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消費税 2019/01/17

飲食業界だけじゃない!?迫りくる軽減税率・インボイス制度開始に、企業の対策待ったなし!(新米経理の会計奮闘記 第8回)

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新米経理の会計奮闘記 登場人物
  • 山本理子

    ようやく経理担当になったものの、分からないことだらけ。毎回様々な経理問題に頭を悩ます。曲がったことが大嫌い。

  • 吉田経男

    毎回経理問題を引き起こす営業部員。おっちょこちょいでずる賢い一面もあるが、本当はやさしい男。

  • 会計仙人

    突如現れて、会計問題をわかりやすく解説してくれる謎の仙人。仏陀の会計担当だったらしい。

新米経理の山本理子が社内で巻き起こる様々な経理問題に挑む会計奮闘記。毎回、突如現れる会計仙人が経理問題を分かりやすく解説してくれるお悩み解決ストーリーの第8回目です。今回は、2019年10月に迫る消費税の10%への引き上げと軽減税率・インボイス制度の基本について、会計仙人が解説!仙人曰く「全業種の経理担当者は、早めに準備しておかないと後悔することになるかも」とのこと。果たしてその内容とは!?

特定業種以外、軽減税率は関係ない?

「はぁ~、いよいよね。このままで大丈夫かしら……」
理子がカレンダーを眺めながら、ため息をついている。

「どうしたの。いつもよりさらに難しい顔して」
たまたま通りかかった吉田が、そう言って理子の隣に並ぶ。

「ついに始まるじゃない。今年から『消費税の増税』が」
理子はいかにも憂鬱そうに頬杖をつく。

「あー、お財布的に厳しいよね」

「そうじゃないの!……いや、それもあるけど、私が悩んでいるのは『会計処理が複雑になるんじゃないか』ってこと!
やっと月次や日次の経理業務に馴れてきたのに新しい制度なんてほんとに困るわ」

「え、軽減税率って食品とか飲食店が対象でしょ?一般企業のウチには関係ないんじゃないの?」
吉田はそう言って首をかしげる。

「そんなことはない!と思うんだけど……」
理子は腕を組んでつぶやく。

「あれ、いつになく自信なさげじゃない?」

「実際のところ、軽減税率とかインボイス制度がどれだけ経理業務に影響するかよく分からないのよね。
もしかしたら、考えすぎなのかもしれないし……」
消え入りそうな声でつぶやきながら、うつむく理子。

と、その時、どこからともなく重厚な太鼓が鳴り響き、鬱蒼とした霧に包まれた仙人が舞い降りてきた。

「考えすぎではないぞ!むしろ、悠長に構えていると直前になって慌てる羽目になるかもしれん。
軽減税率とインボイス制度への対応は、すべての企業と経理担当者の課題なのじゃ!」

軽減税率とインボイス制度とは

「やっぱり、こういう雰囲気出していれば、仙人が出てくると思ったのよね」
先ほどとは打って変わって、けろっとした表情を浮かべる理子。
どうやらすべて計算通りだったようだ。

「な…ワシを便利者扱いするでない!」

「でも、悩んでるのは本当です!
教えてください!会計仙人様!お願いします、この通り!」
理子は仙人の前で拝むように手を合わせる。


「まぁ…そこまで言うならいいじゃろう。」
仙人はコホン、と咳払いをする。
「まずはお二人さん。軽減税率とインボイス制度については正しく理解しているかの」

「軽減税率っていうのは、消費税が10%に引き上げられても、条件によっては8%に据え置くことよね」

「その通りじゃ。
それでは吉田、インボイス制度とは何かわかるかな」

「さっぱり分かりません!」
吉田は即答である。

「いつも通り、潔い男じゃの。それぞれの情報を下にまとめたから、よく覚えておくのじゃ」
そう言って、仙人はどこからともなく2枚のフリップを取り出した。

「小道具まで用意するなんて、気合い入ってるな」
吉田は感心してフリップをまじまじと眺める。

軽減税率
2019年10月から実施される予定の消費税10%引き上げへの際、「生活に最低限必要なもの」は税率8%に据え置く処置のこと。
具体的には「酒類および外食サービスを除く飲料食品」、「定期購読している新聞」などが当てはまります。

インボイス制度(適格請求書等保存方式)
現在の請求書の内容に「登録番号」、「税抜価格または税込価格を税率ごとに区分した合計額と適用税率」、「消費税額等」を加えること。
取引における複数の適用税率(標準税率、軽減税率)を区分して記載することで、それぞれの取引の仕入額控除を行います。
2019年10月からは準備期間として、今までの「帳簿等保存方式」の記載事項に「税率区分ごとの請求額」の項目のみを追加する「区分記載請求書保存方式」が導入され、2023年10月1日から本格的にインボイス方式が導入される予定です。


「インボイス制度では、これまでの『請求書等保存方式』に新しいルールを加えるのね。
その請求書をインボイスとして発行するって聞いたことがあるわ」

「そうじゃ。ちなみに、請求書だけでなく、納品書やレシートなども対象になるぞ。
それから、インボイスを発行するには適格請求書発行事業者に登録しておく必要がある。情報をまとめておいたぞ」
仙人は再び、どこからともなくフリップを取り出す。

適格請求書発行事業者
インボイスを発行しようとする課税事業者は、納税地を所轄する税務署長に登録申請書を提出し、適格請求書発行事業者として登録する必要があります。
基本的に軽減税率の対象品目を扱うほとんどの企業が登録を申請することが予想されますが、免税事業者などはインボイスを発行できないので注意が必要です。

