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経理/財務税務(税金・節税) 2023/02/16

成年年齢が20歳から18歳に引き下げ!税金への影響は?

2022年4月1日、民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
これに伴い、各種税金についても2022年4月1日前後で年齢に関する要件が変更されています。
今回の記事では、成年年齢の引き下げに影響のある税金の内容について解説します。

成年年齢の引き下げ

2022年4月1日、民法の成年年齢が約140年ぶりに見直され、20歳から18歳に引き下げとなりました。
今回の見直しの背景には、若者が自らの判断で人生を選択できる環境を整備するとともに、若者に積極的な社会参加を促し、社会を活力あるものにするという目的があります。


成年年齢の引き下げにより18歳で可能となったこと
民法の成年年齢には、「1人で有効な契約をすることができる年齢」と「父母の親権に服さなくなる年齢」という意味があります。
そのため今回の成年年齢の引下げによって、18歳や19歳でも親の同意を得ずに様々な契約をすることができるようになりました。
例えば、以下のような内容が挙げられます。

  • 自分名義のクレジットカードを作成する
  • ローンを組む
  • 携帯電話の契約をする
  • 一人暮らしのための部屋を借りる
  • 有効期限10年のパスポートを取得する
  • 国家資格を取得する


成年年齢の引き下げ後も変わらないこと
民法の成年年齢が18歳に引き下げられても、お酒やたばこ、公営競技に関する年齢制限や国民年金への加入時期については、20歳のまま維持されています。

※参考資料:法務省「民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について


成年年齢の引き下げで影響を受ける税金
成年年齢が20歳から18歳に引き下げられることで、主に「20歳」や「未成年者」を基準としている税金が影響を受けています。
ここからは、相続税、贈与税、所得税、個人住民税について、影響を受ける項目の内容を解説します。
相続税 被相続人(亡くなった人)から相続で財産を取得した場合に課される税金
贈与税 生前贈与などで財産をもらった場合に、受け取った財産の合計額が一定額を超えると課される税金
個人所得税 個人の年間の所得(もうけ)に対して課される税金
個人住民税 都道府県・市町村に住む個人に対して課される税金

相続税・贈与税に関する変更点

相続税・贈与税に関する変更点は以下の通りです。


相続税の未成年者控除
一般的に、相続財産が3,600万円を超えると相続税の納付が必要になる可能性があります。ただし未成年者については、相続税の負担を軽減する観点から、年齢に応じて相続税の金額から一定の金額を減額できる未成年者控除という制度があります。
具体的には、10万円に相続人が成人に達するまでの年数を掛けた金額を控除できます。

改正点
2022年3月31日以前の贈与については「20歳に達するまでの年数」だった未成年者控除の年齢要件が、2022年4月1日以後は、「18歳に達するまでの年数」となりました。
従って、相続人である未成年者の年齢が15歳の場合、18歳に達するまでの年数は3年なので、未成年者控除額は3年×10万円で30万円と計算できます。


贈与税の暦年課税制度の特例税率
贈与税の暦年課税制度は、1年間に贈与された財産の価額の合計額から各種控除額を差し引いた金額に税率を乗じて算定するものです。
暦年課税制度で使用する税率には、一般税率と特例税率というものがあり、特例税率は、贈与を受ける人が贈与を受けた年の1月1日において20歳以上(変更後18歳以上)の場合に使用することができます。
基礎控除後の課税価格 一般税率 特例税率
税率 控除額 税率 控除額
200万円以下 10% 10%
300万円以下 15% 10万円 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円 15% 10万円
600万円以下 30% 65万円 20% 30万円
1,000万円以下 40% 125万円 30% 90万円
1,500万円以下 45% 175万円 40% 190万円
3,000万円以下 50% 250万円 45% 265万円
4,500万円以下 55% 400万円 50% 415万円
4,500万円超 55% 400万円 55% 640万円
※参考資料:国税庁「贈与税の計算と税率(暦年課税)

