この記事のポイント
- ガバメントクラウドとは、政府・自治体が共通利用するクラウド基盤であり、行政システムの標準化・共通化とデジタル化を推進する中核インフラである。
- ガバメントクラウドを含む行政のデジタル化の進展により、e-TaxやeLTAXなどの電子申請・税務手続のデジタル化が加速しており、企業のバックオフィス業務にも影響が及んでいる。
- 企業対応の結論として、クラウド会計・ERPの導入やシステム更新、認証・セキュリティ体制整備を通じて、行政連携を前提とした業務デジタル化を進める必要がある。
ガバメントクラウドとは、自治体システムの標準化とクラウド化を推進する政府主導の取り組みであり、行政サービスのデジタル化を大きく前進させるものです。
一見すると行政内部の改革に見えますが、電子申請、e-Tax、eLTAXなど、企業が日常的に利用する手続きにも影響が及びつつあります。
経理・人事・総務といったバックオフィス業務にも関係するため、企業にとっても無関係ではありません。
本記事では、ガバメントクラウドの概要と制度の動向を整理したうえで、企業のバックオフィス業務への影響と対応のポイントを解説します。
ガバメントクラウドとは
ガバメントクラウドとは、デジタル庁主導のもと、政府および地方公共団体が共通で利用するために整備されたクラウド基盤です。
主に地方公共団体の基幹業務システムの標準化・共通化を支えるインフラとして位置づけられていますが、国の行政機関においても利用が進められています。
2026年5月時点では、次の5事業者がガバメントクラウドサービスとして採択されており、これらのクラウド上で行政システムの共通化・最適化を図る取り組みが進められています。
- Amazon Web Services(AWS)
- Microsoft Azure
- Google Cloud
- Oracle Cloud Infrastructure(OCI)
- さくらのクラウド
ガバメントクラウド導入の背景
ガバメントクラウドの整備の背景には、2018年に政府が示した「政府情報システムにおけるクラウド・バイ・デフォルト原則」があります。
これは、行政システムを新たに整備・更新する際に、オンプレミスではなくクラウドサービスの利用を原則とする方針であり、行政のデジタル化を加速させることを目的としています。
従来、行政システムは自治体ごとに個別に開発・運用されており、その多くがオンプレミス環境で構築されていました。
その結果、システム仕様のばらつきによる情報連携の非効率や、運用・保守コストの増大が課題となっていました。
こうした課題を踏まえ、ガバメントクラウドは単なるクラウド移行にとどまらず、クラウドのメリットを活かしたシステムの標準化・共通化を推進する基盤として設計されています。
このようなクラウド利用の拡大により、行政サービスのデジタル化が進展し、電子申請や税務手続きといった企業との接点となる領域にも影響が及びつつあります。
本記事では、こうした行政のクラウド化の進展を踏まえ、企業側に求められる対応について整理します。
※参考資料:デジタル庁「ガバメントクラウド」
ガバメントクラウドの仕組み
ガバメントクラウドは、デジタル庁が全体の方針策定やガバナンスを担い、各自治体・行政機関が共通のクラウド基盤を利用する形式をとっています。
各利用者には論理的に分離された利用環境が割り当てられ、共通の仕組みを利用した認証やアクセス管理の整備が進められています。
ネットワーク接続やセキュリティ対策についても共通化が図られており、自治体ごとの個別対応の負担が軽減されています。
そのため、ITリソースが限られる小規模な自治体であっても、一定水準のセキュリティを確保したシステム運用ができる点が、ガバメントクラウドの大きなメリットのひとつです。
ガバメントクラウドに関する法制度の状況
2021年に「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律(標準化法)」が施行され、住民基本台帳・固定資産税・国民健康保険など20の基幹業務について、標準化基準に適合したシステム(標準準拠システム)への移行が義務づけられました。
移行期限は原則として2025年度末(2026年3月末)とされています。
しかし、ベンダーの開発リソース不足や移行後の運用費増加などにより、期限内の移行が困難な自治体も多く、政府は一定の条件のもとで段階的な移行を認め、概ね5年以内の完了を目指す方針を示しています。
移行完了にはなお時間を要する見通しですが、自治体システムの標準化とクラウド基盤への集約は既定の方針であり、今後数年にわたり段階的に進展していくと見込まれています。
※参考資料:デジタル庁「地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化」
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企業のバックオフィス業務への影響
ガバメントクラウドは民間企業が直接利用するシステムではありませんが、行政システムの刷新は、企業が日常的に利用するe-Gov電子申請、e-Tax、eLTAXといった各種サービスにも影響を及ぼします。
社会保険・税務・補助金申請などの分野において、電子申請の利用は今後さらに拡大していくと見込まれます。
行政への各種申請手続きへの影響
電子申請による対応
行政手続きの効率化に向けて電子申請の利用が促進される中、資本金1億円超の法人などの大法人では、健康保険・厚生年金保険の算定基礎届など一部の手続きについて、原則として電子申請による対応が求められています。
また、資格取得・喪失届や労働保険の年度更新についても、電子申請の利用が推奨されています。
ガバメントクラウドの整備と並行して、こうした行政手続きの電子化の流れは今後も継続していくと見込まれます。
