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経営事業計画/経営計画 最終更新日:2026/03/31

子会社化で経営スピードは上がる?子会社のメリットと“増える負担”をセットで理解

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「事業拡大に伴い一部門を子会社化すべきか」「M&Aで他社を子会社にするメリットは何か」といった検討は、経営戦略上の重要なテーマです。
子会社化は有効な組織再編手法ですが、そのメリットとリスクを正しく理解することが不可欠です。
子会社化には、意思決定の迅速化や事業リスクの分散、税務面での最適化などのメリットがある一方で、管理コストの増加やガバナンス体制の構築負担といったデメリットもあります。
本記事では、子会社の定義や種類を整理したうえで、子会社化のメリット・デメリットと対応策を解説します。

子会社とは

子会社とは、会社法において「親会社によって財務および事業の方針の決定を支配されている会社」と定義されています。
ポイントは、単に株式を保有しているだけでなく、「支配しているかどうか」が判断基準になる点です。
具体的には、会社法第2条第3号および会社法施行規則第3条に基づき、議決権の保有比率(通常は過半数)や役員の派遣状況などから総合的に判断されます。

例えば、A社がB社の株式を51%保有している場合、B社はA社の子会社となります。
また、株式保有が40%であっても、B社の取締役の過半数がA社出身者で占められている場合は、実質的に支配していると見なされ、子会社として扱われることがあります。

※参考資料:e-Gov 法令検索「会社法
※参考資料:e-Gov 法令検索「会社法施行規則



関連会社との違い
企業グループには「子会社」とよく似た概念として関連会社があります。
関連会社とは、親会社が経営を支配しているわけではないものの、経営方針に重要な影響を与えることができる会社を指します。
一般的には、親会社が議決権の20%以上50%以下を保有している場合に関連会社と判断されるケースが多く、会計上は持分法適用会社として扱われます。
子会社のように売上や費用をすべて連結財務諸表に合算するのではなく、保有比率に応じた損益のみを親会社の決算に反映させる点が特徴です。
このような関係は、いきなり子会社化して経営責任やリスクを負うのではなく、まずは資本提携(関連会社化)から始めて関係性を深めるといった戦略的なステップとして活用されることもあります。

一方、子会社は親会社が財務および事業の方針を支配している会社であり、通常は議決権の過半数を保有するなど、経営の意思決定を実質的にコントロールできる関係にあります。
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子会社の主な種類

子会社は、株式の保有比率や担う役割によっていくつかの種類に分類されます。
それぞれ特徴が異なるため、目的に応じた形態を選ぶことが重要です。


株式保有比率・会計上の分類
子会社は、親会社の株式保有比率や連結決算への影響度によって分類されます。

完全子会社(親会社が株式を100%保有)
完全子会社とは、親会社が発行済株式のすべてを保有している子会社のことです。
経営の自由度が最も高く、迅速な意思決定ができる点が特徴です。
具体的には、親会社の一部門を分社化して100%子会社にするケースや、株式交換によって他社を完全子会社化するケースなどがあります。

連結子会社(親会社の決算に合算される)
連結子会社とは、親会社がその株式の過半数(50%超)を保有し、経営を実質的に支配している子会社のことです。
連結子会社の決算は親会社の連結決算に合算されるため、子会社の業績が親会社の財務諸表に直接反映されます。
そのため、子会社の売上増加や利益成長はもちろん、損失が発生した場合もグループ全体の業績に影響を及ぼす点に注意が必要です。

非連結子会社(重要性が低く連結から除外される)
非連結子会社とは、親会社が一定の株式を保有しているものの、連結決算の対象から除外される子会社のことです。
親会社が経営を支配している場合でも連結財務諸表には含まれないため、親会社の業績に直接的な影響を与えません。
具体的には、休眠状態に近い会社や、設立直後で資産規模が極めて小さい子会社などが該当します。
ただし、重要性が増した場合は連結対象に変更されることもあります。


