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経理/財務決算 2020/12/15

減価償却を一気にできる!特例の上手な使い方

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固定資産の処理において、減価償却は重要な要素の一つです。通常の減価償却は耐用年数などに従って徐々に償却するものですが、条件によっては一気に償却した方が節税につながるという資産もあります。今回は、減価償却の概要と即時償却のポイントについてまとめます。

減価償却とは

減価償却とは「時間や使用頻度」によって価値が減少する固定資産の処理方法を指します。減価償却の場合、企業は固定資産を取得した年度に取得価額の全額を費用計上するのではなく、利用期間に応じて複数年度に分割して費用計上します。この固定資産のことを減価償却資産といいます。
減価償却は国税庁が定めた品物ごとの耐用年数などのルールに則って行います。計算方法には耐用年数の期間で取得価額を分割する「定額法」や一定の割合で償却する「定率法」などがあり、資産の種類や取得価額によって決められています。

※関連記事:今さら上司に聞けない!減価償却の基礎知識

償却資産をうまく処理するには

償却資産は時間の経過に応じて経費計上します。そのため、取得年度に多くの費用を計上したい場合は「なるべく早く固定資産を購入すること」がポイントになります。固定資産を購入したタイミングが12月と1月では使用する長さが違う分、差が生まれるのです。
例えば定率法の場合は以下のように計算します。

条件:12月決算の企業が60万円の固定資産を購入。
60万円×0.400(償却率)=24万円

1月に固定資産を購入した場合
24万円×(12カ月/12カ月)=24万円

12月に固定資産を購入した場合
24万円×(1カ月/12カ月)=2万円

上記の通り、1月に購入した場合は1年に24万円計上できますが、12月に購入すると2万円程度しか計上できません。そのため、取得年度に多くの費用を計上したい場合は早期に購入する必要があります。
また、中古の固定資産には法定耐用年数を経過し終わったものが存在します。この場合、「その資産の法定耐用年数の20%に相当する年数を耐用年数とする」という決まりがあり、この計算で耐用年数が2年未満になれば取得時に取得金額のすべてを経費として計上することができます。固定資産の取得時にはこういった条件を考慮したうえで計画を立てると節税につなげることができます。

※出典:国税庁「中古資産の耐用年数」

しかし節税に関するやりくりだけでなく、減価償却は計算そのものにも手間がかかります。税制改正があった場合にはその対応も行わなくてはなりません。さらにローンやリースなどにも減価償却しなければならない資産があるため、その数が多くなるほど作業負担が増えていきます。
また、減価償却費は「キャッシュの出ない費用」であり、数年~数十年にわたって残り続けます。そのため「利益が多く出たので経費もたくさん計上したい」、「利益が少ないから費用を抑えたい」といった柔軟な対応はできません。このようなデメリットを考慮した結果、減価償却を一気に行いたい場合は、償却資産の特例を活用することもできます。

償却資産の特例をうまく使うには

減価償却資産には条件によって一気に償却処理ができる特例があります。そのうちの一つが、20万円未満の資産において本来の耐用年数や取得日にかかわらず、取得時から3年で均等に減価償却費を計上できる「一括償却資産」です。もう一つは青色申告を行っている個人事業主、中小企業を対象に30万円未満の減価償却資産を年間300万円まで費用として一括計上できる「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」です。

※関連記事:償却資産税がかからない償却資産の特例とは?

これらの特例を活用することで、以下のようなメリットを生み出すことができます。

1.経理の負担の軽減
中小企業や個人事業主などの小規模事業者の場合、経理や人事労務などの業務を経営者自らが行うことは珍しくありません。「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」を活用すれば経理処理は購入金額を費用計上するだけで完結できるので、減価償却の計算の手間を省くことができます。少人数での事業で経理業務の手間を縮小することは、生産性の高い業務に集中するのに有効です。

2.キャッシュフローを健全化しやすい
即時償却では30万円までの費用を資産ごとに計上できるので、単年度では減価償却よりも大きな節税効果を発揮します。また、節税分のキャッシュを手元に残せるので減価償却と比べるとスピーディーに次の事業への投資をすることができます。
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単年度に注目すると、減価償却は特例を使って一気に行った方がメリットが大きいのですが、それだけ利益が大幅に減少してしまいます。また、融資やM&Aなどを受ける際の評価が悪くなってしまうというリスクもあります。減価償却の計算がネックになっている場合、経理代行などの外部リソースや会計ソフトを利用することで解決できるケースもあります。自社の経理リソースや節税と利益のバランスなどをしっかりと考慮したうえで、どの償却方法を活用するか選択するのがスムーズな償却処理のポイントです。

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