改正点
特例税率の適用年齢が「20歳以上の者」から「18歳以上の者」に変更となりました。


贈与税の相続時精算課税税度
先述の通り、暦年課税制度では、一般・特例に限らずもらった財産の価格が高いほど贈与を受ける人が負担する贈与税の税率も高くなる仕組みとなっています。
相続時精算課税制度とは、60歳以上の贈与者から子や孫への生前贈与について、上記の暦年課税制度に代えて選択できる制度です。
この制度を選択すると、特別控除額2,500万円まで贈与税が課税されず、また、2,500万円を超えた部分についても一律20%の贈与税を負担することで、子や孫が財産を受取ることができます。

改正点
贈与を受ける側である子や孫の年齢要件が「20歳以上」から「18歳以上」に変更となりました。


贈与税における結婚・⼦育て資⾦の非課税
贈与税には、受贈者の直系親族から金融機関との一定の契約に基づき贈与を受けた場合に、要件を満たす払出分については、累計1,000万円まで非課税申告書を提出することで、結婚・子育て資金として贈与税が非課税になる制度があります。

※子や孫が30歳になるまでの間、教育資金として贈与した資金について1人1,500万円(習い事などは500万円)まで贈与税を非課税とする特例(教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置)もありますが、2023年3月末で終了予定です。

改正点
2022年3月31日以前は「20歳以上50歳未満」だった受贈者の要件が、2022年4月1日以後は「18歳以上50歳未満」に変更となりました。


贈与税の事業承継税制に係る受贈者の要件
贈与税や相続税には、取得する株式や事業用の一定の資産について、企業や個人事業の後継者として認定を受けた者が一定の手続きや申告を行うことによって、納税を猶予される制度があります。
事業承継税制には、会社の株式などを対象とする法人版事業承継税制と、個人事業者の事業用資産を対象とする個人版事業承継税制があり、それぞれ対象となる資産や適用を受けるための手続きが異なります。

改正点
対象となる資産の贈与を受ける推定相続人や孫の年齢が、2022年3月31日以前の贈与については「20歳以上」でしたが、2022年4月1日以後は、「18歳以上」となりました。

所得税・住民税

所得税・住民税に関する変更点は以下の通りです。


所得税のNISA・ジュニアNISA制度
NISAについては以下のような制度があります。
NISA 成人済の居住者が非課税口座で取得した株式(投資額の上限は年間120万円)について、その配当や売却による譲渡益が最長5年間非課税となる制度。
つみたてNISA 成人済の居住者が非課税口座で取得した一定の投資信託(投資額の上限は年間40万円)について、その分配金や譲渡益が最長20年間非課税とされる制度。
ジュニアNISA 未成年の居住者が未成年者口座で取得した上場株式など(投資額の上限は年間80万円)について、その配当や売却による譲渡益が最長5年間非課税とされる制度。
NISAやつみたてNISAと異なり株式の払出しなどの手続きに一定の制限が加えられている。
NISAとつみたてNISAは年度ごとに選択することができます。
なお、NISA制度については、令和5年税制改正大綱で大幅な見直し(非課税期間の無期限化や非課税限度額の拡充)をすることが発表されており、今後の動向に注目が集まっています。

改正点
NISA口座を開設することができる年齢要件が、「口座開設年の1月1日現在で20歳以上」から「口座開設年の1月1日現在で18歳以上」に改正されました。
これに伴い、ジュニアNISAの対象者についても、「口座開設年の1月1日現在で20歳未満」から 「口座開設年の1月1日現在で18歳未満」に改正されました。
この改正は、2023年1月1日以後に開設される非課税口座について適用されます。


個人住民税の非課税措置
住民税は、未成年者のうち前年の合計所得金額が135万円以下(給与所得者の場合は、年収204万4千円未満)の方については、非課税になります。

改正点
改正により、未成年者の非課税措置の対象年齢も「20歳未満」から「18歳未満」に引き下げられました。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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成年年齢の引き下げは様々な税法に影響を与えており、実務担当者としても従業員などから質問が増えてくるところかと思います。
特に住民税においては、未成年者として非課税となる期間が短くなったことで、アルバイト採用時の採用者からの問い合わせが多くなっています。
また、NISAなどの改正は親世代である従業員や役員の関心が高く、年末調整でも質問が多くなると見込まれます。
今回の記事を参考に情報を整理しておいてくださいね。

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