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経理/財務公認会計士の仕事術 2026/01/29

第66回 比較分析のいろいろ(6) ~B/Sの月次推移分析(その3)

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前回に引き続き「比較分析」をテーマに「B/Sの月次推移分析」についてお送りいたします。本テーマは全8回に記事を分けており、今回は第3回目となります。

1.はじめに

経理部では、B/SやP/Lの比較分析を行い、経営者などに著増減理由の説明を行う場面も少なくありません。年度決算時の比較分析が重要なことは言うまでもありませんが、年度決算に向けて期中の段階で比較分析を実施することも大事です。

本稿では現在、B/Sの月次推移分析にあたっての着眼点について、科目ごとに説明を進めています。前回は「現金及び預金」と「売上債権」を取り上げましたが、今回は「棚卸資産」、「仮払金、立替金、前払金など」といった科目を取り上げることにします。

2.ケースで考えるB/Sの月次推移分析(その3)

まずは、ある経理部での様子を描いた【ケース6】をご覧ください。

【ケース6】
C社では年度決算作業の真っ最中ですが、経理スタッフたちには混乱が生じているようです。

「この商品、本当に売れるのかな? いや、そもそも計上して良かったのだろうか…」
「この仮払金、いつ発生した分だ? 何の経費に使ったんだろう…」
「……」


はたして所定の期日までに決算作業は終了するのか、心配な状況です。
【ケース6】には、年度決算作業の段階でいろいろな問題が発覚して、経理スタッフたちが混乱している様子が描かれています。ここで挙がっているような問題について、年度決算を迎えてから対応するのではなく、期中のもっと早い段階から対応するためにも、是非B/Sの月次推移分析を実施したいところです。

以下では、B/Sの月次推移分析について、主要な勘定ごとに着眼点を考えてみようと思います。


着眼点3 棚卸資産(商品、製品、仕掛品等)
月々の商品や製品といった棚卸資産残高についてはウォッチしていないということもあるでしょう。ただし、棚卸資産残高の重要性が高い企業も少なくありません。そういった場合には、棚卸資産残高の月次推移をウォッチして、まずは大局的な観点から分析してみることが効果的です。

仮に、商品残高の月次推移が【図表1】のとおりであったとしましょう。

【図表1】商品残高の月次推移分析

(単位:千円)
科目 前期末残高 4月 5月 6月 (以降省略)
商品 55,000 50,000 65,000 72,000 XXX

特に棚卸資産が著しく増えている場合、【図表1】で言えば5月、6月になりますが、こうした場合は以下のような問題が起きている可能性もありますので、気を付けてください。

(棚卸資産が増加している場合に気を付けたい点の例)

  • 仕入計上の会計処理を誤っているかもしれない。
  • 滞留在庫が生じているかもしれない。
  • 過剰発注が生じているかもしれない。
  • 資金繰りが悪化しているおそれがある。
したがって、棚卸資産残高の推移をウォッチし、気になる動きがあればその理由を確認するようにしましょう。

また、大局的な観点から分析する上では、月次段階で棚卸資産の残高推移を見るだけでなく、回転期間のチェックも併用することが考えられます。棚卸資産の増加が売上高(あるいは売上原価)の増加に伴うものなのか、そうではなさそうなのかは気になるところです。

なお、月次の段階で棚卸資産回転期間を計算する場合の注意点については、前回「売上債権」のところで説明したのと同様です。
棚卸資産回転期間 = 棚卸資産残高 ÷ 売上高(注)
(注)分母の売上高は、「1日当たり売上高」あるいは「1カ月当たり売上高」。
売上高の代わりに「売上原価」を使用することもある。

【図表2】商品残高と回転期間の月次推移分析

(単位:千円)
科目 前期末残高 4月 5月 6月 (以降省略)
①商品 55,000 50,000 65,000 72,000 XXX
②売上高(累計) 365,000 25,000 55,000 85,000 XXX
③累計日数(日) 365日 30日 61日 91日 XXX
④回転期間(日) 55日 60日 72日 77日 XXX
(注)①はB/Sの商品残高、②はP/Lの売上高(当期累計)
④=商品残高 ÷ 1日当たリ売上高=① ÷(②/③)

