HOME 経理/財務税務(税金・節税) 税効果会計は怖くない!“会計と税務のズレ”を押さえて、2つの差異から繰延税金資産まで無理なく理解【仕訳例あり】
経理/財務税務(税金・節税) 最終更新日:2026/03/17

税効果会計は怖くない!“会計と税務のズレ”を押さえて、2つの差異から繰延税金資産まで無理なく理解【仕訳例あり】

この記事をシェアする

税効果会計や繰延税金資産と聞くと、「なんだか難しそう」と感じる方も多いのではないでしょうか。
専門用語が並ぶと身構えてしまいがちですが、ポイントは「会計と税務のズレをどう調整するか」というシンプルな考え方にあります。
実は、仕組みの全体像を押さえてしまえば、税効果会計は決して複雑なものではありません。
本記事では、税効果会計の基本から繰延税金資産の考え方、一時差異・永久差異の違い、実務で使う仕訳パターンまで、ゼロからわかりやすく解説します。

税効果会計とは

まずは、税効果会計の基本的な仕組みと適用対象となる企業について解説します。


税効果会計とは「会計上の利益」と「税務上の所得」のズレを調整する手続き
税効果会計とは、企業会計と税務会計のルールの違いによって生じる差異を調整し、法人税等の費用と税引後当期純利益を各期の業績に適切に対応させるための会計処理です。
企業会計と税務会計では、そもそもの目的が異なります。
企業会計は「適正な期間損益計算」を目的としており、発生主義に基づいて費用や収益を認識します。
一方、税務会計は税法に基づき課税所得を計算することを前提としているため、費用や収益の認識タイミングが企業会計と異なる場合があります。

こうしたズレを調整せずにいると、税引前当期純利益に対する法人税等の負担率が実態とかけ離れた数値となり、財務諸表から企業の経営成績を正確に読み取ることが難しくなります。
例えば、会計上は「賞与引当金」を計上して費用処理したとしても、税務上は実際に支払うまで損金(経費)として認められません。
その結果、会計上の利益は減っているにもかかわらず、税金は減らないという不一致が生じます。
税効果会計は、このような会計と税務のズレを調整し、財務諸表の有用性を高めるために設けられている制度です。


税効果会計の適用対象となる企業は主に上場企業や監査対象企業
税効果会計は主に、社会的な影響が大きく、投資家保護の必要性が高い企業に適用が義務付けられています。
具体的には、会社法や金融商品取引法に基づき、以下の企業が対象となります。

企業種別 概要
上場企業 株式市場で広く資金調達を行っており、投資家に対して正確な財務情報を提供する責任がある
金融商品取引法の適用を受ける非上場企業 有価証券報告書の提出義務があるなど、上場企業に準じた情報開示が求められる
会計監査人を設置している企業 会社の規模が大きく、債権者や取引先などの利害関係者が多いため、監査法人による会計監査が義務付けられており、その一環として税効果会計の適用が求められる
一方、これらに該当しない非上場の中小企業については、税効果会計の適用は任意とされています。
申告書作成から電子申告までトータルサポート
税務システム

MJSの税務システムなら、「豊富な機能」・「高い操作性」・「システム連携」で税務(申告)を大幅に効率化します。税制改正や環境変化にも柔軟に対応します。

詳しく見る

税効果会計の2つの差異

税効果会計を理解するうえで重要となるのが、会計と税務のズレである差異の種類です。
差異には将来解消される「一時差異」と、永久に解消されない「永久差異」の2種類があり、税効果会計の対象となるのは一時差異のみです。


将来解消される「一時差異」
一時差異とは、会計上と税務上の計上タイミングのズレや、評価方法の違いなどにより生じる差異で、将来的に解消される性質を持っています。
例えば、会計上は減価償却費を税法上の法定耐用年数よりも短い期間で計上した場合、当初は会計と税務の間に差異が生じます。
しかし、耐用年数の経過に伴い累計の償却額は一致するため、最終的にはその差異は解消されます。
税効果会計は、こうした一時差異を調整し、各期の税金費用を適切に対応させるために行います。

