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経理/財務公認会計士の仕事術 2026/02/26

第70回 比較分析のいろいろ(10) ~B/Sの月次推移分析(その7)

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前回に引き続き「比較分析」をテーマに「B/Sの月次推移分析」についてお送りいたします。本テーマは全8回に記事を分けており、今回は第7回目となります。

1.はじめに

経理部では、B/SやP/Lの比較分析を行い、経営者などに著増減理由の説明を行う場面も少なくありません。年度決算時の比較分析が重要なことは言うまでもありませんが、年度決算に向けて期中の段階で比較分析を実施することも大事です。

本稿では現在、B/Sの月次推移分析に当たっての着眼点について、科目ごとに説明を進めていますが、今回は「借入金」を取り上げることにします。

2.ケースで考えるB/Sの月次推移分析(その7)

まずは、ある経理部での様子を描いた【ケース10】をご覧ください。

【ケース10】
C社では年度決算作業の真っ最中ですが、経理スタッフたちには混乱が生じているようです。

「この借入金残高、銀行からもらった返済スケジュール表と合ってないぞ…。なんでだ?」

「支払利息がこんなに少なくていいのかな…。もしかして期中の処理が間違っていたのか? 調べ直さないといけないかも…」

「……」


はたして所定の期日までに決算作業は終了するのか、心配な状況です。
【ケース10】には、年度決算作業の段階で借入金に関わるいろいろな問題が発覚して、経理スタッフたちが混乱している様子が描かれています。ここで挙がっているような問題について、年度決算を迎えてから対応するのではなく、期中のもっと早い段階から対応するためにも、是非B/Sの月次推移分析を実施したいところです。

以下では、B/Sの月次推移分析について、主要な勘定科目ごとに着眼点を考えてみようと思います。


着眼点8 借入金
借入金は、現金預金や売掛金、買掛金のように日々の取引で絶えず残高が動くようなものではありません。しかし、その返済が遅れるようなことがあれば企業の存続にも関わるような重要項目です。

借入金残高が増えると、将来その返済をしなければならないので、残高が増えすぎないように残高の推移をウォッチしておくことも必要です。

そして、借入金は返済条件や返済期日が約定されているので、現在ある借入金については今後残高がどう推移していくのかを予めつかんでおくことが可能だという点が特徴的です。

また、借入金に対しては利息がかかるため、借入金があればそれに対する支払利息も発生しているはずで、B/Sの借入金残高とP/Lの支払利息計上額との間に密接な関連性があるといった特徴もあります。

このような借入金に関わる特徴を踏まえ、以下ではB/Sの月次推移分析をする際の視点などを考えてみることにしましょう。

仮に、借入金残高の月次推移が【図表1】のとおりであったとしましょう。

【図表1】借入金残高の月次推移分析

(単位:千円)
科目
前期末残高 4月 5月 6月 以降省略
短期借入金 20,000 20,000 20,000 40,000 XXX
長期借入金 30,000 50,000 50,000 48,000
(1)借入金の増加
借入を実行した場合、通常、経理部はその事実をつかんでいるはずなので、借入金の増加については、その認識どおりの動き(=増加)が月次推移に現れているかという観点でウォッチすれば良いでしょう。

季節的な借入(賞与支給、納税など)で特定の月に一時的な借入を行うこともあります。過去の借入の月次推移も分析しておくことで、「どの時期に何のための資金が必要になり、その借入が必要になるかもしれない」ということは、事前に把握しておくようにしましょう。借入金は残高以外にも重要な情報があります。借入が増加した場合は、その都度、資金使途や、返済条件、最終返済期日、利率、担保などの情報についても、すぐ分かるように整理しておくようにします。

借入金は、借入先別・契約別での管理が原則となりますので、期中の段階から、借入先別・契約別の内訳管理をしておいた方が良いでしょう。

併せて、今後の資金繰りを考える上でも、金融機関から借入元本と利息の返済スケジュール表を入手・保管し、借入の返済スケジュールがすぐ分かるように整理しておくようにしましょう。

借入金残高が大きく増加した際には、財務安全性に関わる経営指標(自己資本比率、流動比率、固定長期適合率など)に大きな影響が出ていることもあり得ます。年度決算が固まって金融機関に決算書を見せたところ、財務安全性の指標の悪化を指摘されるかもしれません。以前よりも返済のリスクが高まってきたと懸念されれば、今後の融資条件に不利な影響(融資額の抑制や利率上昇など)が生じることもあり得ます。借入残高が大きく増加した際などに財務安全性の指標もチェックしておくと、期末までに改善の施策が取れるかもしれません。

