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経理/財務消費税 2019/03/14

リース事業協会に聞く!消費税法改正でリースを扱う経理現場はどう変わる?

2019年10月1日から施行される「消費税法改正」。業界や企業によって様々な影響が心配されており、同時に適切な対応が迫られています。経理の現場はその主戦場のひとつ。改正直前や直後に慌てないためにも、事前に準備しておく必要があるでしょう。そこで、今回は公益社団法人リース事業協会の加藤健治企画部長(以下敬称略)に「新米経理の会計奮闘記」シリーズでおなじみの新米経理・山本理子が突撃取材!リース業界の増税の影響と「貸手」と「借手」がすべき対策について伺ってきました。

取材企業プロフィール

公益社団法人リース事業協会
全国のリース事業者240社(2019年2月1日現在)で構成されており、リース及びリース事業に関する調査研究、提言、広報、相談、情報提供、研修などを実施。リース会計やリース会計税制などの周知も行っている。
公式HP:http://www.leasing.or.jp/

新米経理の会計奮闘記 登場人物
  • 山本理子

    ようやく経理担当になったものの、分からないことだらけ。毎回様々な経理問題に頭を悩ます。曲がったことが大嫌い。

  • 会計仙人

    突如現れて、会計問題をわかりやすく解説してくれる謎の仙人。仏陀の会計担当だったらしい。

企業のリース利用率は90%以上。増税は多くの企業に注視してほしい

「うーん、経理担当として消費税増税については色々勉強してるんだけれど、まだわからないことばかりだわ。
こないだ会計仙人にも解説してもらったけど、調べれば調べるほど知らないことがたくさん出てくるのよね。特にこの、リース。リースって……正直何なのかしら?
……そうだ、わからないなら詳しい人に聞けばいいんだわ!そうと決まれば早速行動開始よ!」

「というわけで、今回はリース事業協会にお邪魔しました!
加藤さん、よろしくお願いいたします」

「よろしくお願いします」

「まずはその……私、そもそもリース業界をあまりよく知らないんです。教えていただくことはできますか……?」

「もちろんです。リース事業とは簡単に言うと『設備を貸すビジネス』です。ただ、一口にリースといっても業界や貸し借りする設備は様々です。当協会が2015年に調べたリース需要動向調査では、対象企業1,510社のうち90%以上がなんらかのリースを利用していると回答しているんですよ。以下がその一部になります」

■業界別・リース設備例
業界 リース設備例
会社・学校 パソコン、コピー、電話機
病院 CT、スキャナー
工場 製造設備、太陽光発電
自動車 マイカー、トラック、観光バス
物流施設 自動倉庫、フォークリフト
レストラン ハンディ端末、暖房設備
スーパー・コンビニ レジスター、陳列機、ATM
農業機械 トラクター、コンバイン
鉄道、券売機、自動改札機

「へぇ!リース設備って日常生活のありとあらゆるところで使われてるのね!」

「そうですね。特にリースの最大の特長でもある『購入と比べて、設備導入時のコストを減らすことができる』という利点から、大企業と比べて資金が潤沢ではない中小企業に多く活用されています」

「そうなんですね。
でも、多くの企業でリースが利用されているということは、その分消費税法改正の対応の影響は大きいんじゃないですか?最近じゃどの業界でも増税についての問い合わせがたくさんあるみたいですし…」

「はい、貸手、借手を問わず『2019年10月1日までに何をすればいいの?』という問い合わせが増えています。私たちも10万部ほどリーフレットを配ったりして周知に力を入れています」

「え、リーフレットまで!すごい!」

「業種や各企業によって影響の大きさが異なるので、経理担当者の皆さんにはまず『自社がリースしている設備』と『リース取引の種類』を確認してほしいです」

「リース取引の種類というと……」

「ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引になります。リースに関わる消費税法改正は、このそれぞれで変更点や対応も違ってくるのです」

ファイナンス・リース取引の特徴と消費税法改正による影響

「ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引の見分け方自体はそこまで難しくありません。まずは契約書を見ていただき、内容に『フルペイアウト』、『ノンキャンセラブル』という記載がないか探してみてください。 この『フルペイアウト』、『ノンキャンセラブル』という二つの要件を満たしているのがファイナンス・リース取引となります。ちなみに、フルペイアウトとノンキャンセラブルとは以下の意味です」

