HOME 経理/財務消費税 デジタルインボイスと電子インボイスは何が違う?Peppolで変わる請求書業務と導入準備
経理/財務消費税 最終更新日:2026/04/14

デジタルインボイスと電子インボイスは何が違う?Peppolで変わる請求書業務と導入準備

この記事をシェアする
アイコンこの記事のポイント
  • デジタルインボイスとは、請求データを構造化し、売り手と買い手のシステム間で直接連携して自動処理する仕組みであり、手入力や転記作業を大幅に削減する。
  • デジタルインボイスは、PDF送付などを含む電子インボイスの一種だが、PeppolおよびJP PINTに準拠することで、会計ソフトへの入力や仕訳、入金消込までの自動化を実現できる点が異なる。
  • 導入は、業務フローの可視化、対応ソフトの選定、一部取引先での試行、段階的展開の4段階で進めるのが実務的であり、取引先の対応状況と電子帳簿保存法への対応が重要となる。

請求書の受け取りから会計ソフトへの入力、仕訳、入金消込まで、経理担当者の手作業に頼っている企業はまだ多いのではないでしょうか。
デジタルインボイスは、請求データをシステム間で自動連携し、こうした手入力の工程をなくすための仕組みです。
国際標準仕様として普及しているPeppolを基盤とし、日本ではデジタル庁が日本版仕様JP PINTを策定して普及を進めています。
本記事では、デジタルインボイスの基本的な仕組みや電子インボイスとの違い、導入によって経理業務がどのように変わるのか、具体的な導入準備の手順まで解説します。

デジタルインボイスとは

デジタルインボイスとは、売り手のシステムから買い手のシステムへ、人の手を介さずに請求データを直接連携し、自動処理する仕組みです。
紙の請求書をPDFにしてメールで送る方法では、受け取った側が内容を目で確認し、会計ソフトに手入力する必要があります。
一方で、デジタルインボイスでは、請求書番号や取引先名、金額、税率といった情報を、システムがそのまま読み取れる形式のデータとして送受信するため、会計ソフトでそのまま処理できます。
データ形式の標準規格には、世界的に利用されているPeppol(ペポル)が使われています。
経理担当者が転記する作業を大幅に省け、受け取った請求データをそのまま会計処理に流せる点が、従来の請求書処理との大きな違いです。

※参考資料:デジタルインボイス推進協議会「デジタルインボイスとは


電子インボイスとデジタルインボイスの違い
電子インボイスとデジタルインボイスは、似た言葉ですが指す範囲が異なります。

電子インボイス
電子インボイスは、電子データとして発行・送受信される請求書の総称です。
ExcelやWordで作成した請求書をPDFに出力してメールで送る方法や、紙の請求書をスキャンしてデータ化したものも電子インボイスに含まれます。

デジタルインボイス
デジタルインボイスは、Peppolの規格に準拠し、データ形式が標準化・構造化された電子請求書を指します。

概念的には、以下の関係で整理できます。
実務上の違い
両者の実務上の違いは、受け取った後の処理にあります。
電子インボイスは人が内容を確認して会計ソフトに入力するケースが多いのに対し、デジタルインボイスはシステムがデータを直接読み取るため、手入力そのものが不要になります。


デジタルインボイスの国際標準「Peppol」と日本版仕様「JP PINT」
Peppol(ペポル)とは
Peppol(Pan European Public Procurement Online)は、請求書などの電子文書をネットワーク上でやり取りするための国際的な標準仕様です。
ベルギー法に基づく国際非営利団体「OpenPeppol」が管理しており、欧州を中心に40カ国以上で利用されています。
Peppolに対応した会計ソフトやサービスを使えば、取引先が別のソフトを使っていても、Peppolネットワークを通じてデジタルインボイスを送受信できます。
異なるメールサービス同士でもメールが届くのと同じ仕組みです。