役割・機能による分類
子会社は、法律や会計上の分類だけでなく、グループ内で担う役割や目的によっても分類できます。

事業子会社
事業子会社とは、特定の事業領域や市場を担当し、その分野で収益を上げることを目的とした子会社です。
親会社とは独立した形で事業運営を行い、専門性を活かした経営判断が可能になります。
例えば、自動車メーカーにおいて車両の販売・流通を専門に担う「〇〇販売株式会社」や、総合商社において食品分野の取引を専門に行う「〇〇食品株式会社」、ホールディングス傘下で特定の事業領域を担う各事業会社などが該当します。

機能子会社
機能子会社とは、グループ全体の特定の機能や業務を集約して担う子会社です。
直接的な収益を上げることよりも、グループ全体の業務効率化やコスト削減を目的としています。
例えば、経理・人事などの間接部門を集約した「〇〇シェアードサービス株式会社」、グループ全体のIT基盤やシステム運用を担う「〇〇システムズ株式会社」、グループ内の資金調達や金融機能を統括する「〇〇ファイナンス株式会社」などが該当します。

経営戦略として子会社化を行うメリット

子会社化は、単なる組織再編ではなく、意思決定の迅速化やリスク分散など経営上の大きなメリットをもたらす戦略的な手法です。
ここでは、子会社化によって得られる6つの主なメリットを解説します。


1. 迅速な意思決定で経営スピードが向上する
子会社に権限を委譲することで、親会社の承認プロセスを経ずに子会社独自で決裁が可能になり、市場の変化に素早く対応できるようになります。
大企業では稟議や承認フローに時間がかかりがちですが、子会社化することによって現場に近い場所でスピーディーな経営判断が可能になります。

このメリットの例:
例えば、流行の移り変わりが激しいアパレル事業を子会社化し、商品企画から販売までの決定権を委譲することで、トレンドを逃さず商品を市場に投入できるようになります。


2. 事業ごとのリスクを分散できる
特定の事業を子会社として分離することで、その事業で発生した負債や損失が親会社の経営に直接影響を及ぼすリスクを限定できます。
子会社は親会社とは別の法人格を持つため、法的な責任も原則として分離されます。これにより、一つの事業の失敗がグループ全体に波及することを防げます。

このメリットの例:
例えば、新規のハイリスク事業に挑戦する際、子会社を設立して事業を行うことで、万が一失敗しても親会社本体へのダメージを最小限に抑えられます。


3. 中小法人向け税制を活用できるケースがある
大企業(資本金5億円以上など)の完全支配関係がない場合には、子会社を設立することで、税制上の優遇措置を受けられる場合があります。
法人税法では、資本金1億円以下の中小法人の場合、年800万円以下の所得に対して軽減税率が適用されます。
そのため、大企業では中小企業向けの軽減税率が適用されませんが、一部門を資本金1億円以下の子会社として切り出すことで、その子会社には中小企業向けの軽減税率が適用され、グループ全体の税負担を軽減できる可能性があります。

※参考資料:国税庁「法人税の税率


4. 独自の労働条件や人事制度を設定できる
子会社化することで、親会社の画一的な賃金体系や就業規則に縛られず、事業内容や地域特性に合った柔軟な雇用条件を設定できます。
子会社は親会社とは別法人となるため、独自の就業規則や人事制度を運用することが法的にも容易になります。

このメリットの例:
例えば、IT部門を子会社化して市場競争力のあるエンジニア向けの給与体系を導入したり、地方拠点を子会社化して地域の賃金相場に合わせた給与設定にしたりすることが可能です。


5. M&Aを活用することで時間を買える
自社でゼロから事業を立ち上げるよりも、既存の会社をM&Aで子会社化することで、既に確立された技術や顧客基盤、人材を即座に獲得できます。
これはいわゆる「時間を買う」戦略であり、事業をゼロから立ち上げる場合に必要な数年の期間を大幅に短縮できます。

このメリットの例:
例えば、自社にない技術を持つベンチャー企業を子会社化することで、研究開発にかかる時間をスキップし、短期間で新製品や新サービスをリリースすることが可能になります。


