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経営事業計画/経営計画 2023/06/13

DCF法による企業価値評価の活用法とは(財務諸表分析からわかる企業価値評価 第3回)

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資金調達やM&Aなどを検討するうえで、企業価値評価を正確に行うスキルは経営企画部や経営者にとって大変重要なものです。
中でもDCF法は、最も広く利用されている企業価値評価の手法の一つです。
今回の記事では、DCF法の基本的な概念から具体的な算定方法、活用法まで詳しく解説します。

※関連記事:基礎から知っておきたい財務諸表分析とは?(財務諸表分析からわかる企業価値評価 第1回)

企業価値の算定とDCF法

企業価値とは、現在の企業の価値を数値で表したもので、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書などに記載された会計情報や、株価や与信情報などの市場情報から算定されます。
企業価値は企業の投資判断やM&Aなどの場面で活用されることが多く、評価額によって購入・売却額などが決定されるため、算定はできる限り正確に行う必要があります。


DCF法による企業価値評価について
DCFとは、Discounted Cash Flowの略で、企業が生み出す将来のキャッシュフローの合計を予測して現在価値に割引計算することで、企業価値を算定する方法です。
企業価値の算定方法には、DCF法の他に、NPV法、時価純資産法などがあります。
DCF法は、企業の財務状況や将来の成長性などを総合的に考慮して評価を行うため、企業価値評価の中でも最も理論的な方法とされており、説得力のある算定をすることができます。

DCF法の算定方法・利用場面

DCF法では、企業が将来に獲得するであろうキャッシュフローや割引率などを予測して企業価値評価を行います。
必要な情報は以下の通りです。

フリーキャッシュフロー(FCF)
フリーキャッシュフローは、企業の営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローの年間の合計額であり、その1年間で企業の手元に残るキャッシュがいくらになるかを示すものです。
例えば、1年後に100万円、2年後に200万円、3年後に500万円など、予測期間内でその企業が年間で生み出すキャッシュフローがいくらになるかを予測していきます。
※フリーキャッシュフローの厳密な算式は「税引後営業利益+減価償却費-設備投資等±運転資本等の増減」となりますが、初めてDCF法を理解するにあたっては、「企業が1年間で獲得するキャッシュフローの合計」と考えて問題ありません。

割引率と現在価値
企業価値評価を行う際には、現在と未来では金額の価値が異なるという概念が重要となります。
例えば、今、100万円の現金を利率が3%の銀行に2年間預けたとすると、2年後の預金額は利率分増えることになります。
この考え方を使うと、逆に将来のキャッシュフローから価値を割り引くことで現在価値を導き出すことができます。
その際に使用されるのが割引率です。
※割引率は企業のリスクと貨幣の時間価値を反映した利率となりますが、DCF法を利用する際に多く用いられるのは、WACC(Weighted Average Cost of Capital:加重平均資本コスト)と呼ばれる、借入にかかるコストと株主調達にかかるコストを加重平均したものです。

永久成長率と残存価値
DCF法では企業の将来の価値を使って企業価値を導き出していますが、正確に予測できる期間は通常3~5年に限られます。
しかし、予測期間以降も事業活動は続いているため、その分の企業価値も見積もる必要があります。
これを残存価値といいます。
残存価値は、予測期間終了後に企業のフリーキャッシュフローがどれくらい成長していくのかを表す永久成長率を使い、以下の算式で求めることができます。

残存価値 = 予測期間終了後のフリーキャッシュフロー(1 + 永久成長率)÷(割引率 - 永久成長率)

例えば、予測期間終了後のフリーキャッシュフローが1,000万円、割引率が3%、永久成長率が0.1%とすると、残存価値は以下のようになります。

残存価値 = 1,000 ×(1 + 0.1%)÷(3% – 0.1%)= 34,517
※単位(万円)

ただし、永久成長率は正確に仮定するのが困難であることも多く、通常1%以内で設定されることや、ゼロとして算定を行うこともあります。


DCF法による企業価値の算定手順
DCF法による企業価値の算定は以下の手順で行います。

  • Step1
    予測期間内での企業のフリーキャッシュフローを算定する。
  • Step2
    予測期間後の企業の残存価値を算定する。
  • Step3
    フリーキャッシュフローと残存価値について割引率を使って現在価値に換算する。
  • Step4
    Step3で求めた現在価値をすべて合算し、DCF法による企業価値を算出する。
算定は一般的に以下の算式を使って行います。