財務安全性に関わる経営指標

自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資本
流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債
固定長期適合率 = 固定資産 ÷(自己資本 + 固定負債)
(2)借入金の減少
借入金の減少は、通常は予め定めた返済条件にしたがったものであるはずです。したがって、金融機関から入手した借入金の返済スケジュール表などを活用して、あるべき残高を予めつかんでおき、月次B/Sの借入金残高がそれと合致しているかをチェックするという方法もあるでしょう。

借入金に関しては、元本と利息を併せて返済することが少なくありません。その場合、返済した額のうち元本部分と利息部分の金額を誤って会計処理してしまうと、月次B/Sの借入金残高(及びP/Lの支払利息)が正しい金額になっていないといった事態が生じます。そのため、上述したように、あるべき残高を予めつかんでおき、月次B/Sの借入金残高がそれと合致しているかをチェックすれば、こうした誤りにすぐ気付くといった効果が期待できます。

なお、繰上返済などイレギュラーな取引がある場合は、通常、経理部はその事実をつかんでいるはずなので、そのような借入金の減少については、その認識どおりの動き(=減少)が月次推移に現れているかという観点でウォッチすれば良いでしょう。

(3)支払利息計上額との整合性
借入に対しては利息が付き物ですから、必要に応じて期中の段階で、借入金残高と支払利息計上額との整合性をチェックしてみると良いでしょう。

借入契約の本数が少なければ、B/Sの借入金残高やP/Lの支払利息計上額が、返済スケジュール表と合致しているかをチェックする方法が考えられます。

また、借入契約がある程度以上の本数あるようであれば、支払利息のオーバー・オール・チェックと言う方法を使って整合性をチェックすることも考えられます。これは「支払利息の概算額」を算出してみて、それとP/Lの支払利息計上額とを比較して、異常な差異がないかをチェックする方法です。

【図表2】借入金残高の月次推移と支払利息計上額との整合性チェック

(単位:千円)
科目
前期末残高
(①)
4月
(②)
5月
(③)
6月
(④)
①~④計
(⑤)
平均残高
(⑤÷4)
短期借入金 20,000 20,000 20,000 40,000
長期借入金 30,000 50,000 50,000 48,000
50,000 70,000 70,000 88,000 278,000 69,500

「支払利息の概算額」は、例えば以下のように算出することができます。「借入金平均残高」は、【図表2】のように毎月末の借入金残高の平均値を使うことなどが考えられます。

また、「平均利率」は、【図表3】のように簡便的に前期末時点の借入金残高と利率の内訳をもとに加重平均利率を算出し、それを使用することなどが考えられます。

【図表3】平均利率の算出方法の例


内訳
前期末残高(千円)
(①)
利率
(②)
加重平均
(①÷50,000×②)
短期借入金A 10,000 3.0% 0.6%
短期借入金B 10,000 2.5% 0.5%
長期借入金C 20,000 2.5% 1.0%
長期借入金D 10,000 3.5% 0.7%
50,000 2.8%
これらをもとに支払利息の概算額を計算することができます。
支払利息の概算額=借入金平均残高×平均利率×経過月数/12ヵ月
この概算額と実際の支払利息計上額とを比較し、異常な差異がないかをチェックするわけです。



3.おわりに

本稿では現在、期中の段階で行われるB/Sの月次推移分析について、主要な科目ごとに着眼点を説明していますが、このうち今回は「借入金」を取り上げました。

借入金はその返済が遅れるようなことがあれば企業の存続にも関わるような重要項目です。月次段階と言えどもきっちりと管理しておきたいところです。上述のとおり月次推移から分析できることもいろいろありますので、参照して頂ければと思います。

次回、引き続き他の科目に関する説明もしていきますので、そちらも併せてお読み頂き、実務上の参考にして頂ければ幸いです。


(提供:税経システム研究所)
**********

いかがでしたでしょうか。「比較分析」における「B/Sの月次推移分析」についてのご説明、第7回目でした。
次回「第71回 比較分析のいろいろ(11) ~B/Sの月次推移分析(その8)」でまた続きをご紹介させていただきます。お楽しみに!
なお、このコラムの提供元である税経システム研究所については下記をご参照ください。

税経システム研究所
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