6. 配当を活用してグループ内の資金移動の税負担を抑えられる
子会社から親会社へ配当金を支払うことで、グループ内の資金を効率よく移動させることができます。
通常、法人が配当金を受け取ると法人税の課税対象になります。
しかし、子会社は既に利益に対して法人税を支払った後に配当を行うため、親会社でも課税されると同じ利益に対して二重に課税されることになります。
この二重課税を防ぐため、法人税法では「受取配当等の益金不算入」という制度が設けられています。
子会社(特に保有比率が高い場合)から受け取った配当金については、その全額または大部分を親会社の課税所得に算入しなくてよいとされています。
この仕組みにより、グループ企業間での資金移動に伴う税負担を抑えながら、効率的に資金を再投資することが可能になります。
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子会社化する前に検討すべきデメリットと対応策

子会社化にはメリットがある一方で、管理コストの増大や損益通算の制限など、事前に把握しておくべきデメリットも存在します。
ここでは、4つの主なデメリットとその対応策を解説します。


1. 管理部門のコストが増加する
子会社を設立すると、経理・人事・総務などのバックオフィス機能が会社ごとに必要となり、グループ全体の間接コストが増加します。
別法人である以上、決算申告や社会保険手続き、株主総会の開催など、法的に求められる業務がそれぞれの会社で個別に発生するためです。

このデメリットの例:
例えば、これまで親会社で一括処理していた経理業務が、子会社設立により2社分に増え、税理士報酬や会計ソフトの利用料、さらには経理担当者の増員が必要になるケースもあります。

このデメリットの対応策:
対応策としては、グループ内にシェアードサービス会社を設立して間接業務を集約したり、クラウド型の会計・人事システムを導入して業務を効率化したりする方法が有効です。


2. 通常の子会社では損益通算ができない
原則として、子会社の赤字を親会社の黒字と相殺して税負担を軽減することはできません。
法人税は原則として法人ごとに課税されるため、親会社と子会社の損益を合算して計算することができないのです。

このデメリットの例:
例えば、子会社が1,000万円の赤字を出しても、親会社が1,000万円の黒字であれば、親会社はその黒字に対して法人税を納める必要があります。
これが事業部であれば損益を相殺して利益ゼロにできますが、別法人である子会社ではそれができません。

このデメリットの対応策:
対応策としては、100%の支配関係がある場合に適用できる「グループ通算制度」の活用を検討することが挙げられます。
この制度を利用すれば、グループ内の法人間で損益通算が可能になり、グループ全体での税負担を最適化できます。

※関連記事:【2022年4月適用開始】グループ通算制度は電子申告が必須?システムの導入で手続きがより楽になる!
※参考資料:国税庁「グループ通算制度の概要



3. ガバナンスが効かず不正リスクが高まる
子会社の独立性が高すぎると、親会社の監視が行き届かず、不正会計やコンプライアンス違反が発生しやすくなります。
子会社で起きた不祥事が親会社のブランド毀損や信用失墜に直結した事例は少なくありません。

このデメリットの例:
例えば、子会社の経営陣が売上目標を達成するために架空取引を行い、親会社の発見が遅れたことでグループ全体の信用問題に発展するケースがあります。

このデメリットの対応策:
対応策としては、親会社による定期的な内部監査の実施や、子会社への監査役・取締役の派遣、グループ共通のコンプライアンス規程の整備などが有効です。
子会社の自主性を尊重しつつも、適切な報告体制とチェック機能を構築することが重要になります。


4. 人材交流が停滞し人材流出につながる可能性がある
子会社化に伴い従業員が転籍扱いになると、モチベーションの低下や組織間の壁によるコミュニケーション不足を招くことがあります。

このデメリットの例:
例えば、親会社から子会社への異動を左遷と受け取られ、優秀な社員が離職してしまうリスクがあります。
また、会社が分かれることで親会社と子会社間の情報共有が減り、グループとしての一体感が薄れる可能性もあります。

このデメリットの対応策:
対応策としては、子会社化の目的やキャリアパスを従業員に丁寧に説明することが重要です。
また、グループ内での人事交流制度を設けたり、親会社への復帰ルートを明確にしたりすることで、従業員の不安を軽減し、人材流出を防ぐことができます。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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子会社化は、うまく活用すれば経営のスピードアップや事業リスクの分散など、大きな効果が期待できる戦略です。
しかし、子会社化のメリットは大きい一方で、管理コストの増加やガバナンス上の課題も伴います。
メリットとデメリットを踏まえ、自社の経営課題や成長戦略に照らして最適な選択かどうかを慎重に判断することが重要です。

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