2026年3月14日、JR東日本は運賃改定を実施します。
消費税対応やバリアフリー料金制度を除くと、今回のような本格的な運賃改定は、会社発足以来初めてのことです。
その背景には、コロナ禍による利用者減少に加え、エネルギー価格や物価の上昇、設備の老朽化への対応といった要因があるとされています。
改定率
今回の運賃改定は、幹線及び地方交通線の運賃区分を対象として実施されます。中でも、通勤定期の値上げ幅が比較的大きい点が特徴です。
また、これまで割安運賃として設定されていた「電車特定区間」と「山手線内」の運賃は、今回の改定により「幹線」の運賃に統合されます。
【区分別・運賃区分ごとの改定率】
| 運賃区分 |
普通運賃 |
通勤定期 |
通学定期 |
| 幹線に統合 |
電車特定区間 |
10.4% |
13.3% |
8.0% |
| 山手線内 |
16.4% |
22.9% |
16.8% |
| 幹線 |
4.4% |
7.2% |
改定なし |
| 地方交通線 |
5.2% |
10.1% |
改定なし |
※参考資料:JR東日本 「運賃改定の申請について(補足説明資料)」
なお、2025年から2026年にかけて、JR東日本以外の鉄道会社でも運賃改定が順次進められています。
そのため、今回の改定後、JR東日本を引き続き使用した方が安くなるのか、私鉄を利用した方が安くなるのか、区間によって異なる可能性があります。
また、複数路線を利用する従業員がいる場合は、他社の改定状況も併せて確認しておくことをおすすめします。
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通勤手当の支給額が変わると、税務や社会保険の取り扱いにも影響が生じます。運賃値上げをきっかけに、通勤手当の非課税ルールや注意点をあらためて確認しておきましょう。
【2025年改正】通勤手当の税務上の取り扱いと非課税限度額
所得税法上、役員や使用人などの給与所得者に通常の給与に加算して支給される通勤手当や通勤定期券などは、電車などの公共交通機関を利用する場合、最も経済的かつ合理的な経路で計算した運賃等のうち、1カ月あたり15万円までが非課税とされています。
一方、通勤のため自動車などの交通用具を使用している給与所得者に支給する通勤手当については、2025年の税制改正により非課税限度額が引き上げられました。
通勤費の非課税限度額(1カ月あたり)
| 区分 |
非課税限度額 |
| 交通機関を利用している場合 |
1カ月あたりの合理的な運賃等の額(最高限度15万円) |
| マイカー・自転車の場合 |
片道2km未満 |
全額課税 |
片道2km以上 10km未満 |
4,200円 |
片道10km以上 15km未満 |
7,300円 |
片道15km以上 25km未満 |
13,500円 |
片道25km以上 35km未満 |
19,700円 |
片道35km以上 45km未満 |
25,900円 |
片道45km以上 55km未満 |
32,300円 |
| 片道55km以上 |
38,700円 |
※参考資料:国税庁「通勤手当の非課税限度額の改正について」
非課税限度額を超えた部分は給与所得として課税対象となるため、支給した月の給与に上乗せして源泉徴収の処理を行う必要があります。
もっとも、今回の運賃改定により定期券代が上昇した場合でも、後述する新幹線や特急を利用するケースを除けば、電車通勤で月額15万円を超えることは一般的ではなく、直ちに税務上の影響を過度に心配する必要はないでしょう。
なお、2025年11月の非課税限度額改正はマイカー通勤者を対象とするものであり、電車通勤者の非課税限度額に変更はありません。
通勤における新幹線などの利用
近年、地方移住や多拠点生活の広がりを背景に、従業員の両立支援や満足度向上を目的として、新幹線や特急を利用した通勤を認める企業も増えています。
新幹線や特急を利用する場合であっても、通勤に係る運賃・時間・距離などの事情に照らし、最も経済的かつ合理的な経路及び方法と認められる場合には、その運賃等は非課税の通勤手当に含まれます。
ただし、新幹線や特急の特別急行料金は非課税の対象となる一方、グリーン料金は「最も経済的かつ合理的な通勤経路及び方法のための料金」とは認められないため、非課税には含まれません。
社会保険料への影響
所得税では非課税となる通勤手当であっても、社会保険料の算定においては取り扱いが異なります。
健康保険法及び厚生年金保険法では、通勤手当は「報酬」に含まれるため、月払いか6カ月分の一括払いかを問わず、標準報酬月額の算定対象となる報酬に含める必要があります。
社会保険料は、企業と従業員がそれぞれ半分ずつ負担する労使折半が原則です。