「でも、ウチの会社はやっぱり関係ないんじゃないかな。
会社で食品とか扱ってるわけでもないし、請求書の発行はしないでしょ」

「吉田さん!経理は請求書の発行だけをやってるわけじゃないのよ!
飲食費を交際費や会議費などで計上することだってあるんだし、当然食品を購入する側にも影響はあるはずよね?」

「理子の言う通りじゃ。
どの業種にもインボイス制度の導入による影響はあるし、注意すべき勘定科目もたくさんあるんじゃよ」

全業種に関わる影響と対応項目


「購入する側に想定される影響は以下の通りじゃ」

購入する側への影響
  • 帳簿への記載ミスによって、納付する消費税額に差異が生まれる(税務調査で指摘される恐れがある)
  • 軽減税率対象品目を仕入れたとしても、取引先がインボイスを発行できない免税店などの場合、仕入額控除が行えないため、納付する消費税が大きくなる可能性がある


「帳簿への記載事項も変わるし、取引相手が登録事業者に該当するかは、納付する消費税額に大きく関わる問題じゃ。
節税に役立てるためにも『どのようなシーンで軽減税率が適用される商品やサービスなのか』を事前に知っておく必要があるじゃろう。
ということで、軽減税率が適用される勘定科目をざっと紹介するぞ」

  • 福利厚生費(慰安旅行費、慶弔費など)
  • 通信費(テレホンカード、電話料金など)
  • 交際費(接待費、記念行事費用など)
  • 会議費
  • 寄付金
  • 賃借料
  • 支払手数料
  • 諸会費・その他の販管費(水道光熱費、新聞など)


「なるほど、確かにウチの会社も対策を打たないといけなそうだな。」
吉田は勘定科目の多さに完全にたじろいでしまっている。

「しかも、会議費の場合は『会議用に用意したペットボトルの飲料水は軽減税率(8%)が適用されるが、会議後の昼食などでケータリングのサービスを利用する場合は標準税率(10%)で計上する』といったように、品目ごとに税率も異なるのじゃ」

「ケースバイケースなのね。判断が難しいわ」
理子の口調も暗くなる。

「そうじゃな。オロナミンCは食品扱いなので軽減税率(8%)が適用されるが、リポビタンDは医薬部外品だから標準税率(10%)という例もある」

「……複雑すぎる」
もはや理子は泣き出しそうである。

「そう暗い顔をするでない。標準課税と軽減税率は、基本的にレシートや請求書を見ればわかるようになっておるぞ」

「まず、仕入れする商品の適用税率を把握する。
次に、念のため納品書などに書かれている税率が正しいかを確認する。
問題ないようであれば、納品書の通りに軽減税率(8%)、標準税率(10%)に分けて記帳する。
基本的に、この繰り返しになるじゃろう。」

「なるほど。手順がわかると少しは安心ね」
理子に、少しだけ笑顔が戻った。

各企業が事前にしておくべき対策とは


「とはいえ、業務が増えることは間違いなさそうね。
効率化するために、今からできることってあるのかしら」
理子の質問に、会計仙人がニヤリとする。

「そうそう、早めに準備しておかないと後悔するからの。
まずは、なるべく早めに軽減税率が適用される商品やシーンを洗い出して、社内で共有しておくことじゃな。
それから、手書きやエクセルで帳簿をつけているのであれば、クラウド化してファイルを共有したり、会計ソフトを導入することをおすすめするぞ」

「え、手書きはわかるけれど、エクセルもダメなんですか?」

「マンパワーでは対応しきれん可能性が高いからの。
自動仕訳に対応している会計サービスを導入すれば、経理担当者の負担は下げられるし、ミスがおこる確率も低められるのじゃ」


「そっか、効率よく業務をこなすには大事なポイントね」
いつの間にかメモを取り始めている理子。

「それから、今後まだまだ新しい情報が出てくる可能性もある。
基本的なことじゃが、常に軽減税率の最新情報にアンテナを張っておくことも大切じゃよ。
セミナーなども頻繁に開かれているから、そこで学ぶのも良いじゃろう」

「そうとわかれば、これから部長にかけあって、軽減税率とインボイス制度対策の重要性について話してくるわ!」
腕まくりをして、廊下を走り去っていく理子であった。

あくる日。会議室には経理部の部長以下の職員一同がずらりと勢ぞろいしていた。プロジェクターの前では、理子がマイクを持ってにこやかな笑顔を浮かべている。

「本日はお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。軽減税率・インボイス制度の対策について、第一回目の社内ミーティングを始めさせていただきます」

「あのぉ、なんで僕まで出席しているんですか」

「あら吉田さん。まさかこの間のやりとり、他人ごとだと思ってたわけじゃないですよね?」
理子は笑顔でこそいるが、目が笑っていない。

「も、もちろんちゃんと我が身のことと思ってましたよ!」

「営業だって、値付けの変化から打ち合わせで使うカフェの接待費まで、軽減税率やインボイス制度にたくさん関係あるんですからね!
吉田さんは今後も出席すること!議事録とレポートもよろしくね!
さぁ、会社一丸となって、対策を検討しましょう!」

「トホホ、しばらく忙しくなりそうだなぁ」

「相変わらずの行動力じゃなぁ。どれ、今後も軽減税率の対応については、わしもサポートしてやろうかの」
雲間で目を細める仙人だった。


※関連リンク:消費税改正の対策はお済みですか?会計システムに必要な対応はこちらでチェック!

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軽減税率、インボイス制度の導入は、日本の経理業務を大きく変える可能性があります。その影響力を考慮すると、経理担当者個人の意識や予習などはもちろんのこと、会社全体での対応が必要です。不要な混乱を招かないように事前に関係者全員で情報を共有し、対策を打つようにしましょう。
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