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経営事業計画/経営計画 2024/03/18

SX銘柄とは?これからの経営に知っておくべきサステナビリティトランスフォーメーション

企業のコンプライアンスや社会的課題解決への取り組みが重要視される中、DXやGXと併せて注目されているのがSXです。
今回はSXの概要やDXやGXとの関係について解説します!

SXの概要と注目された経緯

SX(サステナビリティ トランスフォーメーション)とは、持続可能性(Sustainability:サステナビリティ)のある社会を実現すると同時に、企業が新たな収益を獲得できる経営に変革することを指します。
社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを同じものととらえて同期化し、より長期的な時間軸の中で社会的課題を考え、経営に取り込んでいく考え方です。
例えば、社会のサステナビリティ課題に由来するリスクや事業機会を踏まえて事業を行ったり、投資家との対話を行ったりすることを指します。


SXが注目された経緯
SXが注目されたのは、地球温暖化などの環境問題や社会的課題が深刻化したことに起因しています。
このようなサステナビリティの課題は急速に変動するため、事業においても、これまでの企業経営では当然だったことが急に認められなくなることがあります。
そのため、企業はこうした社会状況の急速な変動に対応した経営方針に転換していく必要に迫られています。
また、欧米諸国と比較して近年の日本企業の成長力は伸び悩んでいるとされており、日本企業の稼ぐ力や長期的な企業価値の向上を実現するには、新たに経営の軸となるような策が必要と考えられています。


投資の世界で注目されるSX
SXは投資の世界でも注目されています。
環境問題などに関心が高い欧米諸国では、新型コロナウイルスの感染拡大以降、ESG(環境・社会・ガバナンス)の重要性に対する認識がさらに高まりました。
欧米の投資家や消費者は、ESG指標で企業の社会的責任を評価し、経営の透明性と責任性を求めています。
日本でも、SX実現に向けた対応が優れている上場企業をSX銘柄として公表する制度が、2023年に経済産業省と東京証券取引所によって創設されました。
SX銘柄の公表を機に、日本企業の経営者の間でもSXの重要性における認識は高まっており、今後、SXを重視しているかどうかは、国内外問わず投資における1つの評価軸になると考えられています。

※参考資料:経済産業省「「SX銘柄」を創設します

SX導入の重要性

企業が長期的な企業価値の向上を図るために、SXを行うことは非常に重要です。
投資家や消費者は企業に対してコンプライアンスをはじめとした社会的責任を強く求めているため、企業はSXを推進することで、信頼を高め、ブランド力を強化していくことができるでしょう。

例えば、衣料メーカーではサステナブル素材を使用し環境への影響を最小限に抑える取り組みを行う企業が増えています。
これは、環境や社会問題への意識の高まりとともに素材に注目して商品を選ぶ消費者が増えてきていることにも起因しています。
自社製品を選んでもらうためには、SXを取り入れた商品の開発・製造を行えるかどうかも基準の1つとなってきているのです。

また、企業が社会問題を解決しようとする中で新たなビジネスが生まれ、収益の向上につながる可能性もあります。
例えば、自動車の燃料についてはこれまでガソリンが主流でしたが、化石燃料の使用を抑制する観点から、電気などを動力とした新たな自動車市場が誕生しています。
日本政府は、2035年までに新車販売のすべてをEVやハイブリッド車を含めた電動車にする目標を掲げており、この潮流は今後も続いていくといわれています。

以上から、日本企業が今後長期的な成長を続けていくための経営要素として、SXは欠かせないものであると考えられます。


経営者としてSXについて取り組むべきこと
それでは経営者としてSXを実行するにはどのように取り組む必要があるのでしょうか。
それを考えるうえで参考になるのが、経済産業省が公表している「伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)」です。
この報告書では、SXの実践こそがこれからの日本企業の「稼ぎ方」の本流となっていくと記されており、大企業や中小企業・スタートアップ企業など多様なプレイヤーを含めた日本全体でSXを推し進めることが必要とされています。

