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経理/財務会計処理 最終更新日:2026/06/23

建設業の原価管理で「気づいたときには赤字」を防ぐには?建設業会計の基本と実務

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  • 建設業の原価管理とは、工事ごとの「材料費・労務費・外注費・経費」を継続的に把握・分析し、赤字工事の防止や適切な利益管理につなげる実務である。
  • 建設業会計では、「完成工事高」、「未成工事支出金」など特有の勘定科目を使用するほか、工事完成基準や工事進行基準に応じた収益・原価管理が求められる。
  • エクセルによる原価管理は、情報共有の遅れや入力ミス、属人化のリスクがあり、工事件数の増加に伴って原価管理システムの活用が重要になりやすい。

「工事が終わってから赤字に気づく」、「月末に集計したら予算を超えていた」。
建設業では、こうした原価管理の悩みが少なくありません。
建設業の原価管理は、工事ごとの採算管理に加え、工事進行基準や建設業特有の勘定科目など、建設業会計ならではの処理が求められる点に特徴があります。
この記事では、工事原価の基本から実務手順、エクセル管理の限界、原価管理システム活用のポイントまでをわかりやすく解説します。

建設業における原価管理の基本

建設業で原価管理を正しく行うには、工事原価の管理目的と構成を把握しておく必要があります。


建設業で原価管理が必要な理由
原価管理が必要な理由は、法的義務と経営判断の2つに分けて考えられます。

法的な観点
建設業では、建設業法施行規則により財務諸表の様式が定められており、「完成工事高」と「完成工事原価」を区分した形式で損益計算書を作成する必要があります。
また、建設業許可に関する各種手続きでは、完成工事原価報告書など、原価に関する書類の提出が求められることがあります。
つまり、建設業許可に関する手続きや財務諸表作成のため、建設業では原価管理が実務上不可欠となっています。

経営判断の観点
原価を正確に把握することは、無駄な支出を発見しやすくなり、工事ごとの損益分岐点を着工前に把握できることにつながります。
赤字工事を未然に防ぐだけでなく、内製か外注かの判断や、設備投資の可否といった経営上の意思決定にも直結します。


工事原価を構成する4つの要素
建設業の工事原価は、「材料費」、「労務費」、「外注費」、「経費」の4項目で構成されます。

費目 内容 他業種との違い
材料費 鉄筋・木材・コンクリートなど主体材料や部品類 ほぼ同じ
労務費 現場作業員の賃金・法定福利費など ほぼ同じ
外注費 外部事業者への委託費用 建設業特有の独立費目
経費 工事事務所の賃借料・光熱費・運搬費、現場管理者の人件費など ほぼ同じ
中でも他業種と大きく異なるのが、外注費の扱いです。
製造業では外注加工費として経費に含めるケースが多いものの、建設業では独立した費目として管理するのが一般的です。
一人親方や専門工事業者への発注が工事の根幹を担うことが多く、金額規模も大きいためです。

なお、工事原価に含めるかどうかは、特定の工事に直接ひもづく費用かどうかで判断します。
例えば、次のような費用は、会社全体の運営に必要なものであり、特定の工事に直接対応しません。

  • 営業担当者の人件費
  • 本社の家賃・光熱費
  • 管理部門(経理・総務など)の給与
上記は工事原価には含めず、販売費・一般管理費として処理します。

一方、同じ人件費でも現場管理者の給与は特定の工事に直接関連するため、工事原価(経費)として処理されます。
判断の軸はあくまで「その工事に直接かかった費用かどうか」です。
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建設業会計における原価計算の考え方

建設業会計では、一般的な企業会計とは異なる勘定科目を使います。
そのため、他業種で経理経験があっても、建設業に転じると戸惑うケースは少なくありません。
主な勘定科目の対応関係は以下の通りです。

