ただし、自社の決算数値を自社以外の数値と比較してみると、客観的に自社の位置付けが見え、課題が浮き彫りになるといった効果が期待できます。とはいえ、自社以外の決算数値はなかなか手に入らないといった問題もあります。そこで今回からは、自社の決算数値を自社以外と比較したい場合に活用できる「中小企業実態基本調査」(中小企業庁)を取り上げ、その概要を説明するとともに、活用法を考えてみようと思います。
2.ケースで考える中小企業実態基本調査の活用(その1)
まずは、ある経理部での様子を描いた【ケース1】をご覧ください。【ケース1】
社長:「他の中小企業の水準も知りたいところだが、うちには他の中小企業の決算書なんてないからな。何か他の中小企業と比較する方法はないものだろうか…」
大企業が同業他社の決算数値と比較したいといった場合であれば、上場企業の決算書をEDINET(Electronic Disclosure for Investors’ NETwork=金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)や各社のホームページから入手することができます。しかし、中小企業の決算書となるとなかなか手に入りませんし、仮に手に入ったとしてもその数は非常に少ないことでしょう。
こんなときに活用できるのが、中小企業庁が実施している「中小企業実態基本調査」という調査結果で、業種別などにもデータをとることができます(なお、個々の会社ごとのデータをとることはできません)。とはいえ、いざ自分で中小企業実態基本調査を活用しようとすると、どこにあるどの情報を見たら良いのか分からないといった事態に陥ることもあります。
そこで以下では、中小企業実態基本調査について、その概要や活用法を考えてみようと思います。
3.中小企業実態基本調査の概要
■政府統計の総合窓口(e-Stat)内の「中小企業実態基本調査」
対象企業
業種別のブレイクダウン
調査結果はいくつかの切り口でブレイクダウンして集計されていますが、最も基本となる切り口は、業種別の分類です。大きくは11業種(「建設業」「製造業」「卸売業」「小売業」「宿泊業、飲食サービス業」など)に分類(大分類)されています。それぞれの業種(大分類)はさらにブレイクダウンして67業種に分類(中分類)されています。その他のブレイクダウン
業種別の切り口をさらに「従業者規模別」「売上高階級別」「資本金階級別」「設立年別」といった切り口でブレイクダウンした集計がされていたりします。4.中小企業の業種別の自己資本比率を調べてみよう
(1) 中小企業実態基本調査結果の概況資料を活用する「自己資本比率」については中小企業実態基本調査で実際に調査・分析対象項目となっており、その結果が公表されています(「令和3年中小企業実態基本調査の概況 (令和2年度決算実績)」P22)。したがって、この資料を活用するのが一つです。
第10-4図 自己資本比率(産業大分類別)

(出所)中小企業実態基本調査「令和4年調査の概況(令和3年度決算実績)」(中小企業庁)P22
ちなみにさらに遡って平成28年度から平成30年度の3年間の自己資本比率を見てみると、【図表2】のとおりでした。
第10-4図 自己資本比率(産業大分類別)

(出所)中小企業実態基本調査「令和元年調査の概況(平成30年度決算実績)」(中小企業庁)P23
ここまで見てきたように、自己資本比率など中小企業実態基本調査で実際に調査・分析対象項目となっている経営指標であれば、「(1)中小企業実態基本調査結果の概況資料を活用する」方法で対処することができます(ちなみに、調査・分析対象項目となっている経営指標は【図表3】のとおりです)。
ただし、この方法だと、中小企業実態基本調査での調査・分析対象項目になっていない経営指標を知りたい場合には対処できなくなってしまいます。
こうした場合の対処方法については次回説明しようと思います。
【図表3】中小企業実態基本調査での調査・分析対象項目となっている経営指標
経営指標の算出式及び全産業加重平均値

(出所)中小企業実態基本調査「令和4年調査の概況(令和3年度決算実績)」(中小企業庁)P20
5.おわりに
自社の決算数値を自社以外と比較したい場合なども想定し、今回からは「中小企業実態基本調査」を取り上げ、その概要を説明するとともに、業種平均と比較するなど、活用法を考えていきたいと思います。今回は、そもそも中小企業実態基本調査がどんなもので、調査・分析結果がどこに掲載されているのかといった入り口部分から説明しました。また、自己資本比率を調べてみるというケースを使いながら、まずは「(1) 中小企業実態基本調査結果の概況資料を活用する」方法を、実際の公表資料を交えて説明しました。
次回以降も引き続き、「中小企業実態基本調査」の活用法を考えていきたいと思いますので、そちらも併せてお読み頂き、実務上の参考にして頂ければ幸いです。
その後、新しい年度のデータも公表されていますが、本稿では個別の数値水準そのものではなく、データをどのように読み取り、比較分析に活用するかという視点や流れをお伝えすることを意図しています。その点をご理解いただければ幸いです。