また、SXの具体的な取り組みに関しては、以下の3点が重要になると報告されています。

  • 社会のサステナビリティを踏まえた目指す姿の明確化
  • 目指す姿に基づく長期価値創造を実現するための戦略の構築
  • 長期価値創造を実効的に推進するためのKPI・ガバナンスと、実質的な対話を通じた更なる磨き上げ
※参考資料:経済産業省「「伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)」・「価値協創ガイダンス2.0」を取りまとめました

経営者の観点で考えると、社会問題に対応できる長期的・持続的な価値提供を目指すうえで、まずは自社の事業活動を通じて解決すべき重要課題がなにかを特定することが必要です。
業界ごとに問題視されている社会的課題は異なるため、自社が考えるべき社会的課題はなんなのかを検討してみましょう。

その後、その課題の解決と自社が成長するために必要なものを考えて戦略を組み立てます。
戦略は短・中・長期で、具体的な数値に基づくものが望ましいとされています。
戦略の実行時はKPI(Key Performance Indicator:最終到達点までの重要な目標指標)を定め、滞りなく実行されるよう自社内のガバナンス体制を整備し、必要に応じて戦略の見直しを図りましょう。
また、適宜顧客や投資家などとの対話を行い、自社が目指している価値創造のストーリーが社会の求めるものに近づくよう精度を高めていくことも忘れないようにしてください。

SXの実現に向けた経営に当たってのより具体的なフレームワークについては、伊藤レポート3.0と同時に公開された「価値協創ガイダンス2.0」にも記載されていますので、併せて参照ください。

※参考資料:経済産業省「企業と投資家の対話のための「価値協創ガイダンス2.0」

SXとGX、DXの関係性

最後に、SXを解説するうえで欠かせない、GX、DXについても紹介します。


SXとGX
SXと似た言葉にGX(グリーン トランスフォーメーション)があります。
GXとは、化石燃料などをできるだけ使わずクリーンなエネルギーを活用していくための変革やその実現に向けた活動のことをいいます。
地球温暖化をはじめとした環境問題を引き起こす一因とされている化石燃料に変えて自然エネルギーや再生可能エネルギーの活用を進める取り組みと企業の経済成長を両立させる社会をつくることを目的としています。
SXは社会全体の変革に焦点を当てていますが、GXはエネルギー利用をはじめとした環境問題の変革に焦点を当てたものであり、SXの一部分としてGXがあると考えるとわかりやすいでしょう。
SX、GXともに、持続可能な社会を目指していくというゴールは共通であり、非常に近い概念となります。


SXとDX
DX(デジタル トランスフォーメーション)とは、企業がデータやデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズに対応できるようビジネス全体を変革することで、持続的な成長を目指す取り組みのことを指します。
DXは、競合他社や外国企業との競争に打ち勝つために、デジタル化を超えた成長の手段として企業が推進していくものです。
DXでもたらされたエネルギー消費の最適化や業務の自動化は、効率的なエネルギー使用を可能にし、SX、GXの推進につながると考えられます。
つまり、DXを推進することでSX、GXも同時に推進することができ、企業価値を持続的に高めることにつながるとされているのです。

※関連記事:2025年の崖とは?企業がDXを実現できない理由とその危険性


今後の日本企業の経営に求められること
SX、GX、DXは相互に補完しあい、今後の日本企業が持続可能な経営を進めるうえで重要な役割を果たすと考えられています。
SX、GX、DXを組み合わせることで、より持続可能で競争力のあるビジネスモデルを構築することが可能です。
これらを推進するにあたって、企業は変化に対応していく力を身に着けることが重要です。
この力は経営用語で、レジリエンスやダイナミック・ケイパビリティと呼ばれています。
消費者の期待や社会的課題は日々変化していきますが、今後の日本企業は、自社状況を客観的に分析したうえで事業内容を修正・補足し、必要に応じて組織全体を刷新していくことが求められていくでしょう。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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SXという言葉になじみがない方も多いかと思いますが、日常生活の中で環境問題などの社会的課題について考える機会はあるのではないでしょうか。
個人と同様に、企業経営にあたってもSXを推進することが求められている時代の中で、企業はどのように経営を行っていくか考えていく必要があるといえるでしょう。

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