回転期間の分析まで行うと、回転期間がどんどん長くなっていることが分かります。どうやら5月・6月の商品残高の増加は売上の増加に対応した増加とは言えそうもなく、さらなる原因追究が必要になりそうです。
こうした大局的なチェックを行った結果、気になる部分が出てきた場合には、上述した「棚卸資産が増加している場合に気を付けたい点の例」も念頭に置いて、商品別(商品グループ別)や部門別、保管場所別など、深掘りして分析することになるでしょう。


着眼点4 仮払金、立替金、前払金など
B/Sの月次推移を分析する場合、通常は著増減が生じている科目や残高の重要性が高い科目が中心になるでしょう。ただし、これらに該当しなくても着目しておきたい点があります。例えば、仮払金の例で考えてみましょう。

仮払金はあくまでも仮に(一時的に)仮払金として処理しているのであって、適時にあるべき勘定(例えば、経費の仮払いであれば、実際に支出した各費用科目)に振り替えるべきものです。仮払金に計上したまま積み上げていくものではないはずです。ところが、月々残高として仮払金がそれなりの金額残っているとすれば、そうした状況が生じていること自体が問題点と言えるのではないでしょうか。
もし適時に仮払金の精算処理を行わないまま放置していたとすると、一体どんな問題が生じるのでしょうか。1件1件はそれ程の金額ではないとしても、後になって(例えば年度決算段階などになって)一気に処理しようと思ったら、何カ月も遡って支出内容の確認をしなければならなくなって、調査するのも大変になるはずです。仮払いを受けた人が精算をしないまま放置しているのかもしれませんし、仮払いを受けた人の精算は済んでいるのに経理部門で正規の勘定への振替処理が済んでいないのかもしれません。仮払いを受けた人がそのお金を何のために何に使ったのか記憶が薄れてしまっているかもしれませんし、領収書などの証憑をなくしてしまっているかもしれません。本来であれば費用計上されるべきものが資産に載っていることで、場合によっては損益の見込みがくるってしまうといったことが生じるかもしれません。

また、こうした観点でのチェックの必要性は仮払金に限りません。立替金や前払金などについても、本来であればいつまでも残っているのは適正ではない状態と考えられます。例えば、毎月毎月同額で推移しているとしたら、すべき処理を忘れて放置されているおそれもあるわけです。

したがって、B/Sの月次推移分析において、仮払金、立替金、前払金などについては、月々ある程度の残高があったり、同額のまま推移していたりすれば、「精算処理を忘れてしまっているのかもしれない」「後でまとめて処理しようと放置しているのかもしれない」などといった視点も持ちながら、月次推移をチェックすると良いでしょう。

3.おわりに

前回からは、期中の段階で行われるB/Sの月次推移分析について、主要な科目ごとに着眼点を説明していますが、このうち今回は「棚卸資産」と「仮払金、立替金、前払金など」を取り上げました。

数あるB/Sの科目の中でも、「棚卸資産」が重要性の高い科目である企業は少なくありません。その一方で様々な商品等がある場合、いきなりその中身を細かく見ていくのは大変です。また、「仮払金、立替金、前払金など」の科目は金額的な重要性はそれ程高くないかもしれませんが、適切な会計処理や分析を後回しにしてしまった結果、後で苦労するといった事態に陥ることも少なくありません。

こうした点も踏まえると、月次段階からまずは大局的にウォッチしておき、何か問題が生じれば早め早めに対応することで、効率的に年度決算作業を進めることにもつながると言えるでしょう。次回、引き続き他の科目に関する説明もしていきますので、そちらも併せてお読み頂き、実務上の参考にして頂ければ幸いです。


(提供:税経システム研究所)
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いかがでしたでしょうか。「比較分析」における「B/Sの月次推移分析」についてのご説明、第3回目でした。
次回「第67回 比較分析のいろいろ(7) ~B/Sの月次推移分析(その4)」でまた続きをご紹介させていただきます。お楽しみに!
なお、このコラムの提供元である税経システム研究所については下記をご参照ください。

税経システム研究所
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