デジタル化・AI導入補助金や雇用関連助成金の申請
デジタル化・AI導入補助金や雇用関連助成金の申請においても、GビズIDを用いた電子申請が標準的な手段となっており、法人番号と連動した申請情報の自動入力など、利便性の向上が進んでいます。
健康保険や出産関連の届出手続き
健康保険や出産関連の届出手続きを一括で申請できる機能の整備も検討されており、今後実現すれば社会保険業務の効率化につながることが期待されます。
加えて、GビズIDによるシングルサインオン(複数の⾏政サービスに共通のID・パスワードでログインできる仕組み)も提供されており、その対応範囲は拡大しています。
これにより、ログイン情報の管理負担の軽減も進んでいます。
※参考資料:日本年金機構 「電子申請の義務化」
税務申告・法定調書などの提出事務への影響
e-Tax・eLTAX
e-TaxやeLTAXにおいては、企業が利用する会計システムとのAPI連携の強化が進んでおり、源泉徴収票や支払調書といった法定調書の電子提出も拡大していく方向にあります。
年末調整
従業員がマイナポータル経由で控除証明書データを会社へ提出できる仕組みなど、年末調整のデジタル化も進展しており、給与ソフトへの自動取込にも対応が進んでいます。
会計システム・ERP
これらの仕組みを活用するためには、会計システムやERPが最新仕様に対応していることが前提となるため、ベンダーのアップデート情報を定期的に確認しておくことが重要です。
システムを古いまま利用していると、電子申告時に仕様の不一致が生じ、決算や申告業務に支障をきたす可能性があります。
そのため、システムの継続的なアップデート管理が欠かせません。
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行政のクラウド化を追い風に、自社のデジタル化を加速させる
行政のクラウド化の進展は、企業のバックオフィス業務にも大きな変化をもたらしています。
これを機に、自社のデジタル化をどのように進めるべきかを整理することが重要です。
行政のクラウド化は自社システム見直しの好機
ガバメントクラウドをはじめ、近年は行政の電子化・クラウド化が急速に進められています。
こうした動きに対し、単に受動的に対応するのではなく、自社の業務デジタル化を加速させる契機として捉えることが重要です。
政府がシステム調達においてクラウド利用を原則とする方針を示している以上、企業側においても、クラウドを前提としたシステム設計への移行を検討すべきタイミングにあるといえます。
実際、クラウド会計やクラウドERPを活用している企業では、行政システムとの連携機能により、申告書類の作成から電子提出までを一貫して完結できる環境が整いつつあります。
一方で、オンプレミス型のシステムや旧式のソフトを使い続けている場合、行政側の仕様変更への対応が遅れ、手作業による対応コストの増加やミスの発生リスクが高まります。
まずは、自社システムが行政のデジタル化の進展に対応できているかという観点から、現状の棚卸しを行うことが重要です。
社内システム・経理ソフトの改修ポイント
e-TaxやeLTAXとの連携を前提とすると、会計・ERPシステムの選定基準も変化しています。
クラウド型の会計システムでは、ベンダーが行政システム側の仕様変更に合わせて自動的にアップデートを行うため、企業側が個別に帳票の更新対応を行うことなく、最新の申告規格に対応できるケースが一般的です。
一方、オンプレミス環境や保守対応が限定的なパッケージシステムでは、e-Taxの仕様変更への対応が遅れ、申告期限直前に不具合が発生するリスクも指摘されています。
年末調整においても、クラウドシステムの優位性は明確です。
従業員がマイナポータルから取得した控除証明書データを給与システムへ自動連携できる仕組みは、クラウド型の給与ソフトを中心に対応が進んでいます。
さらに、法定調書の電子提出や電子帳簿保存法への対応まで含めて一元管理できるクラウド会計システムを活用することで、決算・申告業務全体のペーパーレス化と工数削減が期待できます。
今後は、行政連携への対応力や自動アップデートの有無といった観点から、現行システムの見直しを検討することが重要です。
クラウド・電子申請の利用促進を前提とした情報管理
クラウド化や電子申請の推進と並行して重要となるのが、マイナンバーの管理体制とアカウントセキュリティの整備です。
従業員のマイナンバーカードに搭載された電子証明書の有効期限を把握し、社会保険手続きや年末調整に支障が出ないよう、社内ルールを整備する必要があります。
特に、2025年度以降には多数の電子証明書が有効期限を迎えることが見込まれており、従業員ごとの有効期限を事前に把握しておくことが重要です。
また、GビズIDやe-Tax・eLTAXなどの行政サービスの利用にあたっては、多要素認証の設定が求められます。
これは、パスワード漏えい時の不正ログインを防止するための重要な対策です。
業務のデジタル化が進むほど、認証情報の管理不備が業務停止リスクに直結する可能性が高まるため、適切なアクセス管理体制の構築が不可欠です。
※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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ガバメントクラウドの普及により、行政システムとの連携を前提としたクラウド会計やクラウドERPの重要性は、今後さらに高まっていくと見込まれます。
こうした変化に対しては、単に行政側の仕様変更に対応するだけでなく、自社の業務プロセスやシステム全体を見直し、デジタル化を加速させる契機として捉えることが重要です。
まずは、自社システムが行政のデジタル化に対応できているかを確認し、必要に応じて見直しや改善に着手することが求められます。