予測期間内の現在価値合計
{CF1 ÷(1 + r)1}+{CF2 ÷(1 + r)2}+ … + {CFn ÷(1 + r)n}
※n:予測期間、r:割引率、CFn:n年目のフリーキャッシュフロー

残存価値の現在価値
残存価値 ÷(1 + r)n

DCF法による企業価値
予測期間内の現在価値合計 +残存価値の現在価値



【具体例】DCF法による企業価値の算定
DCF法による企業価値評価の算定を行ってみましょう。

例:ある企業Aについて、毎年のフリーキャッシュフローが同額の1,000万円、予測期間を2年、割引率が3%、永久成長率が0.1%、予測期間終了後の残存価値は3億4,517万円とします。
この場合、DCF法による企業価値の算定式は以下のようになります。

予測期間内(2年間)の現在価値合計
{1,000 ÷(1 + 3%)1}+{1,000 ÷(1 + 3%)2}= 1,914

残存価値の現在価値
34,517 ÷(1 + 3%)2 = 32,535

DCF法による企業価値
1,914 + 32,535 = 34,449
※単位(万円)

以上から、例えばこの企業に今年3億円で投資した場合には、それを超えるリターンを得ることができる可能性があると判断することができます。

DCF法の利用場面・ほかの方法との比較

DCF法による企業価値の利用場面は大きく2つあります。

  • 企業が新たな事業を始める際の投資判断
  • M&A(企業の買収・合併)
DCF法は、将来のキャッシュフロー、つまり将来いくらお金が入ってくるのかという情報を反映しているため、その企業の成長性を加味したうえでの企業価値を算定することができます。
新たな投資案件を始める際や、M&Aで他社を評価する際には、「いま自分が投資した資金が将来いくらのキャッシュとなって回収されるのか」が重要になってくるため、積極的に利用されています。


DCF法以外の方法と比較した場合
DCF法以外にも、企業価値の算定にはNPV法や時価純資産法があります。
DCF法とNPV法、時価純資産法のメリットとデメリットを簡単にまとめると、以下の通りです。
メリット デメリット
DCF法・NPV法
  • 企業の将来性を企業価値評価に反映できる
  • 将来キャッシュフローや割引率の予測が難しい場合がある
時価純資産法
  • 将来の見積りが不要で簡易的に算出できる
  • 企業の実態を過小評価する可能性がある
  • 企業の将来性が企業価値に反映されない
NPV(Net Present Value:正味現在価値)法
NPV法は、その企業から将来得られるすべてのキャッシュフローの現在価値と、すべての投資金額の現在価値の差で企業価値を算出する方法です。
NPV法による企業価値は、DCF法で求めた企業価値に、その企業への投資額を考慮することで求めることができます。

NPV法による企業価値 = (DCF法による企業価値) - (投資額)

NPV法によって計算された金額が0以上であればその企業に投資すべき、計算結果が0を下回る場合は、一度投資を見直すべきというように、NPV法は企業への投資判断の手法として活用されています。

時価純資産法
時価純資産法は、企業が持つ資産と負債を現在価値に換算し、その差額を企業価値として算出する方法です。
この方法は、企業の将来のキャッシュフローを考慮せず、資産と負債のみで企業価値を算定するため、小規模事業者など、将来のキャッシュフローの見通しが不明確な場合の企業価値評価に使われています。
ただし、企業の将来性を見ることはできません。


DCF法、NPV法は、将来のキャッシュフローを見込んだ企業価値算定ができる一方で、予測する事柄が多いため見積りに誤差が生じるというデメリットもあります。
また、割引率をどれくらい正確に設定できるかという点も大きく影響します。
そのため、M&AなどでDCF法を使った企業価値算定を行う際には、分析の精度を高めるために外部のアドバイザーなどを活用することもあります。
これらの特長を理解し、その企業の実態にあった企業価値評価の手法を選ぶことが望ましいでしょう。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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DCF法は企業の将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて算定する手法であり、企業の成長性を加味したうえでの企業価値を算定することができます。
今回の記事ではDCF法の算定方法や利用場面について紹介しましたが、是非、実務でも積極的に活用していきましょう。

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