマは全8回に記事を分けており、今回は第6回目となります。

1.はじめに

経理部では、B/SやP/Lの比較分析を行い、経営者などに著増減理由の説明を行う場面も少なくありません。年度決算時の比較分析が重要なことは言うまでもありませんが、年度決算に向けて期中の段階で比較分析を実施することも大事です。 本稿では現在、B/Sの月次推移分析に当たっての着眼点について、科目ごとに説明を進めていますが、今回は「仕入債務」を取り上げることにします。

2.ケースで考えるB/Sの月次推移分析(その6)

まずは、ある経理部での様子を描いた【ケース9】をご覧ください。

【ケース9】
C社では年度決算作業の真っ最中ですが、経理スタッフたちには混乱が生じているようです。

「えっ、いつの間にか買掛金の残高がこんなに増えていたなんて…」

「この買掛金、そもそも計上して良かったのだろうか…」

「……」

あるいは逆にこんなこともあるかもしれません。

「えっ、買掛金の残高がこんなに減っていたなんて…」

「買掛金、これで全部なのだろうか…」

「……」

はたして所定の期日までに決算作業は終了するのか、心配な状況です。

【ケース9】には、年度決算作業の段階で仕入債務に関わるいろいろな問題が発覚して、経理スタッフたちが混乱している様子が描かれています。ここで挙がっているような問題について、年度決算を迎えてから対応するのではなく、期中のもっと早い段階から対応するためにも、是非B/Sの月次推移分析を実施したいところです。

以下では、B/Sの月次推移分析について、主要な勘定科目ごとに着眼点を考えてみようと思います。


着眼点7 仕入債務(買掛金、支払手形等)
月々の売上高はウォッチしている企業でも、仕入高、そして買掛金・支払手形といった仕入債務残高についてはウォッチしていないということもあるでしょう。ただし、現金仕入が中心の企業を除けば、仕入債務残高は多くの企業で重要性が高い項目ではないかと考えられます。

その一方で、仕入債務にはいろいろな相手先に対するものが含まれていたり、同じ相手先に対するものでも別の日の仕入取引から生じたものが含まれていたりするため、詳細に中身を見ていくことがなかなか大変な場合があります。

そこで、仕入債務残高の月次推移をウォッチして、まずは大局的な観点から分析してみることが効果的です。

仮に、買掛金残高の月次推移が【図表1】のとおりであったとしましょう。

【図表1】買掛金残高の月次推移分析

(単位:千円)
科目 前期末残高 4月 5月 6月 (以降省略)
買掛金 25,000 20,000 10,000 22,000 XXX

仕入債務残高に著しい増減が生じている場合、【図表1】で言えば、5月の減少や6月の増加になりますが、こうした場合は以下のような問題が起きている可能性もありますので、気を付けてください。
(仕入債務が増加している場合に気を付けたい点の例)
  • 仕入計上や仕入債務支払いの会計処理を誤っているかもしれない。
  • 支払いが遅延している仕入債務が生じているかもしれない。
  • 本来なら仕入計上できないものを計上しているかもしれない。
  • 過剰発注が生じているかもしれない。
  • 今後、資金繰りの悪化につながるおそれがある。
(仕入債務が減少している場合に気を付けたい点の例)
  • 仕入計上や仕入債務支払いの会計処理を誤っているかもしれない。
  • 本来なら仕入計上すべきものがモレているかもしれない。
  • 資金繰りが悪化しているおそれがある。
仕入計上のパターンにはいくつかのものがあり、月次での処理は企業によって大きく異なる可能性があります。

例えば、次のようなパターンがあります。
  • ①仕入先からの納品(及びその検収)に基づいて仕入計上するパターン
  • ②仕入先からの請求に基づいて仕入計上するパターン
  • ③仕入代金を支払ったときに仕入計上するパターン
①から③の中では、①の処理が最もあるべき仕入計上に近いパターンになります。自社主体で処理を進めることができますが、その分事務処理は煩雑になります。

②の処理の場合、事務処理は楽になりますが、実際の仕入(納品or検収)時よりも仕入計上のタイミングが遅くなります。また、仕入先から請求書が届かないと仕入計上ができないなど、自社主体で処理するには難があります。

③の処理の場合は、実際の仕入(納品or検収)時よりもさらに仕入計上のタイミングが遅くなり、基本的に買掛金が計上されないということになります。

企業によっては、月々の売上原価は商品仕入高をそのまま費用処理(売上原価処理)しているだけということもありますが、①~③のいずれの処理を行うかによって月々の損益も大きく変わってきます。月々の損益を実態に近い金額で把握したい場合には①の処理が適しています。

