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経理/財務会計処理 2023/05/09

連結会計はなぜ必要?企業グループ間で役立つ連結修正仕訳について

連結会計では、親会社と子会社を一つの会社と見なして財務諸表を作成することで、グループ全体の財務状況を正確に把握することができます。
今回は、連結会計の流れや連結修正仕訳について解説します。

連結会計とは

企業が成長すると、子会社を作ったり、他社を買収して子会社にしたりすることがあります。
このような場合、自社だけでなくグループ全体の財務状況を把握しなければなりません。
そこで必要となるのが「連結会計」です。
連結会計とは、グループにおける複数企業の財務状況について、親会社を起点に一つにまとめるための会計処理です。


連結会計が必要となる企業
連結会計の対象企業は、親子関係にある企業グループ全体です。
親会社とは子会社を支配している企業のことを指し、子会社とは親会社から支配を受けている企業のことを指します。
「支配」とは、一般的に親会社が子会社の50%超の発行済株式を保有している状態をいいます。
50%超の株式を保有すると、株主総会の場で他の株主からの反対があっても自社の意見を通すことができるため、その企業を支配していると考えられるのです。
つまり、基本的に連結会計の対象となるのは50%超の株式の保有関係がある親子会社ということになります。

※ただし、厳密には株式数のみを形式的に判断するのではなく、親会社が子会社を実質的に支配しているかどうかという観点から慎重に検討する必要があります。


連結会計が求められる理由
連結会計が必要とされる主な理由は以下の通りです。

  • 子会社も含めたグループ全体の財務情報を利害関係者に報告するため
  • 子会社も含めたグループ全体の財政状態・経営成績を社内で管理するため
親会社の個別財務諸表における子会社の価値は、支配を獲得したときの帳簿価額から変動しません。
しかし当然、支配関係成立後も子会社の事業は継続しており、その価値は日々変動しています。
親会社の株主にとっても子会社の経営状況は重要なものですが、個別財務諸表には取得時点での子会社株式の金額が計上されているだけなので、その後の状況は把握できないのです。
そのため、親会社は連結財務諸表を作成して、自社だけでなく子会社も含めた財政状態や経営成績を株主に報告する必要があります。
また、支配関係が成立すると、財務状況を改善するために同じグループ内の企業同士で取引を行うことがあります。
例えば、親会社が自社の赤字を切り抜けるために子会社に対して自社の資産を本来よりも高く売った場合、個別財務諸表のみではグループ全体としての財務状況を読み取ることができません。
このような場合に、連結会計にて連結財務諸表を作成することで、グループ全体の財務状態がわかるようになるのです。

連結財務諸表の種類と連結会計の流れ

連結財務諸表とは、主に以下のものをいいます。

  • 連結損益計算書
  • 連結貸借対照表
  • 連結株主資本等計算書
  • 連結キャッシュフロー計算書
※関連記事:企業グループは避けて通れない!連結財務諸表の作成手順と種類とは


連結会計の大まかな流れ
連結会計は、仕訳帳や総勘定元帳を新たに作成するわけではなく、親会社と子会社がそれぞれで作成した財務諸表に対して行うものです。
連結財務諸表は、連結会計特有の処理である連結修正仕訳を行ったうえで合算して作成します。


連結会計の具体的な流れ
連結会計は、以下のようなプロセスで進められます。

1. 会社単体での決算を確定し子会社の財務情報を入手する
まず各社の期末時点での財政状態・経営成績の数値を確定させます。
そのうえで、親会社は子会社のデータを1つにまとめるためのフォーマットとして連結パッケージを作成します。
連結パッケージは、会社ごとに異なる様式をグループ共通のものとしてまとめるために必要なもので、子会社は連結パッケージに則って自社の情報を親会社に提出します。

2. 連結修正仕訳を行う
会社単体での財務情報の確定・収集後、親会社の経理担当者が連結修正仕訳を行い、連結での数値を確定します。
なお、連結修正仕訳を行うタイミングでは、既に各社の個別会計は締め切られているため、連結修正仕訳はあくまでも連結財務諸表上の金額の調整にすぎず個別会計上の帳簿には一切影響を与えないのでご注意ください。

3. 連結財務諸表の作成
連結修正仕訳により各社の財務諸表を確定した後は、各社の金額を合算して、連結貸借対照表、連結損益計算書、連結株主資本等計算書などの連結財務諸表を作成します。