一般的な企業会計 建設業会計
売上高 完成工事高
売上原価 完成工事原価
売掛金 完成工事未収入金
仕掛品 未成工事支出金
前受金 未成工事受入金
買掛金 工事未払金
また、勘定科目の名称だけでなく、収益と費用を計上するタイミングも一般的な企業会計とは異なります。

※参考資料:国土交通省「建設業法施行規則別記様式第十五号及び第十六号の国土交通大臣の定める勘定科目の分類


工事完成基準と工事進行基準の違い
建設業の収益認識には、工事完成基準と工事進行基準の2つがあります。

工事完成基準
工事完成基準とは、施工した建物などの目的物を発注者へ引き渡した時点で、売上と原価を一括計上する方法です。
会計処理が比較的シンプルで、短期工事などに向いています。

工事進行基準
工事進行基準とは、工事の進捗度に応じて売上と原価を期間按分して計上する方法です。
着工から完成まで1年以上など、工期が長期にわたる工事では、工事完成基準で処理すると当期の損益が実態と大きくずれることがあります。
このような場合に工事進行基準を使うと、進捗に応じた適切な損益把握が可能になります。
進捗度の計算には、発生原価を見積総原価で割る「原価比例法」が用いられるのが一般的です。

※関連記事:工事進行基準で損益の見え方はどう変わる?工事完成基準との違いと新収益認識基準への対応【仕訳例あり】


新収益認識基準への対応
2021年4月から導入された「収益認識に関する会計基準(新収益認識基準)」により、上場企業や大企業を中心に、契約内容の履行状況に応じて売上を計上する考え方が導入されました。
未上場の中小企業では、新収益認識基準の適用は実務上任意となるケースも多く、引き続き従来の工事進行基準や工事完成基準に準じた処理が認められています。
ただし、上場企業の子会社・関連会社は適用対象となるケースがあるため、自社がどのような立場であるか確認しておくことが重要です。

※関連記事:新収益認識基準(収益認識に関する会計基準)で売上はどう変わる?「いつ・いくら」を決める考え方と5ステップ


原価管理が他業種より難しい理由
建設業の原価管理が難しいとされる理由は、大きく4つあります。

1.特殊な勘定科目の使用
国土交通省が定める勘定科目の分類に従って財務諸表を作成する必要があり、一般的な簿記知識だけでは対応が難しい場面があります。

2.外注費の正確な配分
工事ごとに発生する外注費を正確に振り分ける必要があります。
一人親方への支払いと労務費との線引き判断など、建設業特有の複雑な処理が求められます。

3.工事進行基準への対応
進捗度に応じた原価の期間按分、未成工事支出金から完成工事原価への振替など、一般的な売上計上とは異なる処理が発生します。
工期を跨ぐ工事では、原価の発生タイミングと収益の認識タイミングがずれるため、損益管理が複雑になります。

4.現場と経理の連携不足
原価情報は現場から経理部門に集約されますが、フォーマットが統一されていなかったり報告が遅れたりするケースも少なくありません。
工事件数が増えるほど、経理担当者の負担は大きくなります。

工事原価計算の実務手順

原価管理の仕組みを理解したら、次は実際の計算手順を押さえておきましょう。
工事ごとに原価を正確に把握するには、「分類 → 集計 → 分析」の3つのステップを繰り返すことが基本です。


材料費・労務費・外注費・経費の4項目に分類する
まずは、発生した費用を「材料費」、「労務費」、「外注費」、「経費」の4つの費目に振り分けます。
その際、迷いやすいのは労務費と外注費の区別です。

労務費と外注費の判断基準となるのは、雇用関係の有無
自社で直接雇用している作業員への賃金は労務費、一人親方など外部事業者へ外注した費用は外注費に分類します。
一人親方が自社作業員と同じ現場で同じ作業をしているケースでも、雇用契約に基づく賃金であれば労務費、請負契約に基づく支払いであれば外注費と、契約関係によって区別します。
この線引きを現場レベルで統一しておかないと、後の集計で混乱が生じます。
また、複数の工事に共通して発生する間接費(工事間接費)は、あらかじめ定めた配賦基準に基づいて各工事へ按分する必要があります。


