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人事/労務働き方改革 2024/03/12

退職金制度設計で企業の魅力アップ!企業にも社員にもメリットのある設計をするには?

企業の魅力を高める退職金制度には、様々な種類があるのをご存知ですか?
今回は退職金制度の概要や税務上の取り扱いについて解説します!

退職金制度とは

退職金制度とは、従業員や役員が退職する際に企業が一定の金額を支給する制度です。
退職金制度の設置は義務ではありませんが、企業・受給者の双方にメリットがあるため、多くの企業が取り入れています。


退職金制度のメリット
退職金制度のメリットは主に以下の通りです。

企業の魅力を高め、優秀な人材の確保につなげられる
新卒・中途問わず、将来の生活保障に役立つ退職金制度があるかどうかは就職時の企業選びにあたって重要なポイントです。
退職金は企業が従業員のために蓄えておくものなので、退職金制度の有無は、その企業に十分な資金力があるかどうか、経営が安定しているかどうかを判断する基準の1つにもなります。
退職金制度を設置し企業としての魅力を高めることで、優秀な人材を確保できる可能性が高まるでしょう。

従業員の勤続意欲を向上できる
退職金は勤続年数や企業への貢献度合いなどに応じて給付されるため、退職金制度は従業員の勤続意欲を向上できるものとも考えられます。
優秀な人材が長期間勤続することで経営が安定するという点からも大きなメリットといえるでしょう。

節税効果につながる場合もある
企業が退職金の掛金を負担する場合、全額が損金扱いとなります。
そのため、退職金制度を定めることは企業にとっては節税効果があるともいえます。
また、給与として従業員に金銭を支払う場合は社会保険料などの法定福利費が発生しますが、退職金には発生しません。
退職金を受け取る従業員・役員の所得税についても、退職所得は給与や役員報酬などとは区分して計算され、勤続年数に応じた退職所得控除額を適用できるというメリットがあります。

退職金制度の種類

退職金制度には、主に以下のような種類があります。


退職一時金制度
退職一時金制度は、企業が社内で準備した金額を退職金の原資として支給する制度です。
従業員の勤続年数や役職などに応じた支給テーブルを退職規定として作成し、従業員の退職時にその状況に見合った金額を一時金として支給します。
ほかの退職金制度では企業外の機関も利用して退職金を準備しますが、退職一時金制度では企業内部だけで完結させるのが特徴です。
運用は簡単ですが、退職金規定や資金を自社で準備する必要があるため、制度を理解した経理・労務担当者の存在が必要不可欠となります。


退職金共済制度
退職金共済制度は、自社内で退職金を準備するのが難しい企業のために準備されている制度です。
企業は退職金共済を運営する外部の機関と退職金共済契約を締結して毎月掛金を納め、従業員・役員が退職した際には、そこから退職金を支払います。
代表的な機関として個人事業主向けの小規模企業共済、中小企業向けの中小企業退職金共済、特定退職金共済制度などがあります。
支払った掛金は、個人事業主の場合は全額が所得控除の対象となり、法人の場合は全額を損金算入することができます。


企業年金制度(DBやDC)
企業年金制度とは、退職金を一時金ではなく年金として、退職後に毎年一定額を支給するものです。 企業年金制度は年⾦基⾦への⽀払額の計算⽅法により、確定給付型年⾦(Defined Benefit Plan、以下DB)、確定拠出型年⾦(Defined Contribution Plan,以下DC)などに分けられています。

確定給付型年⾦(DB)
DBは事前に企業と受給者が給付内容や将来の受給額を決めておく制度です。
掛金は原則として企業負担となりますが、全額を損金算入することができます。
また、掛金の運用は信託銀行や保険会社などの金融機関によって行われる場合が多く、企業にとっても受給者にとっても資金管理の負担は生じません。

確定拠出型年金制度(DC)
DCは加入者に運用が任されていることから、投資の運用成果によって将来の給付額が変動する制度です。
企業が負担した掛金は全額損金算入可能です。
加入者についても一定の範囲内で事業主の掛金に上乗せ拠出ができるマッチング拠出制度が認められており、利用する場合は掛金全額が所得控除の対象となります。
ただし、DCは途中解約できず、給付開始の年齢も原則60歳以上と、ほかの制度よりも条件が厳しくなっているので注意が必要です。

