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業務全般制度改正 2023/01/24

速報!令和5年度税制改正大綱で押さえておきたい法人税・消費税・電子帳簿保存法の改正点

2022年12月16日、令和5年度税制改正大綱が公表されました。
今回は大綱で明らかにされた項目のうち、経理担当者として押さえておきたい法人税・消費税・電子帳簿保存法の改正点を中心に解説します!

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2022年12月に公開された令和5年度税制改正大綱とは

税制改正大綱とは、各省庁から提出された要望をまとめて翌年以降の税金にまつわる制度改正を決定したもので、毎年12月中旬に発表されます。
税制改正大綱の発表後は国会で審議が行われ、4月頃に法案として成立すると、各法律で定められた日から施行されることになります。そのため、適用される時期は制度によって異なります。


令和5年度税制改正大綱の概要
令和5年度税制改正大綱の基本的な考え方は、以下の通りです。

  • 成長と分配の好循環の実現
  • 経済のグローバル化・デジタル化・グリーン化への対応
  • 地域における活力と安全・安心な暮らしの創造
  • 経済社会の構造変化も踏まえた公平で中立的な税制の見直し
  • 円滑・適正な納税のための環境整備

具体的な内容は、上記を軸として以下の税目に関連しています。

  • 個人所得課税(所得税)
  • 資産課税(相続税・贈与税)
  • 法人課税(法人税)
  • 消費課税(消費税)
  • 国際課税(大規模な法人の法人税など)
  • 納税環境整備(電子帳簿保存法関連)
  • 関税
以下では、企業の経理担当者として押さえておくべき太字の項目に絞って解説します。
それぞれ改正点に絡む内容を中心に解説していますので、詳細は税制改正大綱の原文もチェックしてみてください。

※参考資料:自民党「令和5年度税制改正大綱

法人税関係の改正点

まずは法人税についての改正点を解説していきます。


研究開発税制の見直し
研究開発税制とは、企業が研究開発を行っている場合に、その年に支払った試験研究費の額に応じて法人税額から税額控除を受けられる制度です。
この制度は一般向け、中小企業向けなどで税額控除の要件や法人税額に対する控除上限が異なっており、毎年改正がある複雑な税制でもあります。
今回の改正では、試験研究費の税額控除をより受けやすくなるよう、税額控除率の下限を現行の2%から1%に引き下げ、上限を現行の10%から14%にすることとし、控除税額についても試験研究費の増減に応じて変動することになりました。
また、中小企業を対象にした特例についても、同様に税額控除率と控除税額の上限が見直されます。
さらに、特別試験研究の額に係る税額控除制度では、研究開発型スタートアップ企業の定義が見直されたことで対象が拡大し、博士号取得者などの研究者を活用する場合も優遇措置が行われることとなります。


DX(デジタルトランスフォーメーション)投資促進税制の見直しと延長
DX投資促進税制とは、企業がデジタル技術を活用した企業変革を行うためのDX投資を促進する税制で、要件を満たす対象資産を取得することで、企業はその取得価額の30%の特別償却または3~5%の税額控除の適用を受けられます。
また、今回の改正では、デジタル投資に積極的な企業を後押しするために認定要件を見直したうえで、適用期限が2年延長されます。


中小企業者の軽減税率の延長
現状、中小企業者の法人税率は所得が800万円以下の部分について軽減税率が適用されており、通常の19%よりも低い15%とされています。
今回の改正では、軽減税率の適用時期が2年間延長され、2025年3月31日までに開始する事業年度まで適用可能となりました。


中小企業者向けの設備投資促進税制の見直しと延長
中小企業者の設備投資を促進する税制には、中小企業経営強化税制や中小企業投資促進税制があります。
いずれも、青色申告書を提出する中小企業者が機械や備品などの対象設備を取得した場合に、取得価額について一定の特別償却または税額控除を認めることで、早期の費用化を進める制度です。
今回の改正では、適用対象となる資産から、他社に管理を委託しているコインランドリー業または暗号資産マイニング業の事業用資産が除外されました。
なお、これらの中小企業向けの設備投資税制については、適用期限が2年延長されています。


グローバル企業に対する課税の創設と見直し
近年、新聞報道やパナマ文書情報漏えいを発端としたグローバル企業の租税回避行為が明らかになっています。
これらを解決するため、OECDとG20が策定したいわゆる「BEPS合意」に基づき、昨今は欧米諸国で様々な税制改正が行われています。
そして今回、法人税において、海外に子会社を所有して大規模に事業展開している企業を対象に、グローバル・ミニマム課税という新しい課税方法が日本でも適用されることになりました。
グローバル・ミニマム課税とは、負担する税率が15%を下回る場合に上乗せ課税が発生する課税方法です。つまり、最低15%の法人税が必ず課されることになります。
ただし、税率が低い子会社で発生した利益について、日本で課税される外国子会社合算税制の対象となる外国関係会社の租税負担割合(その子会社が負担している税率)が27%以上(現行30%以上)である場合には、この課税方法が適用されないような緩和措置も採られています。

消費税関係の改正点

続いて消費税に関連する改正内容を解説します。


インボイス発行事業者となる小規模事業者の消費税計算の特例の新設
2023年10月から消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)が開始されます。
免税事業者がインボイス発行事業者になるには課税事業者となる必要がありますが、この場合の特例として、2026年までの3年間に限って、実質的な負担額を売上に係る消費税額の20%に軽減できる規定が設けられます。
原則法と今回の軽減規定の場合の税額を簡単に比較すると、以下の通りです。