  • フルペイアウト
    =リースの保守やメンテンナンス費、税金などを借手が全額負担
  • ノンキャンセラブル
    =途中解約不可

「ファイナンス・リース取引は日本では一般的なリースでして、体感ですが、中小企業の約9割はこのファイナンス・リースに当たりますね」

「なるほど。まずは契約内容を確認して、ファイナンス・リース取引か否かを判断すればいいんですね。それで、ファイナンス・リース取引だったら法改正の対応はどうすればいいんですか?」

「ファイナンス・リース取引の場合、貸手も借手も増税の対応は難しくありません。増税の適用時期についてご説明しましょう」

改正税率の適用時期

「ファイナンス・リース取引の消費税の増税は『2019年10月1日以降に契約した取引』に適用されます。ですので、それ以前に契約した取引については従来の税率が変更されることはありません」

「表にするとわかりやすいですね」

「ファイナンス・リース取引は意外とシンプルなので、対応などはそれほど難しくないと思います。それでは次にオペレーティング・リース取引について解説しますね」

オペレーティング・リース取引の場合

「オペレーティング・リースは、主に『リース物件の契約期間満了後に残存価額を差し引く』取引となります。契約書にこの内容の記載がある場合、オペレーティング・リース取引になると考えてください」

「つまり、残存価額を差し引く分、ファイナンス・リース取引よりも安く借りられるということですね」

「そうですね。例えば、物件価額が100万円、税金や手数料が15万円、残存価額が30万円だった場合、下記のような考え方となります」

ファイナンス・リース取引
100万円(物件価額)+15万円(税金、手数料)
115万円(借り手が支払う金額)

オペレーティング・リース取引
100万円(物件価額)+15万円(税金、手数料)
=115万円
115万円ー30万円(残存価額)=85万円(借り手が支払う金額)

「へぇ~、すごくお得なんですね!」

「ただ、オペレーティング・リース取引は、リース物件の契約終了後も売買可能な中古市場がなければ、リース会社にとってメリットはありません。そういった中古市場がある物件は限られているため、ファイナンス・リース取引と比べるとそこまで契約数が多くはないのです。
また、オペレーティング・リース取引の場合は消費税対応も少し複雑です」

「何か複雑になる原因があるんでしょうか?」

「オペレーティング・リース取引には、消費税が増税されても税率を8%のまま据え置く『経過措置』を取ることが可能だからです。さらにその条件が若干くせ者。オペレーティング・リース取引している物件がある場合は注意が必要です」

■オペレーティング・リース取引の経過措置の取引条件
  • 当該契約に係る資産の貸付期間及びその期間中の対価の額が定められていること
  • 事業者が事情の変更その他の理由により当該対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと
※対価=リース料

※参考資料:平成31年(2019 年)10月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A【基本的な考え方編】

「1については、当たり前に定められているので問題はないのですが、問題は条件の2番目です。オペレーティング・リース取引で多い車の契約には、契約期間内に自動車税や保険料の制度や料金が変更となるケースがあることも多く、それに対応してリース料金を変更することが可能な契約が一般的なのです。借手が経過措置に対応できるか否かはリース契約している会社に確認するのが一番早いでしょう」

「なるほど。中小企業の場合は、特に車のリース契約を確認して経過措置になるか否かを確認する必要がありそうですね。
それじゃ、一度ここまでの流れを簡単にまとめてみますね」

「既に会計システムの導入が進んでいる私たちにとっては、今回の増税での帳簿上の不安点はあまりありません。駆け込み需要も軽減税率に対応したポスレジや券売機のリースなどスポット的に収まると予想しています。ただ、借手にとってはシステムや機器の更新などは大きな負担になると考えられます。まずはリース取引の現状を把握して、早めに準備していただければと思っています」

「私たち経理担当者は、早めにファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引の契約を理解して、すぐにでも対応した方が良さそうですね。
加藤さん、今日はお忙しいところありがとうございました!」

「今日はすっごく勉強になったわー!また経理担当者として一歩成長したって感じ。事務所に戻ったら早速、契約書類の確認をしなくっちゃね」

「ついにワシの手を借りず、自ら取材に出かけおったか…成長は嬉しいが、ちと寂しいのう」
雲間で会計仙人がいじけているとはつゆ知らず、経理業務に励む理子なのであった。

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今回はいよいよ半年後に迫っている「消費税法改正」について、公益社団法人リース事業協会の加藤企画部長にお話を伺いました。一口にリース取引と言っても、内容によって対応が違うことがおわかりいただけたかと思います。リースを利用している会社の経理担当は、どんな内容の契約となっているかを早めにチェックし、消費税法改正後もスムーズな経理処理ができるようにしておきましょう。

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