なお、一時差異には、将来の税金負担を減らす「将来減算一時差異」と、将来の税金負担を増やす「将来加算一時差異」の2種類があります。


永久に解消されない「永久差異」
永久差異とは、会計上と税務上の取り扱いが根本的に異なり、将来にわたっても解消されない差異のことです。
一時差異がタイミングのズレであるのに対し、永久差異は会計と税務の考え方そのものの違いから生じます。
例えば、交際費や寄付金は、会計上は原則として全額を費用として計上できますが、税務上は一定の限度額を超える部分が損金として認められません。
このような差異は将来も解消されることがないため、税効果会計の対象外となります。

税効果会計の仕訳例

税効果会計では、繰延税金資産や繰延税金負債といった特有の勘定科目を使用します。
ここでは、実務で使用する主要な勘定科目と、具体的な仕訳パターンを4つのケースに分けて解説します。


実務で頻出する税効果会計の3つの主要勘定科目
税効果会計の実務では、「繰延税金資産」、「繰延税金負債」、「法人税等調整額」の3つの勘定科目を理解しておく必要があります。

繰延税金資産
繰延税金資産とは、将来の課税所得と相殺することで法人税等の支払額を減少させる勘定科目です。
将来の税負担が軽くなると見込まれることから資産として計上されるもので、いわば税金の前払い的な性格を持っています。
繰延税金資産は、将来の課税所得によって回収できると見込まれる範囲でのみ計上されます。
会計と税務のズレが解消された際にはこれまで計上していた金額を減らし、将来その税金の減少効果が見込めなくなった場合にも、見込めない分だけ金額を減らします。
この時、一時差異の解消により計上額を減額する処理を「取り崩し」といい、将来その税金の減少効果が見込めるかどうかを判断する考え方を「回収可能性」といいます。

繰延税金負債
繰延税金負債とは、将来の課税所得の増加に伴い法人税等の支払額が増えることが見込まれる勘定科目です。
将来の税負担が重くなると見込まれるため負債として計上されるもので、税金の未払い的な性格を持っています。

法人税等調整額
法人税等調整額とは、会計上の利益と税務上の所得の間に生じる一時差異に、法定実効税率を乗じて算出される調整額です。
損益計算書上の法人税等の負担額を、会計上の利益と適切に対応させる役割を担っています。
具体的には、繰延税金資産や繰延税金負債の増減に対応して計上され、企業が実際に納付する法人税額と、財務諸表に計上される法人税等との差額を将来の税負担の増減として反映させる仕組みです。
これにより、当期の業績と税負担との対応関係が明確になり、期間ごとの損益をより適切に把握できるようになります。


ケース1:繰延税金資産を計上する場合
貸倒引当金の計上などにより将来減算一時差異が100万円発生し、法定実効税率が30%の場合、100万円 × 30% = 30万円となります。
この場合、次の仕訳を行います。
借方 金額 貸方 金額
繰延税金資産 300,000 法人税等調整額 300,000
この仕訳は、「今期は会計上費用が先行している分、将来分の法人税をあらかじめ調整しておく」という処理を意味します。


ケース2:繰延税金資産を取り崩す場合
前期に計上した貸倒引当金が解消され、税務上も損金として認められた場合には、一時差異が解消されます。そのため、計上時とは逆の仕訳を行います。
借方 金額 貸方 金額
法人税等調整額 300,000 繰延税金資産 300,000
これにより、将来の税金減少効果として計上していた繰延税金資産を取り崩します。


ケース3:繰延税金負債を計上する場合
その他有価証券の評価益などにより将来加算一時差異が200万円発生し、法定実効税率が30%の場合、200万円 × 30% = 60万円となります。
この場合、次の仕訳を行います。
借方 金額 貸方 金額
法人税等調整額 600,000 繰延税金負債 600,000