工事別に原価を集計し実行予算と対比する
費目別に分類した原価を、工事ごとに集計します。
着工前に「その工事でいくらまで使えるか」を決めたものが実行予算です。
一般的には、受注金額から目標利益を差し引いた金額を、原価の上限として設定します。
集計した実際原価を実行予算と毎月照らし合わせることで、どの工事で予算超過が発生しているかを把握できます。


差異の原因を分析し次の見積精度に反映する
実際原価と実行予算に差異が生じた場合は、費目ごとに原因を分析します。
材料費の高騰なのか、外注費の見積もりが甘かったのか、工期延長による労務費の増加なのか、原因を特定することで、次の工事の見積もりに直接活かせます。
過去の工事データが蓄積されるほど、類似工事における見積精度は向上します。
1件ごとの分析の積み重ねが、会社全体の見積力向上につながっていきます。
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原価管理システムの活用

「Microsoft Office Excel(以下、エクセル)」で原価管理を行っている会社は、今も少なくありません。
導入コストを抑えやすく、多くの担当者が使い慣れている点はメリットです。
ただし、工事件数が増えるにつれて、エクセル管理の限界が具体的な問題として表面化しやすくなります。


エクセルでの管理が抱える限界
エクセルでの原価管理には、主に3つの構造的な問題があります。

情報共有の遅れ
現場からの伝票処理が月末に集中すると、経営陣が原価を確認できるタイミングが遅れがちになります。
現場と管理部門がそれぞれ別ファイルで管理している場合、どちらの数字が正しいのか判断しにくくなることもあります。
その結果、赤字の兆候に気づいたときには、既に手を打ちにくい段階になっているケースもあります。

手入力によるミス
現場の紙伝票を経理担当者がエクセルに手入力する運用では、転記ミスや入力漏れが起きやすくなります。
集計データの信頼性が損なわれると、原価管理そのものが機能しにくくなります。

属人化
担当者が独自に組んだ関数やマクロは、その人しか修正できない状態に陥りがちです。
異動や退職のタイミングで、原価管理業務が停滞するリスクがあります。


システム導入で解決できる課題
工事原価管理システムを導入すると、エクセル管理で起こりやすい課題を解消しやすくなります。

  • 請求書や仕入データを一元管理できるため、紙からエクセルへの転記作業を削減できる。
  • 1回のデータ入力で、現場担当者と管理部門が同じデータを共有できる。
  • 現場で発生した原価がそのままシステムに反映されるため、月末を待たずに工事ごとの損益を確認できる。
  • 「どちらの数字が正しいか」を確認する手間を減らせる。
  • 必要な情報を早い段階で把握できるため、予算超過や赤字工事の兆候にも対応しやすくなる。
  • 過去の工事データを蓄積することで、類似工事の見積精度向上にも活用できる。

自社に合ったシステムの選定ポイント
まず明確にしておきたいのは、自社が行うべき課題解決の内容です。
経理業務の負担削減なのか、工事ごとの損益のリアルタイム把握なのかなど、優先順位を決めておくと選定の軸がぶれにくくなります。
中小規模の建設会社であれば、初期費用を抑えやすく、現場からもアクセスしやすいクラウド型が現実的な選択肢になります。
既存の会計ソフトや販売管理システムと連携できるかどうかも、導入前に確認しておくことが重要です。
また、試用期間やデモ環境を活用して、現場担当者が実際に無理なく操作できるかどうかを確認しておきましょう。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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建設業の原価管理は、建設業会計の基礎となる重要な実務であり、赤字工事の防止や適切な経営判断にも直結します。
工事ごとの実行予算と実際原価を継続的に比較・分析することで、利益管理や見積精度の向上につなげることができます。
また、工事件数が増えるにつれてエクセル管理には限界も生じやすくなるため、自社の課題を整理したうえで、原価管理システムの導入も検討していくことが重要です。

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