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経営上場(IPO) 2025/02/18

廃業届は必要?個人事業主が法人化(法人成り)する際に押さえるべき手続きと注意点

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個人事業主にとって法人化に伴う廃業は大きな決断です。
廃業時は様々な手続きが必要であり、廃業届以外にも提出すべき書類は数多くあります。
今回の記事では、廃業時の税務上の手続きや、事前にチェックしておきたい内容について解説します。

廃業の概要と必要な手続き

廃業とは、事業を終了することをいいます。
事業や資金繰りが苦しくなり倒産に近い状況で廃業するだけでなく、個人事業主が法人化するために廃業するなど、廃業には様々な事情があります。
ただし、いかなる事情であっても、事業を廃業する場合には共通して行うべき様々な手続きがあります。


税務署に提出する書類
個人事業主の廃業時に税務署に提出する書類は以下の通りです。

個人事業の開業・廃業等届出書
事業を終了した事実を税務署に通知するために所轄税務署に提出するのが廃業届です。
正式名称を「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、廃業日から1カ月以内に提出します。
個人事業主が法人化した場合でも、一度個人事業を廃止したことになるので、廃業届の提出が必要です。
ただし、複数事業のうち一部の事業のみ法人化する場合は、個人事業が継続していることになるので提出不要となります。
ほかに、賃貸業で個人の不動産所得が発生する場合も廃業届は提出不要です。
廃業届を提出しない場合は、引き続き確定申告などの税務手続きを行う必要があるため、注意しましょう。

所得税の青色申告の取りやめ届出書
事業廃止とともに青色申告を取りやめる場合、税務署に「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出する必要があります。
提出期限は事業廃止年の翌年3月15日までです。

消費税の事業廃止届出書
消費税の課税事業者の場合は、原則として事業廃止後、速やかに、所轄税務署に「消費税の事業廃止届出書」を提出する必要があります。

給与支払事業所等の開設・移転・廃止届出書
従業員を雇って給与の支払いをしている給与支払事務所がある場合には、廃業届と併せて税務署に「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書」を提出する必要があります。


都道府県や市区町村に提出する書類
また、税務署だけでなく、都道府県や市区町村に提出する書類もあります。

事業廃止届出書
個人事業税の対象となる事業を営んでいる場合には、都道府県税事務所に、「事業廃止届出書」を提出する必要があります。
提出期限は廃業日から10日以内と短いため、注意しましょう。

異動届出書
事業の廃止に伴って事務所を廃止した場合、所轄の都道府県税事務所に「異動届出書」を提出する必要があります。
提出期限は廃業日から10日以内です。
この書類の提出により、廃業後の個人事業税の課税を避けることができます。

※参考資料:東京都主税局「事業を始めたとき・廃止したとき
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廃業に伴う税務手続き

廃業後は、原則として確定申告でその事業に係る経費を控除できなくなります。
事務所や設備のリース契約などがある場合は、解約時期を確認し、廃業前に支払完了しましょう。
また、従業員や専従者への給料の支払いについても廃業までに行い、源泉徴収などの手続きも完了しておくことが重要です。
廃業後も残る見込みのある在庫や設備などは、売却先などについて検討し、可能な限り廃業前に手続きを終わらせておきましょう。
ただし、廃業後に発生した経費であっても、在庫の処分費用や、廃業手続きで発生したもののうち一定の費用については、「事業を廃止した場合の必要経費の特例」によって必要経費として認められる場合もあります。
そのほか、取引先との間で未清算の金額がある場合は、迅速に対応しましょう。


廃業年の確定申告のポイント
所得金額が48万円以上などの要件を満たす場合には、廃業した年も確定申告を行う必要があります。
また、赤字であっても、源泉徴収された金額がある場合には確定申告によって税金が還付される可能性があります。
青色申告者の場合は、最後の年の申告でも青色申告特別控除や純損失の繰越控除などの特典を利用することも可能です。
廃業年に必要経費として計上できるものは可能な限り計上し、節税に務めましょう。


予定納税額の減額申請
予定納税とは、前年の支払税額を基準に今年発生する予定の法人税や消費税を前払いをする制度です。
廃業後、予定納税額が実際に支払うべき税額と比較して多い場合には「予定納税額の減額申請書」を提出することで減額できる可能性があります。
なお、予定納税の減額申請をしなくても、確定申告で還付を受けることもできるため、事務負担なども考慮してどちらの方がよいか検討してみるとよいでしょう。

※関連記事:法人税・消費税の中間申告。会社経営への活用ポイントは?


廃業後の帳簿などの保存義務
会計帳簿や領収書などについては、廃業後も保存義務を遵守する必要があります。
仮に税務署からの問い合わせがあった場合でもスムーズに対応するために、基本的に帳簿や領収書は10年間を目処に保存しておくとよいでしょう。
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社会保険に関する手続きや注意点

従業員がいる場合には、廃業にあたって以下の社会保険に関する手続きを行う必要があります。


厚生年金保険の手続き
厚生年金に加入している事業者が事業を廃止した場合、廃業日から5日以内に「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」を所轄の年金事務所に提出する必要があります。

※参考資料:日本年金機構「適用事業所が廃止等により適用事業所に該当しなくなったときの手続き


雇用保険の手続き
雇用保険については、廃業日の翌日から10日以内に「雇用保険適用事業所廃止届」、「雇用保険被保険者資格喪失届」、「雇用保険被保険者離職証明書」を所轄のハローワークに提出する必要があります。
この手続きを怠ると、従業員が新たな勤め先で雇用保険に加入する際に影響があるため、期限内に必ず実施しなければなりません。


労働保険の手続き
労働保険については、廃業日から50日以内に「確定保険料申告書」を所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。
労働保険の保険料は、毎年4月1日から3月31日までの期間を単純に計算し、進行期には概算で納付しています。
年の中途で事業廃止となった場合、最終的に確定した保険料の額と、これまで納付してきた保険料の額との差額について、精算が必要となります。


健康保険や年金の切り替え
個人事業主が廃業した場合、自身の健康保険と年金に関しても変更が必要です。
健康保険について、厚生年金保険などに加入していた場合、廃業後は社会保険から国民健康保険へ切り替える必要があります。
また、年金についても同様に、厚生年金から国民年金への切り替えが必要になります。
これらの手続きに遅れが生じると未払期間が発生し、保険給付や年金の受給額に不利な影響が生じる可能性があるため注意が必要です。


その他の注意点
廃業時によく見られるミスには、廃業届などの書類の提出漏れ、経費の計上漏れ、書類の誤記などがあります。
書類の提出漏れを防ぐには、本記事を参考に、必要な手続きのリストを作成しておくとよいでしょう。
経費の計上漏れは、契約や資産の管理不足によって生じるケースがあるため、事前に解約手続きや資産状況の確認をしましょう。
なお、個人事業主が法人化する場合、通常の廃業手続きに加えて、資産の引き継ぎなどの手続きも必要になります。
こちらの準備も忘れずに行うようにしてください。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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廃業手続きは廃業届の提出だけにとどまらず多岐にわたりますが、計画的に進めれば税務リスクを最低限に抑えて対応することができます。
廃業時に慌てることのないよう、本記事を参考に事前準備をしてみてください。

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