ケース4:繰延税金負債を取り崩す場合
前期に評価益が生じていたその他有価証券を売却するなどして一時差異が解消した場合には、計上時とは逆の仕訳を行います。
借方 金額 貸方 金額
繰延税金負債 600,000 法人税等調整額 600,000
これにより、将来の税金増加分として計上していた繰延税金負債を取り崩します。
申告書作成から電子申告までトータルサポート
税務システム

MJSの税務システムなら、「豊富な機能」・「高い操作性」・「システム連携」で税務(申告)を大幅に効率化します。税制改正や環境変化にも柔軟に対応します。

詳しく見る

税効果会計を適用する際の注意点

最後に、税効果会計を適用するうえで実務上押さえておきたいポイントを3つ解説します。


繰延税金資産の回収可能性を検討する
繰延税金資産は、将来の課税所得によって回収できると合理的に見込まれる場合にのみ計上できます。
将来十分な利益が見込めない場合には、繰延税金資産を取り崩す、あるいは計上しない判断が必要となります。

回収可能性の判断にあたっては、過去の業績や将来の収益予測を踏まえ、企業の収益状況に応じて繰延税金資産をどの範囲まで計上できるかを5段階で判断する「5区分」と呼ばれる実務上の枠組みが用いられています。
具体的には、継続的に十分な課税所得が見込まれる企業から、過去に重要な欠損金が生じている企業までを段階的に分類し、将来減算一時差異や繰越欠損金の計上可否を判断します。
この「回収可能性の判断」は税効果会計の中でも特に重要な論点であり、企業の業績見通しや将来計画と密接に関連します。

なお、回収可能性が低いと判断された部分については、評価性引当額を計上して繰延税金資産を減額します。
これは、将来の税負担軽減効果が見込めない部分を反映するための処理です。

※参考資料:企業会計基準委員会「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針


法定実効税率は毎期見直しが必要になる
税制改正によって法人税率などが変更された場合、決算日時点で成立している新しい税率を使用して繰延税金資産・負債を再計算する必要があります。
法定実効税率は、法人税・住民税・事業税の各税率を基に算出されるため、いずれかの税率が改正されれば実効税率も変動します。
繰延税金資産や繰延税金負債は、将来の税金の増減を見積もったものであり、その計算には将来適用される税率を用いなければなりません。


貸借対照表では繰延税金資産と負債を相殺する
貸借対照表に繰延税金資産と繰延税金負債を計上する場合、同一の納税主体かつ同一の課税当局に係るものについては、原則として相殺し、純額で表示します。
繰延税金資産は将来支払う税金を減らす効果、繰延税金負債は将来支払う税金を増やす効果を持つため、両者を相殺することで企業の正味の税効果をより適切に示すことができます。
相殺後の金額は、関連する資産・負債の性質などに応じて流動項目または固定項目に区分して計上します。
実務上は「投資その他の資産(固定資産)」または「固定負債」に表示されるケースが一般的です。
なお、連結財務諸表では納税主体が会社ごとに異なるため、相殺の可否を個別に判断する必要があります。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
申告書作成から電子申告までトータルサポート
税務システム

MJSの税務システムなら、「豊富な機能」・「高い操作性」・「システム連携」で税務(申告)を大幅に効率化します。税制改正や環境変化にも柔軟に対応します。

詳しく見る
**********

税効果会計とは、会計と税務のルールの違いから生じるズレを調整し、企業の財政状態や経営成績を正しく伝えるために欠かせない会計処理です。
まずは一時差異と永久差異の違いを押さえ、繰延税金資産・負債がどのような場面で発生するのかをイメージできるようになることが大切です。
今回の記事で紹介した仕訳パターンを参考に、基本の流れを押さえておきましょう。

人気記事ランキング - Popular Posts -
記事カテゴリー一覧 - Categories -
関連サイト - Related Sites -

経理ドリブンの無料メルマガに登録