なお、②や③の処理をしている場合は特に、仕入先からの請求書の中身をよくチェックしておかないと、請求書の誤りに気付かないまま、誤った金額で仕入計上してしまうおそれが高まる点にも留意が必要です。

以上見てきたように、仕入(及び仕入債務)の計上方法にはいくつかのパターンがあり、仕入債務計上額にも違いが出てきますが、仕入債務残高がある場合にはその推移をウォッチし、気になる動きがあればその理由を確認するようにしましょう。


また、大局的な観点から分析する上では、月次段階で仕入債務の残高推移を見るだけでなく、必要に応じて仕入債務の回転期間のチェックをしてみることが考えられます。回転期間を毎月チェックする必要はありませんが、仕入債務が大きく増減したような月があれば、その増減が売上高(あるいは売上原価)の増減に伴うものなのか、そうではなさそうなのかといったところも気になりますので、回転期間もチェックしてみることが考えられます。

なお、月次の段階で仕入債務回転期間を計算する場合、「第65回 比較分析のいろいろ(5) ~B/Sの月次推移分析(その2)」「売上債権」のところで説明したのと同様、計算式の分母は「1日当たり」ないし「1カ月当たり」にしてください。

仕入債務回転期間 = 仕入債務残高 ÷ 売上高

※分母の売上高は、「1日当たり売上高」あるいは「1カ月当たり売上高」。 売上高の代わりに「売上原価」を使用することもある。

【図表2】買掛金残高と回転期間の月次推移分析

(単位:千円)
科目 前期末残高 4月 5月 6月 (以降省略)
①買掛金 25,000 20,000 10,000 22,000 XXX
②売上高(累計) 365,000 25,000 55,000 85,000 XXX
③累計日数(日) 365日 30日 61日 91日 XXX
④回転期間(日) 25日 24日 11日 24日 XXX

(注)①はB/Sの買掛金残高、②はP/Lの売上高(当期累計)、 ④=買掛金残高 ÷ 1日当たり売上高=① ÷(②/③)
買掛金の回転期間も計算してみた結果、5月は回転期間が11日と、4月の回転期間(24日)から大きく短縮してしまっています。売上高は伸びている一方、買掛金残高が減少しており、何らかの問題(仕入計上モレ、買掛金の支払いが早まって資金繰りが悪化しているなど)が発生している可能性があるかもしれないといったことが読み取れます。上述した「仕入債務が減少している場合に気を付けたい点の例」も念頭に置いて、さらにその原因を追究した方が良いかもしれません。

また6月は、買掛金残高は増加したものの、回転期間は24日と、通常月の回転期間(24~25日)と同水準になっており、正常な状態に戻っているといった分析ができるかもしれません。

なお、ある仕入先から大口の仕入があったため、本来であれば前月よりも仕入債務が多くなるはずのところ、仕入計上がモレていて従来月と同じ水準になってしまっているといったこともあり得ます。知り得た情報から、月次推移に違和感を覚えた場合も、回転期間分析などをしてみることが考えられます。

3.おわりに

本稿では現在、期中の段階で行われるB/Sの月次推移分析について、主要な科目ごとに着眼点を説明していますが、このうち今回は「仕入債務」を取り上げました。

数あるB/Sの科目の中でも、「仕入債務」は多くの企業にとって重要性の高い科目であり、月次段階からウォッチすることで、何か問題が生じれば早め早めに対応しておきたい項目と言えるでしょう。仕入債務の残高が著しく増減している場合、増加している場合と減少している場合とでは異なる問題が起きている可能性があります。それぞれの場合に応じて気を付けたい点を上げて説明しましたので、増減の方向に応じて参照して頂ければと思います。

次回、引き続き他の科目に関する説明もしていきますので、そちらも併せてお読み頂き、実務上の参考にして頂ければ幸いです。


(提供:税経システム研究所)
**********

いかがでしたでしょうか。「比較分析」における「B/Sの月次推移分析」についてのご説明、第6回目でした。
次回「第70回 比較分析のいろいろ(10) ~B/Sの月次推移分析(その7)」でまた続きをご紹介させていただきます。お楽しみに!
なお、このコラムの提供元である税経システム研究所については下記をご参照ください。

税経システム研究所
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