4. 連結財務諸表の公表
作成された連結財務諸表は、上場企業では以下の場面などで利用されます。
書類名 提出期限
決算短信 決算期末後45日以内
有価証券報告書 事業年度終了後3カ月以内
上場会社では、各証券取引所の適時開示ルールに従って、決算短信という各社共通の決算速報を作成して公表する必要があります。
決算短信は、決算期末後45日以内の開示が必要なので、3月決算企業であれば5月15日までの公表となります。
また、有価証券報告書とは企業の事業状況や財務情報などをまとめて開示するもので、金融商品取引法によりすべての上場企業に作成が義務づけられています。
有価証券報告書の提出期限は、事業年度終了後3カ月以内となっており、提出後は国の電子開示システムである「EDINET」を通じて公表されることになります。
3月決算企業であれば、基本的には6月30日が提出期限となります。

※参考資料:金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム「EDINET」

連結修正仕訳の具体的な進め方

連結修正仕訳は、親会社が子会社の支配を獲得したことによる「投資と資本の相殺消去」と、支配獲得後の各種取引に係る「支配獲得日以降の修正仕訳」に大別されます。


投資と資本の相殺消去
投資と資本の相殺消去は、親会社の支配獲得に伴って生じる連結修正仕訳です。
具体例を基に解説します。

例:
P社が100万円の出資により子会社S社を支配した場合の連結修正仕訳

【個別会計】
P社は、S社の株式を購入し、S社はP社から受けた払い込みを資本金等で処理します。

P社の仕訳
借方 金額 貸方 金額
S社株式 100万円 現金預金 100万円
S社の仕訳
借方 金額 貸方 金額
現金預金 100万円 資本金 100万円
【連結会計】
連結財務諸表では、親子間で生じた取引は相殺する必要があります。
したがって、親会社による子会社の出資分を取り消す仕訳が必要になります。これを「投資と資本の相殺消去」といいます。

連結修正仕訳
借方 金額 貸方 金額
現金預金 100万円 資本金 100万円
なお、上記の例では、親会社が100%出資している場合を想定していますが、親会社の出資割合が100%でない場合には、別途非支配株主持分についても調整を行う必要があります。
また、買収などの案件で子会社を取得した場合、子会社の株式をその時点の子会社の資本金等(純資産)の金額よりも高値で購入することがありますが、この時の差額はのれんが計上されます。


支配獲得日以降の修正仕訳
親会社が子会社の支配を獲得した日以降は、主に以下の項目について連結修正仕訳が必要になります。

  • 子会社が計上した当期純損益の修正
  • 子会社が行った配当の修正
  • のれんの償却
  • その他の期中の連結グループ間取引の修正
連結グループ内だけで行われた取引については、消去する必要があります。
具体例を基に解説します。

例:
P社は子会社であるS社に対して商品を販売している。
この時、当期の現金売上高が30,000円であった場合に必要な連結修正仕訳

【連結会計】
個別会計上、P社では売上、S社では仕入取引が生じています。
一方で、連結財務諸表では、親子間で生じた取引は相殺する必要があるため、上記の取引を相殺するための仕訳を行います。

連結修正仕訳
借方 金額 貸方 金額
売上 3万円 仕入れ 3万円
    

連結会計を効率的に進めるためには

連結会計は一社のデータだけでなく複数の企業の会計データを取り扱うものです。
また、限られた期間のうちに、決算短信や有価証券報告書などを外部に公表する必要があります。
これらの作業を手作業で行うには非常に多くの時間と人的コストがかかるため、システム導入が望ましいとされています。
例えばクラウド型のERP(Enterprise Resource Planning)システムを使うことで、個別財務諸表の作成後、連結修正仕訳の入力までスムーズに行うことができます。

ただし、システム導入にはコストもかかるため選定は慎重に行うようにしましょう。
選定の際は導入後のサポート体制やセキュリティ対策など、運用時に課題となることに対応しているかどうかを確認することが重要です。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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連結会計は個別会計と異なるため、まずは流れを押さえるようにしましょう。
連結財務諸表は親子会社間での取引を相殺した上で作成されますが、その実施には多くの時間と労力が必要とされるため、システム導入が望ましいとされています。
経理担当者は、効率的な連結財務諸表作成のために必要な取り組みを検討することが求められます。

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