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経理/財務管理会計 2017/02/23

その採算割れは、ほんとうに損なのか?(新米経理の会計奮闘記 第1回)

新米経理の会計奮闘記 登場人物
  • 山本理子

    ようやく経理担当になったものの、分からないことだらけ。毎回様々な経理問題に頭を悩ます。曲がったことが大嫌い。

  • 吉田経男

    毎回経理問題を引き起こす営業部員。おっちょこちょいでずる賢い一面もあるが、本当はやさしい男。

  • 会計仙人

    突如現れて、会計問題をわかりやすく解説してくれる謎の仙人。仏陀の会計担当だったらしい。

新米経理の山本理子が社内で巻き起こる様々な経理問題に挑む会計奮闘記。
毎回、突如現れる会計仙人が経理問題を分かりやすく解説してくれるお悩み解決ストーリー。なるほど、ナットク!楽しみながら経理の奥深さや魅力にふれることができます。

営業マンがもってきた曰く付きの案件とは?

社長に信頼される経理マンになるべく毎日熱く奮闘している山本理子。
そんなある日、彼女のもとに営業マンの吉田経男がある案件を持ってきた。

理子が勤める会社は、コーヒーショップのチェーン展開も行っている。
コンビニのコーヒーに対抗して1杯100円の安価で販売し、ロンドンのスタンドバーを彷彿とさせる店舗デザイン。
広々とした店内でイベント用にスペース貸しも行い、夜はバーとして酒を販売し、ちょっとしたライブスペースにもなる。

吉田が持ってきた案件は、昼間に100人集まるイベントがあり、コーヒーを人数分100杯用意してほしいということ。
その際、お客さんは大口の注文なのでコーヒーを1杯70円にまけてくれと言っているらしい。店の貸切も暇な夕方2時間だけで済むとのことだ。

経理部門では、1杯100円のコーヒーの原価、損益の見積を次のように計算していた。
売価
100円
費用
80円 (利益20円)
(費用内訳)
材料などの変動費
30円
人件費(月給)
30円
その他固定費
20円
※この店では通常1日に1000杯のコーヒーが売れると想定。それぞれのコストを1000で割って算出

つまり、売値70円だと採算割れなのである。

仏陀の会計担当!? 謎の会計仙人現る!

「何それ〜、赤字じゃないですかぁ。勘弁してくださいよ、吉田さん」
にべもない理子である。

「でもなあ、いろいろイベントを開催していて集客力もあるお客さんなんだよ。今後のことを考えると、ここは要求飲んどきたいんだよねえ」と、吉田。

「どんなお客さんかちゃんと調べましたぁ?初めてのお客さんなんですよねえ」

「初めてだけど、怪しい情報も出てこないしさあ。お願いします!経理のハンコもらえないと、上にあげられないんだから」と吉田はいつもの懇願調である。

「採算割れじゃあ・・・・」と理子が突き放そうとしたその瞬間、どこからともなく太鼓が鳴り響き、鬱蒼とした霧に包まれた仙人が舞い降りてきた。

「まだまだじゃのぉ、理子。そんなことじゃ、社長の右腕どころか鼻くそにもなれんわい」

「鼻くそって、誰なんですかあなた」静かな怒りを込めて詰問する理子。

「わしは会計仙人、かつては仏陀の会計担当として名を馳せた男よ」

「会計仙人!仏陀の会計担当!」驚愕の二人である。


固定費は追加で何杯つくっても変わらない!

「よいか理子、おまえらの原価及び損益の見積には重大な視点が抜けておる。
確かに80円の原価がかかるものを70円で売れば赤字だ。
しかし、本当に損なのか?よ〜く考えてみよ、月給制の人件費、家賃、減価償却費などの経費は固定費じゃ。1杯50円と算出してあるが、これは何杯売れようが変わらないコストじゃ。
おまえたちの店は、1日に1000杯のコーヒーが売れることを想定して変動費である材料費は1杯あたり30円と算出している。
つまり、コーヒーを余計に100杯作っても固定費は変わらず、材料費が3000円かかるだけじゃ。
それに対して売り上げは70円×100杯で、プラス7000円。
この話は大いに受けるべきものなのじゃ」

追加注文の売上
70円×100杯=7000円
追加注文にかかる材料費
30円×100杯=3000円
※固定費50円は何杯追加しても変わらないので追加注文にはかからない

「このように、固定費と変動費を分けて考えないと、重要な意思決定はできないのだよ」

と仙人は言い残し、ドロロロ〜んと消えていくのであった。

「さすが、仙人わかってるねえ」と、したり顔の吉田である。


「何言ってんですか、自分だってわかってなかったくせに」
「吉田さんの給料だって固定費なんだから、その分くらい働きなさいよ〜」
と怒り心頭の理子。


「気だけは強いのぉ」と会計仙人は雲間からほくそ笑むのだった。


**********
いかがでしたか。理子のミスは、コーヒー製造に要する費用を、固定費であろうと変動費であろうと、すべて製造原価に吸収させてしまったこと。
原価と売値の単純比較だけではなく、固定費と変動費を分けて考えることが大切です。このように、経営に役立ち利益のマネジメントに貢献する会計を管理会計といいます。
これから企業に求められる経理マンになるために欠かせない要素となります。
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