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経理/財務税務(税金・節税) 2022/02/03

在宅勤務の通勤手当はどう処理する?交通費や各種手当にかかる税金を整理

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新型コロナウイルス感染症の影響もあり、在宅勤務を導入する企業が増えるなど、多くの人の勤務形態が変わってきています。
そのうえで、従業員の在宅勤務が多くなった企業では、交通費や通勤手当を見直したり、在宅手当を支給したりしていることもあります。
では、このような手当ては税金上どのように取り扱われているのでしょうか?
今回は、企業と従業員それぞれの立場で、各種手当がどのように処理されているのかを解説します。

交通費・通勤手当、テレワーク下での在宅勤務手当

まずはどのような手当が存在しているのかを見ていきましょう。

■交通費とは
交通費とは、業務のために生じた交通に要する費用のことで、電車代、タクシー代などが当てはまります。
例えば、出張でタクシーを利用した場合は、従業員がタクシー代金の支払いをして領収書を受け取り、帰社後に精算します。このように、交通費には、本来企業が負担すべき費用について従業員が立て替えて支払っている場合が多いという特徴があります。
企業は交通費の支払いが生じた場合は費用に計上します。

■通勤手当は交通費の中でも特別
通勤手当も交通費に含まれますが、通勤手当の場合は一定の金額が所得税で非課税となるため、多くの企業では別勘定で費用計上します。
通勤手当の支給方法は企業によって様々ですが、多くの企業の場合、1カ月、3カ月、6カ月など一定期間分の定期代相当額を給料とともに支給しています。ここが通常の交通費との違いです。通勤手当には、費用の実費精算に限らず、企業が毎月一定額を支給するケースがあるのです。
さらに、立替金としての性質を持つほかの交通費と異なり、通勤手当は所得税で非課税になる制度も設けられています。そのため、ほかの交通費とは切り分けて考えられているのです。

■テレワーク推進下での通勤手当
在宅勤務の期間が長くなると問題になるのが、通勤手当の扱いです。
オフィス通勤が減少したことで、テレワーク期間には通勤手当の支給を見直すという企業が増加しました。
ただし、従業員が有効期限の長い定期を購入していたり、突発的にオフィス通勤が必要になったりした際に、どのような対応をするかなど、実際に通勤手当の制度を変更する場合には、準備期間を十分に確保してルールを決める必要があります。

■テレワークにおける各種手当
在宅勤務の場合は従業員の自宅が仕事場になります。
そのため、多くの企業では、自宅での勤務環境を補助する目的で在宅勤務手当などを別途支給するケースがあります。
中にはPCやモニターを提供して在宅勤務環境を整える取り組みを実施した企業もあるようです。

交通費・通勤手当・在宅勤務手当をもらった場合(所得税)

交通費・通勤手当・在宅勤務手当をもらった場合、従業員の所得税の取り扱いは、以下の通りです。
支給内容 所得税の取り扱い
交通費 課税対象外
通勤手当 限度額までは非課税、超過分は給与課税
在宅勤務手当など 実費精算の場合は課税対象外、それ以外は給与課税

■交通費は企業の費用の立て替え
従業員が交通費を立替払いし、後日領収書などを企業に提出してその代金を精算するケースでは、従業員は企業の費用を立て替えただけですので、所得税は課税されません。企業が事前に従業員に仮払いして、後日領収書などをもとに精算するケースも同様です。

■通勤手当には非課税限度額がある
通勤手当として支給を受ける場合、一定の金額までは非課税とされており、金額によっては全額非課税になる可能性もあります。課税金額の計算方法は交通手段によって分かれています。
区分 非課税限度額
交通機関または有料道路を利用している人に支給する通勤手当 1か月当たりの合理的な運賃などの額
(最高限度150,000円)
交通機関を利用している人に支給する通勤用定期乗車券
自動車・自転車などの利用者に支給する通勤手当 通勤距離に応じた一定の金額
(片道55kmで最高限度31,600円)

なお、通勤手当は企業側でも経費処理することができます。
通勤手当を支給する場合には、非課税限度額の枠内で支給するのが企業・従業員双方にとって効率的な支給方法になります。

■在宅勤務下での各種手当や物品の提供について
従業員が在宅勤務に対する各種手当を受け取る際、毎月定額が支払われる場合は、基本的には全額が給与所得として課税されることになります。
ただし、在宅勤務中にかかった費用を従業員が負担し、会社がその実費相当額を精算して支給する場合には、給与課税はされません。
また、在宅勤務では環境を整えるために企業がPCやモニターなどの備品を従業員に提供する場合もあります。
このとき、退職の際に返却が必要である旨を明記しておくなど、あくまで企業からの貸与ということが認められる場合には給与課税の対象から除かれます。一方、特に返還を求めずその備品を従業員に支給する場合は、現物給与(金銭以外の給与)として給与課税される可能性がありますので、併せて確認しておきましょう。

支給内容 課税の有無
○○手当
(住宅手当、単身赴任手当など)
通勤手当以外は原則として課税
在宅勤務手当 実費精算分は課税対象外、渡切の場合は課税
在宅勤務に係る物品の提供 貸与の場合は課税対象外、支給の場合は給与課税の可能性あり

交通費・通勤手当・在宅勤務手当を支払った場合(法人税・消費税)

企業が従業員に交通費や各種手当の支払いをした場合、税務上では次のように取り扱われます。
支給内容 法人税の取り扱い 消費税の取り扱い
交通費 ・通勤手当 従業員への支給分は全額が損金算入可能
(役員への支給分で要件を満たした分は損金算入可能)
課税仕入れに該当する
在宅勤務手当など 課税仕入れに該当しない

■法人税で損金算入可能
一般の従業員に対して支給する交通費や各種手当は、給与として損金算入することができます。 また、役員に支給する場合でも、立て替えた交通費が損金算入可能であるのはもちろん、他の手当についても不相応に高額でないなどの要件を満たすものについては、損金算入が可能です。

■消費税の取り扱いは異なる
交通費や通勤手当の消費税については、支給対象者の役職に関係なく、原則として仕入税額控除の対象になります。これは、交通機関の運賃には消費税が含まれているため、消費税上は課税仕入れと整理されるためです。
通勤手当に関しても、通勤のために必要とする範囲内のものは、その全額を仕入税額控除の対象とすることができます。これは、支給額のうちに所得税の非課税限度額を超えて課税される部分が含まれている場合でも同様です。
在宅勤務手当などの名目で支給される通勤手当以外の手当については、消費税法上は給与であると整理されることから、課税仕入れには該当しませんので注意しましょう。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。

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受け取る側も支払う側も、手当の内容によって課税対象となるかどうかは異なります。勤務形態の変化により、日常で目にする手当の種類が増えているため、混乱しないよう注意してくださいね。
また、手当の支給方法で節税につながる場合もあります。それも踏まえたうえで税法上の取り扱いを整理していくと、自社にあった支給方法の見直しもうまくいくでしょう。

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