そのため、通勤手当が増加すると標準報酬月額が上がり、健康保険料や厚生年金保険料が増加する可能性があります。
この負担増は労使双方に及ぶことから、特に山手線内や電車特定区間を利用する従業員が多い企業では、運賃改定による影響をあらかじめ試算しておくことが重要です。
※参考資料:日本年金機構「標準報酬月額の対象となる報酬に、通勤手当は含まれるのですか。」
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JR東日本の運賃改定に伴い、通勤手当の増額や支給方法の見直しが必要となる企業も少なくありません。
ここでは、運賃改定に備えて企業や経理担当者が押さえておきたい実務上の対応ポイントを整理します。
コスト増への対応と実務のポイント
運賃改定による通勤手当の増加は、企業が負担する人件費の増加につながります。
まずは、現在支給している定期券代の総額を把握したうえで、想定される改定率を用いて年間の影響額を試算しておきましょう。
影響額の試算例
例えば以下のように試算できます。
東京~新宿間を利用する従業員が40名いる企業における1年の通勤手当
|
改定前 |
改定後 |
| 東京~新宿間の6カ月定期券の値段 |
30,270円 |
41,630円 |
| 1年の通勤手当 |
約240万円 |
約330万円 |
| 年間差額 |
約90万円の増加 |
東京~新宿間の6カ月定期券の差額は11,360円となり、年間では22,720円の負担増となります。
この区間を利用する従業員が40名いる企業では、単純計算で通勤手当だけでも年間約90万円の増加となります。
さらに社会保険料の増加分を加味すると、この区間だけで年間100万円超のコスト増となる可能性があります。
首都圏にオフィスを構える企業では、同様の影響が広範囲に及ぶことが想定されるため、早めに年間ベースでのコスト影響を把握しておくことが重要です。
今後のコスト対策
今後のコスト対策としては、通勤時間を朝の混雑時間帯から外すことで割安となる「オフピーク定期券」の活用が挙げられます。
出社時間を柔軟にできる企業であれば、一定のコスト削減効果が期待できるでしょう。
また、改定後には私鉄を利用した方が安くなるケースも想定されるため、通勤ルートの見直しも検討対象となります。
実務面では、全従業員を対象に定期券代の再申請・再計算が必要です。
定期券の有効期限は従業員ごとに異なるため、各自の更新時期を確認し、更新のタイミングで新運賃を適切に反映させることが重要です。
また、給与計算システムと勤怠管理システムが連携しているソフトを利用していれば、通勤手当の変更も効率的に処理できます。未導入の企業にとっては、今回の運賃改定を機に導入を検討するのも一案でしょう。
従業員が定期券を購入する際のタイミング
JR東日本の6カ月定期券は、他社と比べて割引率が高く設定されています。
そのため、改定前の運賃で定期券を購入できる場合には、可能な限り長い期間で購入しておくと有利です。
今回の運賃改定は2026年3月14日から適用されますが、3月13日までに購入した定期券については、有効開始日が3月14日以降であっても改定前の運賃が適用されます。定期券は使用開始日の14日前から購入できるため、3月13日に購入した場合は、3月27日開始分まで旧運賃で購入することが可能です。
なお、改定日直前は窓口での購入が混雑することも予想されますが、モバイルSuicaによる定期券購入などで混雑を避けることも可能です。
こうした購入ルールについては、経理・人事部門からあらかじめ従業員に周知しておくことで、問い合わせ対応や通勤手当の支給処理を円滑に進めることができます。
※参考資料:JR東日本「定期券」
対応スケジュールの目安
運賃改定は3月14日に予定されているため、まだ対応が済んでいない場合は早めに準備を進める必要があります。
まずは、運賃改定による影響額の試算を行い、併せて従業員への周知と定期券代の再計算を優先的に進めましょう。
旧運賃での定期券購入を希望する従業員に対しては、3月13日までに購入する必要があることを事前に案内しておくことが重要です。
3月14日以降は、定期券の更新時期を迎える従業員から順次、新運賃を反映した通勤手当の支給に切り替えていきます。
また、出社の都度、実費精算で交通費を支給している企業では、運賃改定日以降の申請内容に旧運賃が混在しないよう、反映漏れがないかをあらためて確認しておきましょう。
※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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