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経理/財務消費税 2023/03/28

消費税の端数は切り捨てる?意外と知らない端数処理方法【2023年インボイス改正対応】

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消費税額を求める際に端数が生じることはよくあります。
今回の記事では、実務で気になりがちな消費税の端数処理の考え方と対応方法について解説します。

価格設定する際に消費税に生じる端数の取り扱い

商品やサービスの値段を決める際は、税抜価格に10%や8%の消費税率を掛けた消費税相当額を加算し、値札として表示する税込価格を設定している企業が多いかと思います。
この過程で計算される消費税相当額には、1円未満の端数が生じることがあります。
この場合の端数処理について、法律上、明確な規定はありません。
財務省の「総額表示に関する主な質問」では、消費税計算の端数処理について以下のように説明されており、原則としてその企業の判断で処理方法を決めることができます。

端数をどのように処理 (切捨て、切上げ、四捨五入など)して「税込価格」を設定するかは、それぞれの事業者のご判断によることとなります。
※参考資料:財務省「総額表示に関する主な質問


価格を決める際に端数が生じる例
消費税の端数が生じる例を確認してみます。

例:商品の値段が3,215円(税抜)で、消費税率が10%の場合

この場合、消費税額の計算方法は以下の通りです。

3,215円 × 10% = 321.5円

消費税額は端数処理方法によって以下の通りとなります。
切り捨てる場合 0.5円を切り捨て、321円
四捨五入する場合 321.5円を四捨五入し、322円
切り上げる場合 0.5円を切り上げ、322円
上記の例では、端数処理によって消費税額に1円の誤差が生じることになります。
1回の取引では数円程度かもしれませんが、取引量や取引規模が増えると、端数処理が損益に与える影響は大きくなることもあります。
また、取引先との間であらかじめ認識を揃えておかないと、数値ずれによるトラブルが発生する可能性もあるため、価格設定する際に端数処理をどうするかについては社内でしっかりと検討する必要があります。

インボイス制度導入後の対応

インボイスとは、消費税の課税売上・課税仕入れの計算にあたって使用する書類です。
これまで、インボイスに消費税額の記載が必要かどうかは、明確に定められていませんでした。
しかし、2023年10月以降の適格請求書等保存方式(インボイス制度)導入後は、インボイスの記載事項として、以下が求められます。

  • インボイス発行事業者の氏名または名称及び登録番号
  • 取引年月日、 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)及び 適用税率
  • 消費税額等(端数処理は1インボイス当たり、税率ごとに1回ずつ)
  • (原則)書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
※参考資料:国税庁「消費税の仕入税額控除の方式としてインボイス制度が開始されます

インボイス制度導入後は、太字の記載事項を満たしたインボイスを発行する必要があるため、売上時・仕入時のインボイスの端数処理についても考える必要があります。


インボイスでの端数処理
取引で使用するインボイスにおける具体的な計算方法は以下の通りです。

  • 10%、8%などの消費税率ごとに商品を区分して集計し、それぞれの合計対価を算出する。
  • 1で集計した合計額に対してそれぞれの消費税率を掛ける。この時、1円未満の端数処理も1の区分ごとに行う。
請求書1枚に対して、端数処理は税率ごとに1回ずつしか認められません。
個々の商品ごとに端数処理を行い、最後にその消費税額を合算して記載することはできませんので、ご注意ください。
これは、商品の数だけ端数処理が行われることにより数値が狂うなどの、実務上の混乱を避けるための対策です。

納付する消費税額の計算にあたって生じた端数の処理

ここまで、取引で発生する消費税額を決めるための端数処理について確認してきました。
しかし、実際に納付する消費税額を計算する際にも端数が生じることはあります。
この時、各計算の段階により、端数は基本的に切り捨てることとされています。
課税標準額の計算で生じる端数 1,000円未満の端数を切り捨て
消費税額の計算で生じる端数 1円未満の端数を切り捨て
納付すべき消費税額の端数 100円未満、1円未満など、各段階で出てきた端数を切り捨て

課税標準額の計算
課税標準額とは1年間の課税売上の合計額です。
課税標準額を計算する際は1,000円未満の端数は切り捨てます。
また、課税標準額に対して対応する消費税率を掛けることで、年間の売上に係る消費税(課税期間の課税標準額に対する消費税額)を計算しますが、この時に出た1円未満の端数については切り捨てることになります。


割戻し計算、積上げ計算とは
売上税額と仕入税額の計算は、「割戻し計算」と「積上げ計算」から選択可能です。
割戻し計算とは、その年度の課税売上や課税仕入れの合計額を算出して消費税額を計算する方法で、消費税の計算としてなじみのあるものです。
税率ごとに合計した税込対価の額に、それぞれの消費税率を掛けた金額を使って納付税額を計算します。
積上げ計算とは、請求書など各インボイスに記載された消費税の合計額を、そのまま消費税額とする方法です。

※仕入税額控除の計算では、課税仕入れの都度、その対価から消費税額を帳簿上で算出して積み上げていく、帳簿積上げ計算も認められています。

割戻し計算と積上げ計算では、端数処理は以下のように異なります。
割戻し計算 税率ごとの合計額に対して1回
積上げ計算 請求書など各インボイスごとに1回
割戻し計算の方が消費税額の計算の手間は少ないですが、積上げ計算では各インボイス単位で端数処理を行うため、売上税額の場合、負担する消費税額が少なくなることが多くあります。
自社の状況にあわせて、どちらを採用するか検討してみてください。
なお、2023年10月のインボイス制度導入後は以下のようになります。
売上税額 仕入税額
原則 割戻し計算 積上げ計算
特例 積上げ計算
※売上税額の計算で積上げ計算を選択した場合、仕入税額の計算では割戻し計算を適用できません。
割戻し計算
※参考資料:国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問100


納付すべき消費税額
1年間に収めるべき消費税の計算は、売上に係る消費税から仕入れに係る消費税を差し引いて行われます。

納付すべき消費税額 = 売上に係る消費税 ― 仕入れに係る消費税(控除対象仕入税額)

この時、差し引いた金額のうち100円未満の端数については、切り捨てることとされています。
これは、納税者にとって消費税額を少なくするために有利な規定です。
会計ソフトを使用している場合などは自動計算されるかと思いますが、申告前に念のため確認しておきましょう。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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消費税の端数は、売上・仕入時、消費税の申告計算時など、様々な場面で発生します。
インボイスは取引先との関係で重要な書類であり、消費税計算は税務署が確認するものです。
実務担当者として、しっかりと押さえておいてくださいね。

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