第5回 「段取り」で期限オーバー防止

前回はミスを限りなく少なくするための仕事術をお送りしました。今回はその上で素早く仕事を行う「スピード」についての仕事術をお届けします。
1.はじめに
ただし、いくらミスが許されない現場だと言っても、ミスをしなければどんなに時間をかけても良いわけではありません。「スピード」重視、これも監査現場における重要な課題の1つです。
そこで今回は、スピードが重視される現場である点にスポットを当て、期限オーバーを防ぐ仕事術を取り上げることにします。
2.スピード重視の監査現場、期限オーバーにならないために行われていたこととは?
監査というのは、法令などで期限が決まっており、絶対に遅れることができない仕事です。しかも3月決算会社が圧倒的に多く、監査のメンバーもそれぞれがいくつものクライアントを受け持っているため、万が一1つのクライアントの業務が期限に完了しないといった事態になったら、他のクライアントの業務にも大きな影響が出かねません。いわば限られた時間の中で業務を完了させなければならないという「スピード」重視の仕事でもあったのです。
仕事を速く行うためには、「自分自身の作業を速くこなす」ことと、「段取りよく仕事を進めること」が重要となります。作業を速くこなすためには、自分自身の知識や実務経験を増やすといった仕事の土台となる部分によるところが大きいでしょう。そこで、ここでは後者の方にスポットを当て、段取りよく仕事を進めるための仕事術を紹介することにします。
(1)手待ち時間の発生を回避する ~事前依頼~
手待ち時間の発生、これは段取りよく仕事を進める上でできる限り回避しなければならないことです。どんなに個々の検証業務を効率的に進めようとも、それぞれの業務の間に多くの手待ち時間が発生していたら、とても仕事のスピードを速くすることはできません。手待ち時間の発生を回避する上で特に重視したいのは「事前依頼」です。当たり前のことではあるのですが、案外おろそかになってしまいがちなところでもあります。ここでは、新人会計士の失敗の様子を描いた【シーン1】を使って説明しましょう。
【シーン1】
次にSさんはこの帳簿類から検証対象とする販売取引のサンプルを25件ピックアップしました。各サンプルについて、受注・出荷・検収・請求・回収といった一連の業務に関連した証憑類を用意して頂くよう依頼しました。
Sさんは、証憑類が出てくるのを今か今かと待っていますが一向に出てくる気配がありません。その日のうちに出てきたのは一部の取引の請求書と回収に関する証憑だけでした。結局、依頼した証憑類がそろったのは翌日の午後遅くなってからでした。
だいぶ焦りが出ているSさんは、急いでこれらの証憑類のチェックを始めました。合わせて、クライアントの担当者に対してヒアリングをしようと連絡したところ、あいにく外出しているとのこと。翌日も会議の予定がつまっており、時間がないようです。「夕方20分だけなら何とか時間が取れます」と言われ、Sさんはヒアリングを行ったものの、あっという間に20分が経過。そうこうしているうちに期限オーバーとなってしまいました。
【シーン2】
また、これらの証憑類をチェックした上で担当者にヒアリングする必要があるので、担当者と事前にヒアリングの日程調整をしておきます。
事前依頼をしておいたので、Tさんは現場に入ってすぐに証憑類のチェックに取り掛かることができ、業務はスムーズに進みます。証憑類をチェックする過程で出てきた疑問点も、担当者へのヒアリングの日程調整ができていますから順調に行うことができました。Tさんは、チェックすべきことをしっかりと行ったうえ、期限内に業務を終えることができたのです。
- ・準備に時間がかかるかどうか
- ・その業務の遅れが、他の業務に多大な影響を及ぼすような業務かどうか
- ・その人がいないと進まないような業務かどうか
その他、次回に同じ失敗をしないように、事前依頼すべき事項などの情報を引き継ぐといったことも大事です。
(2)できるうちにやっておく ~前倒し~
3月決算のクライアントが圧倒的に多い監査現場では、3月の決算数値が固まった後に何でもかんでも検証しようとしたら、とても期限内に仕事を終えることはできません。そのため、「できるうちにやっておく」ということが大切で、会計士というのは、業務を進める際には絶えず「前倒し」でやっておけることがないかを考えていました。ここでは、新米現場主任の会計士の失敗の様子を描いた【シーン3】を使って説明しましょう。【シーン3】
ここで大切になるのが「できるうちにやっておく」、つまり「前倒し」という考え方です。今回のケースで「前倒し」でできることはなかったのでしょうか?このケースでは、決算月である3月末ではなく、前月末あるいは前々月末などを基準日として滞留債権や滞留在庫を検証するという選択もできたはずなのです。例えば、1カ月前倒しして、2月末を基準にして、5ヶ月以上滞留している債権や在庫を抽出し検証を進めておくのです。この中には3月に回収したり販売したりして、滞留が解消されてしまうものも含まれるでしょうが、基準日を1カ月前倒しすることで、時間の取れるうちに必要な検証を済ませておくことができ、結果として期限に余裕を持って業務を完了することができるという訳です。
決算に関連した前倒しの例として、次のようなものも考えられます。
- ・経理部門が、決算月の前月末を基準日として売掛金の残高確認を実施する
- ・経理部門が、固定資産の増減取引などについては、期中の段階で会計処理を固めておく
- ・経理部門が、損益項目の月次推移の変動原因の調査を、期中のうちにできる月まで進めておく
- ・期末における実地棚卸の直前になって倉庫内の商品の整理整頓を始めるのではなく、日頃から整理整頓しておく
- ・営業管理部門が、決算日を基準に滞留売掛金を調査するのではなく、決算日前に調査を進めておく
- ・経理部門が、従業員に対して行った仮払金を未精算のまま放置せずに、適時に精算させる
3.期限オーバーを防ぐ、スピード重視の仕事術
ポイントは次のとおりです。
②できるうちにやっておく(=前倒し)






