JP PINT(ジェーピー・ピント)とは
日本では、デジタル庁が日本のPeppol Authority(Japan Peppol Authority)として、Peppolをベースに日本の商慣習やインボイス制度に合わせた標準仕様「JP PINT」を策定しました。
2021年9月に公開され、月締め請求書(合算請求書)など日本特有の請求慣行にも対応しています。

※参考資料:デジタル庁「JP PINT


デジタルインボイス推進の背景にあるOECD「税務行政3.0」
OECDは2020年に「税務行政3.0(Tax Administration 3.0)」を公表しました。
これは、税務行政の将来像を示したビジョンであり、納税者が日常的に使う業務システムと税務手続きをデータ連携し、負担を感じることなく正確な申告・納税ができる社会の実現を目指すものです。

この考え方を踏まえ、日本の国税庁は「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション〜税務行政の将来像2023〜」を策定しました。
その中心となる概念が「デジタルシームレス」です。
デジタルシームレスとは、取引の発生から会計処理、税務申告・納税までを、人手による入力作業を介さずにデジタルデータで一貫して処理する考え方です。
転記工程をなくすことで、ミスの防止と業務の効率化を同時に実現できます。

デジタルインボイスは、このデジタルシームレスを実現する手段の一つとして、バックオフィス業務全体のデジタル化を支えています。

※参考資料:国税庁「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション
今、知っておくべき!
デジタルインボイス

請求書がペーパーレスになって安心していませんか?「デジタルインボイス」を「電子化した請求書」と理解しているようでは不十分です。デジタルインボイスの本質と、目指すべき社会像について整理しましょう。

詳しく見る

デジタルインボイスで経理業務はどう変わるのか

デジタルインボイスを導入すると、日々の経理業務の流れは大きく変わります。
ここでは、請求書の発行・受領から入金消込までの具体的な変化と、導入時に押さえておくべき課題を整理します。


請求から入金消込までのデジタル完結
従来の請求書業務では、PDFや紙で届いた請求書を経理担当者が目で確認し、会計ソフトに手入力するのが一般的でした。
デジタルインボイスを導入すると、売り手が送信した請求データがPeppolネットワークを経由して買い手のシステムに直接届きます。
届いたデータをもとに、会計ソフトの設定に基づいて勘定科目や税区分を処理し、仕訳データを生成できるため、手入力の工程を大幅に減らすことが可能です。

また、売り手側でも、請求データと入金情報を紐づけることで入金消込を自動化できる場合があります。
請求から支払い、仕訳、消込までの一連の流れをデジタルデータで処理できるようになるため、複数税率の計算や適格請求書の要件チェックなど、インボイス制度で増えた確認作業の負担も軽減できます。


導入時に想定される課題と対処法
デジタルインボイスの導入にあたって、事前に押さえておきたい課題が3点あります。

1. 取引先の対応状況
取引先がPeppolに未対応の場合、データ連携による請求書のやり取りはできません。
全取引先を一度に切り替えるのは難しいため、対応済みの取引先から順に広げていく前提で計画を立てることが重要です。

2. システム導入のコスト
Peppol対応の会計ソフトやサービスへの移行には、初期費用や月額費用がかかります。
経営層への稟議では、現在の請求書処理にかかっている人件費や作業時間を試算し、導入後の削減効果を数字で示すと説明しやすくなります。

3. 電子帳簿保存法への対応
デジタルインボイスのデータは電子取引に該当するため、真実性・可視性の確保など電子帳簿保存法などの要件を満たした形で保存する必要があります。

なお、Peppolネットワーク自体に保存機能はありません。
送受信されたデータは各企業が自社の会計ソフトやERPなどに取り込み、保存・管理するのが一般的です。
そのため、自社での保存・管理ルールは導入前に整備しておくことをおすすめします。
今、知っておくべき!
デジタルインボイス