中小企業主掛金納付制度(iDeCo+)
iDeCo+は、確定拠出年金制度の一種で、個人型確定拠出年金であるiDeCoに加入している従業員のみ利用できる制度です。
対象者が加入するiDeCoに企業が掛金を上乗せして拠出するしくみで、企業は金融機関と個別に契約を締結する必要がありません。
企業が上乗せして支給した分は全額を損金算入でき、受給者も掛金の全額を損金算入できます。
ただし、iDeCoに加入していない従業員は利用できません。

退職金を支払った場合の税務上の取り扱い

ここからは企業側と受給者側に分けて退職金の具体的な税務上の取り扱いを確認していきます。


企業側の源泉徴収
退職金を支払う際は、所得税と復興特別所得税を源泉徴収し、原則として翌月の10日までに納めなければなりません。
退職金に対する源泉徴収税額の計算の仕方は、退職者が「退職所得の受給に関する申告書」を提出しているかどうかで異なります。

「退職所得の受給に関する申告書」が提出されている場合
源泉徴収する際の具体的な計算式は、以下の通りです。

一般退職手当等(以下に該当しないもの)
(退職手当の収入金額 - 退職所得控除額)× 1/2

特定役員退職手当等(役員で勤続年数5年以下の人が支払いを受けるもの)
特定役員退職手当等の収入金額-退職所得控除額

短期退職手当等(短期退職手当等の収入金額から退職所得控除額を差し引いた額が300万円以下の場合)
(短期退職手当等の収入金額 - 退職所得控除額)× 1/2

短期退職手当等(短期退職手当等の収入金額から退職所得控除額を差し引いた額が300万円超の場合)
150万円 +{短期退職手当等の収入金額 -(300万円 + 退職所得控除額)}

※退職所得控除額は従業員の勤続年数に応じて別途計算を行います。最低でも80万円以上の控除があります。
※短期退職手当等とは、短期勤続年数(役員等以外の勤続年数が5年以下であるもの)に対応する退職手当等として支払いを受けるもので、特定役員退職手当等に該当しないものをいいます。


特定役員退職手当等または短期退職手当等に該当しない⼀般の退職所得の源泉徴収税額は、原則として収⼊⾦額から退職所得控除額を差し引いて2分の1を掛けたものとなります。
上記の算式は若干複雑ではありますが、これらにより計算された金額は、基本的に受給者の退職金として計算する金額と一致することになります。

※関連記事:退職金は他の所得税より優遇されているって本当?気になる計算方法を解説!

「退職所得の受給に関する申告書」が提出されていない場合
以下の算式で計算した金額を源泉徴収します。

(退職手当等の支給額)× 20.42%

源泉徴収税額の計算はシンプルにはなりますが、退職所得控除額が反映されていないため、基本的に本来源泉徴収すべき金額よりも多くなります。

※参考資料:国税庁「退職手当等に対する源泉徴収


受給側の確定申告
支給を受ける従業員・役員側の手続きについても、「退職所得の受給に関する申告書」を提出しているかどうかで異なります。

「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合
退職金の支払者が所得税額及び復興特別所得税額を計算し源泉徴収を行うため、原則として確定申告は必要ありません。
ただし、事業所得や不動産所得があったり、住宅ローン控除・医療費控除などの適用を受けたりと、確定申告を行う場合には確定申告書に退職所得の金額を記載する必要があります。

「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合
支払金額の20.42%が源泉徴収されていますが、この金額は退職所得控除額が反映されていないため、基本的には本来負担すべき税額よりも多くの税額を支払っていることになります。
そのため、確定申告をして所得税額及び復興特別所得税額の精算を行います。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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退職金制度にも様々な種類があることについて解説しました。
既に導入済の企業は自社の制度と比較し、まだ導入していない企業は今後の設置に向けて、ぜひ数ある退職金制度の中から自社に合うものを検討してみてください。
適切に退職金制度を設計することで企業の魅力向上にもつながることでしょう。

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