HOME 経営上場(IPO) IPO準備、経理担当者は何から始める?上場準備で求められるフェーズ別の役割
経営上場(IPO) 最終更新日:2026/08/06

IPO準備、経理担当者は何から始める?上場準備で求められるフェーズ別の役割

この記事をシェアする
アイコンこの記事のポイント
  • IPO準備では、経理部門に決算の早期化、内部統制(J-SOX)および情報開示体制の整備が求められ、財務情報の信頼性を継続的に担保することが重要である。
  • IPO準備はN-3期から申請期(N期)まで段階的に進み、ショートレビューや会計監査、内部統制の運用、法定開示書類の作成など、フェーズごとに経理部門へ求められる役割が高度化する。
  • 上場水準の経理体制を構築するには、システム導入による業務効率化と専門人材の確保を進め、属人化を防ぎながら安定した運用実績を積み重ねることが重要である。

IPO(新規株式公開)準備では、経理部門が財務情報の信頼性を支える重要な役割を担います。
しかし、「いつから何を始めればよいのか」、「審査では何が見られるのか」と悩む経理担当者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、IPO準備で経理部門に求められる体制や審査のポイント、フェーズごとの役割、そして上場水準の経理体制を構築するための対応策を解説します。
自社の現在地を把握し、次に取り組むべき課題を整理する参考にしてください。

IPO準備で経理部門に求められる体制

IPO(Initial Public Offering)とは、企業が株式を証券取引所へ上場し、一般の投資家が株式を売買できるようにすることです。
IPO準備では、経理部門に、正確な財務諸表を迅速に作成する決算体制と、投資家保護に応える情報開示体制の構築が求められます。


IPO審査で経理部門に求められるポイント
上場企業には金融商品取引法に基づく厳格な開示義務があり、財務情報の信頼性が企業の社会的信用を直接左右します。
そのため、上場審査では、その信頼性を担保する仕組みが組織として機能しているかが問われます。
重点的に見られるのは、主に次の点です。

  • 月次決算を迅速に締め、経営判断に活用できる体制が整っているか(IPO準備企業では、翌月10営業日前後での確定を目安とするケースが多く見られます)
  • 会計処理が会計基準に準拠し、属人的でなくルールに基づいて行われているか
  • 予算と実績の差異を毎月分析し、事業計画の精度を裏づける予実管理ができているか
  • 内部統制(J-SOX)のもとで、財務報告に関わる業務プロセスが文書化・運用されているか
これらは単発の作業ではありません。
1年を通して継続・定着している運用実績が評価の対象となります。
例えば月次決算の早期化も、一度達成すれば十分というわけではなく、毎月安定して期限内に完了できる状態を維持しなければ審査では評価されにくいといえます。
会計業務を効率化!
かんたんクラウド会計

電子帳簿保存法・電子取引に対応!スタートアップの方、中小企業・小規模事業者の方に最適!クラウドだからこそ実現するプロから選ばれる会計・給与ソフトをだれでも簡単に!

詳しく見る

IPOフェーズごとに経理が担う役割(N-3期〜N期)

IPO準備では、上場申請を行う年度を「N期」とし、そこから遡って「N-1期」、「N-2期」、「N-3期」と表記するのが一般的です。
企業ごとに決算期が異なるため、申請期を基準とした相対的な時系列で整理することで、準備の進捗や各フェーズで求められる対応を共通の基準で示せます。

上場申請時には、投資家保護の観点から、原則として直前々期(N-2期)および直前期(N-1期)の財務諸表について監査法人による監査証明が求められます。
そのため、各期で必要な体制や運用実績を計画的に整えていくことが重要です。
一つのフェーズで遅れが生じると、その後の準備や上場スケジュール全体に影響を及ぼす可能性があります。

経理部門に求められる役割も、上場準備期(N-3期)から申請期(N期)にかけて段階的に高度化していきます。
以下では、N-3期からN期まで、それぞれのフェーズで経理が担う役割を順に見ていきます。

フェーズ 主な目的 経理部門の主な役割
N-3期 課題の洗い出し
  • ショートレビューへの対応
  • 会計・決算体制の課題整理
  • 改善計画の策定 など
N-2期 上場水準の経理体制を構築
  • 月次・四半期決算への移行
  • 会計処理の見直し
  • J-SOX文書化 など
N-1期 体制の運用・定着
  • 決算体制・内部統制の安定運用
  • 予実管理の強化
  • 引受審査への対応 など
N期(申請期) 上場申請・審査対応
  • 法定開示書類の作成
  • 証券会社・証券取引所への審査対応 など

N-3期:ショートレビューへの対応と課題の洗い出し
N-3期は、監査法人によるショートレビュー(予備調査)を受け、自社の会計・決算面の課題を洗い出す期間です。
ショートレビューは、本格的な会計監査に先立って、上場に向けた課題や改善点を確認するために実施されます。
この段階でどこを改善すべきかを把握しておくことが次のフェーズへの土台となります。

具体的には、未払い計上の漏れや会計処理の不備、関連当事者との取引などについて指摘を受け、それぞれに改善計画を立てます。
ここで課題を正しく把握できないと、N-2期から始まる会計監査に向けた体制整備が遅れ、上場準備全体のスケジュールに影響を及ぼす可能性があります。


