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経理/財務公認会計士の仕事術 2026/02/05

第67回 比較分析のいろいろ(7) ~B/Sの月次推移分析(その4)

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前回に引き続き「比較分析」をテーマに「B/Sの月次推移分析」についてお送りいたします。本テーマは全8回に記事を分けており、今回は第4回目となります。

1.はじめに

経理部では、B/SやP/Lの比較分析を行い、経営者などに著増減理由の説明を行う場面も少なくありません。年度決算時の比較分析が重要なことは言うまでもありませんが、年度決算に向けて期中の段階で比較分析を実施することも大事です。

本稿では現在、B/Sの月次推移分析にあたっての着眼点について、科目ごとに説明を進めていますが、今回は「固定資産」を取り上げることにします。

2.ケースで考えるB/Sの月次推移分析(その4)

まずは、ある経理部での様子を描いた【ケース7】をご覧ください。

【ケース7】
C社では年度決算作業の真っ最中ですが、経理スタッフたちには混乱が生じているようです。

「建物附属設備の取得って全部資産計上して良かったのだろうか…」
「機械装置の入れ替えがあったけど、前に使っていた機械装置の除却処理って済んでいただろうか…」
「……」


はたして所定の期日までに決算作業は終了するのか、心配な状況です。
【ケース7】には、年度決算作業の段階でいろいろな問題が発覚して、経理スタッフたちが混乱している様子が描かれています。ここで挙がっているような問題について、年度決算を迎えてから対応するのではなく、期中のもっと早い段階から対応するためにも、是非B/Sの月次推移分析を実施したいところです。

以下では、B/Sの月次推移分析について、主要な勘定ごとに着眼点を考えてみようと思います。


着眼点5 固定資産
固定資産は流動資産と比べて、月々の残高に大きな増減が生じないことも少なくありません。逆に言うと、ある月に著しい増加や減少が生じていれば、その中身をきっちりと押さえておく必要があります。

仮に、固定資産残高の月次推移が【図表1】のとおりであったとしましょう。

【図表1】固定資産残高の月次推移分析

(単位:千円)
科目 前期末残高 4月 5月 6月 (以降省略)
建物附属設備 50,000 50,000 50,000 72,000 XXX
機械装置 42,000 42,000 52,000 52,000 XXX
減価償却累計額 XXX XXX XXX XXX XXX
土地 240,000 240,000 160,000 160,000 XXX

(注)上表の「建物付属設備」及び「機械装置」は、減価償却累計額控除前の金額である。
多くの企業では、固定資産の増減取引が頻繁に発生することは少ないでしょうから、もし著しく増減している場合には、経理部では「あの資産を購入した分ね」「あの資産を売却した分ね」などと、すぐにその内容が頭に浮かぶことも少なくないはずです。したがって、前回までに説明した「現金及び預金」「売上債権」「棚卸資産」などと比べると、月次推移を分析する重要性は低くなるかもしれません。

ただし、固定資産残高に著しい増減が生じている場合には、以下のような問題が起きている可能性もあります。また、増加(減少)しているはずなのに増加(減少)していないといった違和感を覚え、そこから問題に気付くこともあり得ます。

(固定資産が増加している場合に気を付けたい点の例)

  • 資産取得にかかる会計処理を誤っているかもしれない。
  • 財務の安全性に関わる経営指標に大きな影響が生じているかもしれない。

(固定資産が減少している場合に気を付けたい点の例)

  • 資産売却等の会計処理を誤っているかもしれない。
  • 資産取得の会計処理がもれていたり、遅れていたりするかもしれない。
したがって、固定資産残高の推移をウォッチし、気になる動きがあればその理由や内容を確認するようにしましょう。

以下では、増加と減少に分けて、気を付けたい点について考えてみることにします。なお、以下では固定資産の取得や売却等の処理誤りのチェックについても取り上げていますが、通常は取得や売却等の時点できっちりとチェックがされるはずですので、月次推移チェックはダブルチェック的な位置付けで捉えて頂ければと思います。

