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経理/財務公認会計士の仕事術 2026/01/21

第65回 比較分析のいろいろ(5) ~B/Sの月次推移分析(その2)

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前回に引き続き「比較分析」をテーマに「B/Sの月次推移分析」についてお送りいたします。本テーマは全8回に記事を分けており、今回は第2回目となります。

1.はじめに

経理部では、B/SやP/Lの比較分析を行い、経営者などに著増減理由の説明を行う場面も少なくありません。年度決算時の比較分析が重要なことは言うまでもありませんが、年度決算に向けて期中の段階で比較分析を実施することも大事です。

前回から、期中の段階での比較分析を想定し、まずはB/Sの月次推移分析の話を進めています。今回からはB/Sの月次推移分析にあたっての着眼点について、科目ごとに説明していくこととし、今回はそのうちの「現金及び預金」と「売上債権」を取り上げることにします。

2.ケースで考える比較分析 ~B/Sの月次推移分析(その2)

まずは、ある経理部での様子を描いた【ケース5】をご覧ください。

【ケース5】
C社では年度決算作業の真っ最中ですが、経理スタッフたちには混乱が生じているようです。

「えっ、いつの間にか現金預金の残高がこんなに減っていたなんて…」
「この売掛金、回収できるのか? いや、そもそも計上して良かったのだろうか…」
「……」


はたして資金繰りは大丈夫なのか、また所定の期日までに決算作業は終了するのか、心配な状況です。
【ケース5】には、年度決算作業の段階でいろいろな問題が発覚して、経理スタッフたちが混乱している様子が描かれています。ここで挙がっているような問題について、年度決算を迎えてから対応するのでなく、期中のもっと早い段階から対応するためにも、是非B/Sの月次推移分析を実施したいところです。

以下では、B/Sの月次推移分析について、主要な勘定科目ごとに着眼点を考えてみようと思います。



着眼点1 現金及び預金
現金及び預金は企業の資金繰りの命綱ですから、資金に十分な余裕があるとは言えない場合には、その残高の推移をウォッチする必要性の高い項目となります。別途、今後の資金繰りについて、資金繰り予定表等を作成してきっちりと管理している場合もあるでしょうが、今回ご紹介するのはもっと簡易的なものとなります。

仮に、現金及び預金残高の月次推移が【図表1】のとおりであったとしましょう。

【図表1】現金及び預金残高の月次推移分析

(単位:千円)
科目 前期末残高 4月 5月 6月 (以降省略)
現金及び預金 10,000 11,000 11,500 ①6,000 XXX

現金・預金残高の月次推移を分析する上で特に着目したいのは、著しい減少が生じていないかという点です。【図表1】で言えば、6月に著しい減少が生じています。
現金・預金残高が減ってくる場合としては、まず業績が芳しくない場合が考えられます。月々の支出を賄うだけの収入がなければ、現金・預金残高は減っていくでしょう。ただし、業績が好調だからと言って安心はできません。業績が好調なときに資金繰りが苦しくなることはよくあることです。例えば、業績が好調なために商品在庫の仕入を増やしたとしましょう。仕入代金の支払いがあれば資金が出ていく一方で、その商品を販売した上でその代金を回収するまでにはそれなりの期間を要します。商品在庫として保有している期間と販売した後に代金を回収するまでの期間です。このため、業績が好調だから現金・預金の残高は十分にあるはずと思い込んでいると慌てることがあるわけです。したがって、資金に十分な余裕があるとは言えない場合には、その残高の推移をウォッチするようにしましょう。

着眼点2 売上債権(売掛金、受取手形等)
月々の売上高はウォッチしている企業でも、売掛金や受取手形といった売上債権残高についてはウォッチしていないということもあるでしょう。ただし、現金売りが中心の企業を除けば、売上債権残高は多くの企業で重要性が高い項目ではないかと考えられます。

その一方で、売上債権にはいろいろな相手先に対するものが含まれていたり、同じ相手先に対するものでも別の日の販売取引から生じたものが含まれていたりするため、詳細に中身を見ていくことはなかなか大変です。

