旅費交通費とは、「旅費」と「交通費」という2つの科目を組み合わせた勘定科目です。
まずはそれぞれの科目の内容を確認してみましょう。
交通費とは
業務のために生じた交通に要する費用のことで、代表例として電車代、タクシー代、駐車場代、社用車のガソリン代、高速道路の有料道路代などが挙げられます。
通常の費用と同様に経費処理をすることが可能です。
ただし、通勤手当については、非課税限度額があります。
非課税限度額とは、一般の通勤者につき通常必要であると認められる範囲の金額のことで、例えば、電車代の最高限度は月額150,000円と決められています。
1カ月の限度額を超えて支給した場合は給与所得として課税されるので注意しましょう。
※関連記事:在宅勤務の通勤手当はどう処理する?交通費や各種手当にかかる税金を整理
旅費とは
業務のために生じた出張(旅行)に要する費用のことで、宿泊代などが当てはまります。
交通費と同様、従業員側は非課税となる範囲が決められていますが、通勤手当のように金額的な基準はありません。
所得税法第9条では、必要な運賃、宿泊料、移転料などの支出に充てるために支給される金品で、通常必要であると認められる範囲とされています。
そのため、その出張で通常必要な経費かどうかを確認できるようにしておく必要があります。
交通費と旅費の違い
多くの企業では、従業員の自宅から勤務先までの費用については交通費(通勤手当)、それ以外の、勤務先から出張先への費用などについては旅費として処理していることが一般的です。
ただし、勘定科目についてはそこまで厳密にこだわる必要はないため、旅費交通費として一つの科目で表示しても実務的には問題はないとされています。
しかし、それぞれの科目を使用することで経営管理の面からコスト分析がしやすくなるというメリットもあるため、状況によって判断しましょう。
税法では、電車の切符のように乗車券が回収されるものについては、利用日や利用区間などの情報を把握できる限り、一般的に領収書がなくとも経費として問題ないとされています。
そのため通勤経路の電車移動の精算については、管理の負担を避けるために、多くの企業が領収書を不要としています。
※参考資料:国税庁「仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存」
ただし旅費については、交通費と比べて支給が認められる内容かどうか判断しにくいため、目的や必要性などを確認するために領収書を必要とするケースがほとんどです。
そのため、ホテル代やタクシー代などの領収書は現地で発行してもらう必要があります。
しかし電車代については、交通費と同様に移動経路から金額を簡単に割り出せるため、領収書の提出を不要とする企業も多くあります。
旅費交通費における領収書の記載内容
一部のホテルでは、発行日と金額のみの記載で、宿泊期間などの詳細が領収書に記載されていないこともあります。
そうなると、領収書入手の目的の一つである旅行における実情の把握はできません。
このような必要事項が明記されていないことによるトラブルを防ぐために、あらかじめ領収書への記載事項に関する社内ルールを作っておき、従業員に周知するようにしましょう。
領収書を不要とする実費精算以外の精算方法
旅費の精算業務を効率化する方法として、旅費規程をあらかじめ作成しておき、出張内容と照らし合わせたうえで規定の金額を支給するという方法もあります。
例えば1泊1万円といったような規定を決めておくのです。
この場合、規程の金額を精算の対象とするため、領収書の提出を不要とする企業もあります。
電車代の領収書のもらい方
電車代については基本的に領収書が不要なケースが多いものの、どうしても必要になる場合もあるでしょう。
しかし基本的には無人の券売機で購入することが多いため、電車代の領収書のもらい方がわからないという人も多いのではないでしょうか。
切符や通勤定期を購入する場合は、駅の窓口や券売機での購入と同時に領収書を入手することができます。
ただし券売機の場合は宛名を記入できないため、あとから駅員のいる窓口に持ち込んで追記依頼する必要があります。
通勤定期の場合は、領収書自体に区間名や利用期間が表示されていないことがありますので、実際の定期券のコピーも用意するとスムーズです。
また、Suicaなどの交通系ICカードを利用する場合は、領収書ではなく利用履歴を入手するようにしましょう。
これは、チャージ機能がついている交通系ICカードの場合、チャージ金額のみを記載している領収書では、本当に電車代として利用されたか判断できないためです。
交通系ICカードの利用履歴は駅の券売機などから入手できるほか、ICカードリーダーがある場合は社内のPCなどからも確認ができます。
ホテルや航空券、新幹線の切符などをインターネットで決済した際、領収書をPDFで受領するケースがあります。
国税庁によれば、領収書を受領したのは個人である従業員ではあるものの、あくまで業務としての立て替え払いのため、これらの取引も企業間の電子取引に該当するとされています。
そのため、PDFでの領収書も企業が受領したものとして、電子帳簿保存法に従った保存が必要になります。
※参考資料:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和4年6月 第10問」
電子帳簿保存法が定める必須要件は以下の通りです。
- 見読可能性(記録事項を明瞭かつ速やかに確認できること)
- 検索機能(取引年月日、取引先、取引金額で検索できること)
また、以下のうち、いずれかひとつの要件を満たす必要があります。
- タイムスタンプの付与
- 訂正・削除に関する事務処理規定の作成
- 真実性の確保(クラウドに保存する場合のみ)
なお、電子取引については2022年の電子帳簿保存法の改正により、電子データ保存が義務化されています。
これにより、PDFで受領した領収書を紙に印刷して保存することはできなくなりますので、ご注意ください。
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どこにどう保管する?保存が義務化される電子取引データ
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