(1)増加
固定資産が著しく増えている場合、【図表1】で言えば、建物附属設備が6月に、機械装置が5月に著しい増加が生じていますが、固定資産は長期にわたってB/Sに計上され続けるため、取得時の会計処理を誤ってしまったら、その後の各期の会計数値も誤ったものになってしまいます。修繕費など本来なら費用に計上すべきものが固定資産に計上されてしまっていることもありますので、資産計上して良いものかといった観点からチェックしてみることも考えられます。また、機械装置を新しいものに入れ替えた場合などであれば、新規の機械装置の資産計上処理が正しくなされていることに加えて、前に使っていた機械装置の除却処理が正しくなされているかの確認も必要になるでしょう。

減価償却資産を取得した場合には、減価償却計算も必要になります。期中では正確な減価償却計算をしないでおき、年度決算時にまとめて正確に計算することもありますが、そんな場合でも、使用開始月や耐用年数など、減価償却計算に必要な情報は取得の段階で押さえておきましょう。

なお、重要な固定資産の取得がある場合には、併せて、自己資金なのか設備資金を借り入れたのかといった、取得資金の出所も説明が付くようにしておいた方が良いでしょう。取得資金の出所によっては、財務の安全性に関わる経営指標に大きな影響が生じることもあり得ます。例えば、以下のような経営指標に影響が生じているかもしれません。

自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資本(総資産)
固定比率 = 固定資産 ÷ 純資産
固定長期適合率 = 固定資産 ÷(固定負債 + 純資産)
例えば、設備資金を借入でまかなったことで、返済を要しない自己資本に対して返済を要する負債の割合が高まり、財務の安全性を見る経営指標の一つである「自己資本比率」が大きく低下しているかもしれません。また、固定資産の調達資金の出所が短期の借入だったりすれば、固定資産を自己資本(純資産)でまかなえているかを見る経営指標である「固定比率」が上昇(悪化)しているものと思われます。また、長期にわたって使用できる資金(純資産と固定負債)でまかなえているかを見る経営指標である「固定長期適合率」が大きく低下しているかもしれません。こうした経営指標は、金融機関が融資先を査定する際にも考慮されますので、留意しておくと良いでしょう。

(2)減少
重要な固定資産を売却した場合には、固定資産に著しい減少が生じます。売却の会計処理が正しくなされているかをチェックするとともに、売却損益の金額などの情報も整理しておくと良いでしょう。

なお、【図表1】は残高の月次推移を見る形式ですが、著しい増減があっても、同じ月に重要な増加・減少が重なるとそのことが見えづらくなります。そこで固定資産項目については、必要に応じて、増加・減少が見えるよう【図表2】のような形式で月次推移を見るのも一案です。

【図表2】固定資産増減・残高の月次推移分析

(単位:千円)
科目 科目 前期末残高 4月 5月 6月 (以降省略)
建物附属設備 月初残高 XXX XXX XXX XXX XXX
増加 XXX XXX XXX XXX XXX
減少 XXX XXX XXX XXX XXX
月末残高 XXX XXX XXX XXX XXX
……

いずれにしても、年度決算のときにB/Sの対前期比較をするはずですが、期中に固定資産の著しい増加や減少が生じた場合、その段階で中身を整理しておけば、年度決算のときの決算書(B/S)の前期比較での増減理由説明などにも使えるでしょう。

3.おわりに

本稿では現在、期中の段階で行われるB/Sの月次推移分析について、主要な科目ごとに着眼点を説明していますが、このうち今回は「固定資産」を取り上げました。

固定資産は売上債権や棚卸資産のように毎月毎月中身が変動していくものではなく、通常、著しい増減が頻繁に生じる勘定科目ではありません。だからこそ、著しい変動が生じた際は確実にその中身を押さえておく必要があります。また、長期にわたってB/Sに計上されるものですので、万が一会計処理の誤りがあれば長期にわたって影響が及んでしまいます。

こうした点も踏まえると、著しい変動があれば、月次段階から対応をしておく必要があると言えるでしょう。次回、引き続き他の科目に関する説明もしていきますので、そちらも併せてお読み頂き、実務上の参考にして頂ければ幸いです。


(提供:税経システム研究所)
**********

いかがでしたでしょうか。「比較分析」における「B/Sの月次推移分析」についてのご説明、第4回目でした。
次回「第68回 比較分析のいろいろ(8) ~B/Sの月次推移分析(その5)」でまた続きをご紹介させていただきます。お楽しみに!
なお、このコラムの提供元である税経システム研究所については下記をご参照ください。

税経システム研究所
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