N-2期:月次・四半期決算への移行とJ-SOXの文書化
N-2期には監査法人による本格的な会計監査が始まり、経理は年次決算中心の体制から月次・四半期決算へ移行します。
また、会計処理の見直しやJ-SOX対応も本格化し、上場企業として求められる経理体制を整えていく重要な時期です。

会計処理を企業会計基準に合わせて見直す
会計面では、会計処理の方針そのものを見直すことを求められる場面もあります。
未上場企業は税務申告を目的とした税法ベースの会計処理になっている場合が多いため、上場に向けては、企業会計基準に準拠した会計処理へ見直すとともに、金融商品取引法に基づく開示制度にも対応できる体制を整える必要があります。
会計処理の見直しは決算数値に直接影響する可能性があるため、経理が担う重要な作業の一つです。

J-SOXに向けて業務プロセスを文書化する
J-SOX(内部統制報告制度)に対応した業務プロセスの文書化にも着手します。
売上計上や購買などのプロセスについて、業務フローやリスクの所在を可視化し、財務報告の信頼性を担保する仕組みを整えていきます。


N-1期:内部統制の運用と引受審査への対応
N-1期は、構築した決算・内部統制の仕組みを実際に運用し、その実績を1年かけて積み上げる期間です。

決算体制を安定運用する
審査では、月次決算や内部統制の仕組みを整備しているかだけでなく、それが1年を通して安定して運用されているかが問われます。
そのため、月次決算を毎月安定して早期化できる状態を維持することが重要です。

予実管理を強化する
この時期には予実管理の強化も求められます。
事業計画に基づいて予算を策定し、毎月の実績との差異を分析するとともに、その要因を説明できる状態を整えます。
事業計画の信頼性を裏づけるうえで、経理は数値の集計・分析と会計上の正確性を担う重要な役割を果たします。

引受審査への対応を進める
この時期には、主幹事証券会社による引受審査への対応も始まります。
必要な財務資料を準備するとともに、証券会社からの質問や確認事項に対応していきます。


N期(申請期):法定開示書類の作成と審査対応
申請期(N期)には、有価証券届出書や目論見書といった法定開示書類の作成が中心業務となります。

法定開示書類を作成する
IPO時に提出する有価証券届出書は、上場後に提出する有価証券報告書に近い構成で、事業内容・リスク情報・財務情報などを網羅した詳細な開示書類です。
投資家保護の観点から正確さが強く求められるため、これまで整えてきた決算・開示体制の総仕上げにあたる作業となります。

上場審査に対応する
N-1期から継続する主幹事証券会社との審査対応と併せて、N期には証券取引所による上場審査への対応が本格化します。
いずれの審査でも会計領域の質問への回答や指摘事項への対応が集中するため、通常業務に加えて多くの追加対応が発生します。
そのため、経理部門の業務負担が1年のうちで最も大きくなりやすい時期です。
会計業務を効率化!
かんたんクラウド会計

電子帳簿保存法・電子取引に対応!スタートアップの方、中小企業・小規模事業者の方に最適!クラウドだからこそ実現するプロから選ばれる会計・給与ソフトをだれでも簡単に!

詳しく見る

IPO準備で経理体制を強化する方法

上場水準の経理体制を構築するには、システムの導入による業務効率化と、専門人材の確保を並行して進めることが効果的です。
限られた人員で従来業務と上場準備を両立させるには、手作業に依存した体制のままでは決算の早期化や内部統制の要件を満たせません。
属人化はそれ自体が審査上の懸念ともなります。


システムと人材の両面から体制を強化する
経理部門を強化する主な対応策は、次の通りです。

  • クラウド会計システムや経費精算システムを導入し、伝票処理や入力作業を自動化して決算リードタイムを短縮する
  • 監査法人出身の公認会計士やIPO経験のある経理人材を採用し、開示業務や監査対応を担える体制をつくる
  • 業務プロセスを標準化・マニュアル化し、特定の担当者に依存しない仕組みへ移行する
  • IPO準備に特化したクラウドサービスを活用し、膨大なタスクや証券会社とのやり取りを一元管理する

外部の専門家を活用する
社内のリソースだけで対応しきれない場合は、IPOコンサルタントや監査法人などの外部専門家を活用する方法もあります。
不足する専門知識を外部から補いながら、社内の経理体制を段階的に整えていく進め方も有効です。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
会計業務を効率化!
かんたんクラウド会計

電子帳簿保存法・電子取引に対応!スタートアップの方、中小企業・小規模事業者の方に最適!クラウドだからこそ実現するプロから選ばれる会計・給与ソフトをだれでも簡単に!

詳しく見る
**********

この記事では、IPO準備で経理部門に求められる体制や審査のポイント、N-3期から申請期までのフェーズごとの役割、そして経理部門を強化するための対応策を解説しました。
IPO準備では、フェーズごとに経理部門へ求められる役割が変化していきます。
決算の早期化や内部統制、情報開示体制を計画的に整えながら、継続して運用できる仕組みを構築することが重要です。
まずは自社が現在どのフェーズにあるのかを確認し、優先して取り組むべき課題を整理することから始めましょう。

人気記事ランキング - Popular Posts -
記事カテゴリー一覧 - Categories -
関連サイト - Related Sites -

経理ドリブンの無料メルマガに登録