請求書がペーパーレスになって安心していませんか?「デジタルインボイス」を「電子化した請求書」と理解しているようでは不十分です。デジタルインボイスの本質と、目指すべき社会像について整理しましょう。

詳しく見る

デジタルインボイスの導入準備

デジタルインボイスの仕組みやメリットを理解しても、実際に何から手をつければいいのか迷う方は少なくありません。
ここでは、導入までの流れを4つのステップに分けて整理します。


1.自社の現状の請求書業務フローと課題を可視化する
デジタルインボイスの導入で最初にやるべきことは、現在の請求書業務の棚卸しです。
請求書の発行・受領それぞれについて、誰がどの手順で処理しているかを書き出します。
月間の請求書処理件数、手入力にかかっている時間、紙の請求書とPDFの割合なども把握しておきます。
業務フローを可視化すると、どの工程に時間がかかっているか、どこでミスが発生しやすいかが見えてきます。
経営層に導入を提案する際にも、現状の工数を数字で示せると判断材料になります。


2.対応ソフトを比較検討し自社に合う製品を選定する
次に、Peppolに対応した会計ソフトやサービスの選定です。
現在、多くの主要な会計ソフトがPeppol対応を進めており、自社の状況に合った製品を選ぶことが重要です。
選定時に確認すべきポイントは、主に以下の3つです。

  • 自社で使っている既存の会計システムとの連携性
  • 月間の処理件数に耐えられるか
  • 電子帳簿保存法の保存要件への対応状況
既存システムからの移行が発生する場合は、データ移行の手順やサポート体制も併せて確認しておきます。
費用面では、初期費用と月額費用に加え、取引先の数に応じた従量課金の有無も比較のポイントになります。


3.一部の取引先から運用を開始し社内体制を整える
ソフトの選定が済んだら、まずPeppol対応済みの取引先を数社選んで運用を始めます。
デジタルインボイスは、未対応の取引先とはPDFで、対応済みの取引先とはデジタルデータで、という併用運用が可能です。
全取引先が揃うのを待たずに切り替えを始められるため、対応済みの取引先から順に社内の処理フローを整えていくのが現実的な進め方です。
運用開始時には、以下が正しく機能するかを重点的に確認します。

  • ネットワーク接続
  • データの送受信
  • 会計ソフトでの自動仕訳
併せて社内の運用マニュアルも作成しておくと、次のステップで取引先を広げる際の混乱を防げます。


4.取引先へ移行スケジュールを通知し段階的に展開する
社内体制が整ったら、対象の取引先を広げていきます。
取引先には、デジタルインボイスへの移行スケジュールと送信方法を事前に通知します。
Peppolに未対応の取引先がいる場合は、従来のPDFや紙の請求書と並行運用する期間を設けます。
一度にすべてを切り替えようとすると現場の負担が大きくなるため、未対応の取引先を把握したうえで移行の優先順位を決めておくことが重要です。
導入後も、処理時間やエラー件数の推移を定期的にモニタリングし、運用フローの改善につなげていくことで、業務効率化の効果を積み上げられます。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
今、知っておくべき!
デジタルインボイス

請求書がペーパーレスになって安心していませんか?「デジタルインボイス」を「電子化した請求書」と理解しているようでは不十分です。デジタルインボイスの本質と、目指すべき社会像について整理しましょう。

詳しく見る
**********

デジタルインボイスは、請求データを構造化してシステム間で連携し、請求書業務の自動化を実現する仕組みです。
PeppolやJP PINTといった標準仕様の整備が進み、経理業務のデジタル化を支える基盤として注目されています。
現時点でPeppolの利用は義務ではありませんが、対応ソフトやサービスプロバイダーは着実に増えています。
まずは自社の請求書業務フローを可視化し、導入の検討を始めておくことが重要です。

人気記事ランキング - Popular Posts -
記事カテゴリー一覧 - Categories -
関連サイト - Related Sites -

経理ドリブンの無料メルマガに登録