そこで、売上債権残高の月次推移をウォッチして、まずは大局的な観点から分析してみることが効果的です。

仮に、売掛金残高の月次推移が【図表2】のとおりであったとしましょう。

【図表2】売掛金残高の月次推移分析

(単位:千円)
科目 前期末残高 4月 5月 6月 (以降省略)
売掛金 32,000 30,000 35,000 50,000 XXX
特に売上債権が著しく増えている場合、【図表2】で言えば6月になりますが、こうした場合は以下のような問題が起きている可能性もありますので、気を付けてください。

(売上債権が増加している場合に気を付けたい点の例)

  • 売上計上や売上債権回収の会計処理を誤っているかもしれない。
  • 回収が遅延している売上債権が生じているかもしれない。
  • 本来なら売上計上できない売上を計上しているかもしれない。
  • 資金繰りが悪化しているおそれがある。
したがって、売上債権残高の推移をウォッチし、気になる動きがあればその理由を確認するようにしましょう。


また、大局的な観点から分析する上では、月次段階で売上債権の残高推移を見るだけでなく、回転期間のチェックも併用することが考えられます。売上債権の増加が売上高の増加に伴うものなのか、そうではなさそうなのかは気になるところです。売上債権回転期間の分析については「第61回 比較分析のいろいろ(1) ~売掛金の大きさ」及び「第62回 比較分析のいろいろ(2) ~売掛金の増加理由」で詳しく取り上げていますので、興味のある方はそちらもご参照ください。

なお、月次の段階で売上債権回転期間を計算する場合には注意点があります。売上債権回転期間は、基本的には次の計算式で計算できますが、単純にP/L上の売上高(その月までの累計売上高)をそのまま分母にしてしまうと、各月の回転期間が誤った数値となってしまいます。何故なら、P/L上の売上高(累計)には、4月は30日分(1カ月分)、5月は61日分(2カ月分)、6月は91日分(3カ月分)の売上が集計されており、集計されている期間が異なるからです。そこで、月次で売上債権回転期間を算出する際には、分母の売上高は「1日当たり売上高」あるいは「1カ月当たり売上高」にしてください。

売上債権回転期間 = 売上債権残高 ÷ 売上高(注)
(注)分母の売上高は、「1日当たり売上高」あるいは「1カ月当たり売上高」


【図表3】売掛金残高と回転期間の月次推移分析

(単位:千円)
科目 前期末残高 4月 5月 6月 (以降省略)
①売掛金 32,000 30,000 35,000 50,000 XXX
②売上高(累計) 365,000 25,000 55,500 85,000 XXX
③累計日数(日) 365日 30日 61日 91日 XXX
④回転期間(日) 32日 36日 39日 54日 XXX
(注)①はB/Sの売掛金残高、②はP/Lの売上高(当期累計)
④=売掛金残高 ÷ 1日当たリ売上高=① ÷(②/③)

例えば、「1日当たり売上高」を使う場合は、【図表3】のように計算します。売掛金の回転期間も計算してみた結果、6月は回転期間も大きく伸びてしまっており、6月の売掛金増加は単純に売上増加に伴うものとは言えず、何らかの問題が発生している可能性が高そうだということが読み取れます。こういった場合は、上述した「売上債権が増加している場合に気を付けたい点の例」も念頭に置いて、さらにその原因を追究していく必要があるでしょう。

3.おわりに

今回から、期中の段階で行われるB/Sの月次推移分析について、主要な科目ごとに着眼点を説明していますが、このうち今回は「現金及び預金」と「売上債権」を取り上げました。

数あるB/Sの科目の中でも、「現金及び預金」や「売上債権」は多くの企業にとって重要性の高い科目であり、月次段階からウォッチすることで、何か問題が生じれば早め早めに対応しておきたい項目と言えるでしょう。今回の説明を参考にして頂ければと思います。また、次回以降は他の科目に関する説明もしていきますので、そちらも併せてお読み頂き、実務上の参考にして頂ければ幸いです。


(提供:税経システム研究所)
**********

いかがでしたでしょうか。「比較分析」における「B/Sの月次推移分析」についてのご説明、第2回目でした。
次回「第66回 比較分析のいろいろ(6) ~B/Sの月次推移分析(その3)」でまた続きをご紹介させていただきます。お楽しみに!
なお、このコラムの提供元である税経システム研究所については下記をご参照ください。

税経システム研究所
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