例:課税売上が1000万円(売上に係る消費税額100万円)、課税仕入500万円(仕入れに係る消費税額50万円)の事業者の消費税額の計算
方法 消費税額
原則法 100万円-50万円=50万円
軽減規定 100万円-(100万円×80%)=20万円
※なお、事前に届出を提出することで原則法以外に、簡易課税制度も選択できますが、大半の業種では今回創設された軽減規定を適用する方が有利になるため、記載を省略しています。また、軽減規定は、インボイス発行事業者として以前から課税事業者を選択していた事業者については適用できないため、注意してください。

※関連記事:インボイス制度とは?スケジュールや懸念点、対策をかんたん解説



中小企業者の少額取引に係るインボイス事務負担の軽減
インボイス制度導入後に仕入税額控除を適用するためには、その金額にかかわらず、原則として相手方から交付されたインボイスの取得と保存が必要となります。
これについて今回の改正では、基準期間の課税売上(2年前の売上)が1億円以下など、一定規模以下の事業者が行う少額(課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満)の取引については、6年間の経過措置として、インボイスの保存がなくても帳簿のみで仕入税額控除が認められることになります。


少額の返還インボイスの交付義務免除
インボイス制度では、インボイス交付後に値引きなどがあった場合、適格返還請求書(返還インボイス)を別途交付する必要があります。
この時、例えば、買い手負担の振込手数料を売り手負担に変更する場合のような少額の取引でも返還インボイスを交付する必要があるため、問題視されていました。
今回の改正では、こうした少額(売上に係る対価の返還などに係る税込価額が1万円未満)の返還インボイスの交付義務は免除されることとなります。


適格請求書発行事業者登録制度についての見直し
適格請求書発行事業者になるためには適格請求書発行事業者登録が必要となります。
この登録申請書の提出期限について、現行は登録事業者となる課税期間の1か月前までとされていますが、15日前までに見直されました。

電子帳簿保存法関係の改正点

電子帳簿保存法などに関連する改正内容を解説します。


優良な電子帳簿の範囲とスキャナ保存制度の要件緩和
過少申告加算税の軽減措置の対象となる優良な電子帳簿については、税法で求められるすべての帳簿についてその要件を満たすことが求められていました。
今回の改正では、要件を満たすべき帳簿の範囲が、仕訳帳、総勘定元帳とその他一定の帳簿に限定されることとなります。
また、スキャナ保存制度についても制度の利用促進を図る観点から見直しが行われ、国税関係書類をスキャナで読み取った際の解像度等の要件や、国税関係書類の記録事項の入力者に関する情報の確認要件などが一部廃止されます。

※関連記事:「優良な電子帳簿」とは?改正電子帳簿保存法で過少申告加算税や青色申告特別控除額が優遇される要件を解説!


電子取引の取引情報に係る電子データでの保存制度の見直し
電子取引の取引情報に係る電子データの保存制度については、令和4年度税制改正で2年間の猶予措置が規定されましたが、この規定は2023年末で廃止となります。
この規定の代わりとして、今回の改正では、保存要件に従った保存が間に合わなかったことに相当の理由があると税務署が認めた事業者については、税務調査で書面の提示やデータのダウンロードなどの要求に応じる場合、保存要件を満たしていない状態であったとしても電子取引を電子データで保存することが認められることとなりました。
また、検索要件が緩和され、「取引年月日」、「取引金額」、「取引先」のみの設定で検索できればよいということになりました。
さらに判定期間における売り上げが5,000万円以下の場合は、税務調査で質問検査権に基づきダウンロードを求められた際に応じることができれば、検索要件そのものが不要となります。

その他の改正点

最後に、その他の改正点と2024年以降の予定を解説します。


エコカー減税の延長
自動車重量税の免税特例措置(エコカー減税)については、現行制度の適用期限が2023年12月末まで延長されます。
また、2024年1月以降は、燃費性能の要件などを改正したうえで、2026年4月30日まで適用が延長されることになります。


中小企業者の先端設備への投資に関する固定資産税の特例
中小企業者が、市町村の認定を受けた「先端設備等導入計画」に基づき、要件を満たす機械装置等を導入して一定の賃上げを労働者に表明した場合、最大5年間、固定資産税が2/3に軽減されます。
賃上げの表明を行わない場合は、最大3年間、固定資産税が1/2に軽減されます。


防衛力強化に係る財源確保に関する新設と見直し
防衛力の強化に必要な財源を確保するために、法人税・所得税・たばこ税が増税されます。
税目 措置
法人税 付加税:(基準法人税額 – 500万円)×4~4.5%が課される。
所得税 付加税:基準所得税額×1%が課される。
復興特別所得税:基準所得税額×1.1%(改正前2.1%)が課される。
※復興特別所得税は課税期間を延長。
たばこ税 1本あたり3円相当を段階的に引き上げ。
※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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今回の改正では、特に法人向けの課税について強化することとなるようです。
また、インボイス制度や電子帳簿保存法関連については実務において問題視されていた項目の見直しが行われました。
本記事で紹介した改正内容は年明け以降の改正法案の成立をもって確定しますので、今後の動向にも注意してくださいね。

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