12月末は固定資産税の納付業務を行う企業も多いのではないでしょうか。事業には様々な固定資産が関与していますが、資産によっては節税できるものもあります。今回は固定資産に関する基礎知識をおさらいしながら、中小企業であれば見過ごせない償却資産に関する特例を紹介します。
償却資産と固定資産の考え方
建物や車、システムなど、時が経つにつれて価値が減少する資産を「償却資産」と言います。毎年の価値の減少分を費用として処理することを「減価償却」と言うことから、償却資産は「減価償却資産」と呼ばれることもあります。
一方、いつまでも価値が変わらないため、減価償却できない資産のことを「非減価償却資産」と言います。例えば、原則として土地は消耗することがないので非減価償却資産に該当します。同じ不動産である建物は経年劣化するので減価償却資産に含まれます。
「固定資産」とはこれらの資産のうち取得価額が10万円以上で1年以上保有するものを指します。固定資産には、建物など目に見えて存在する「有形固定資産」と、権利など目には見えない資産である「無形固定資産」があり、どちらも経年で価値が減少する減価償却資産に該当します。
■減価償却資産と非減価償却資産の例
減価償却資産 |
有形固定資産 |
- 建物とその付属設備(スプリンクラー・冷暖房など)
- 車、船舶、航空機、フォークリフト
- パソコン、電子機器
- 工具
- 機械装置
- 上下水道
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無形固定資産 |
- ソフトウェア
- 権利(特許権、漁協権、意匠権、商標権、営業権など)
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非減価償却資産 |
- 土地
- 借地権
- 電話加入権
- 書画骨董
- 建設中の建物(増改築部分の未完成箇所含む)
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固定資産税とは
固定資産税は、毎年1月1日時点で所有している固定資産に対して課税される地方税のことです。納期のタイミングは納付先の市町村にもよりますが、年4回あるのが一般的です。
■地方税法が定める固定資産税の納税義務者
毎年1月1日(賦課期日)現在の土地、家屋又は償却資産の所有者
■税率
1.4/100(1.4%)
このとき、償却資産に課せられる固定資産税のことを「償却資産税」と言います。
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償却資産の特例
償却資産には「少額の減価償却資産」と「一括償却資産」という特例があります。少額の減価償却資産とは取得価額が取得価額が10万円未満、あるいは使用可能期間が1年未満の資産を対象に、取得価額を全額損金算入できる特例があります。また、 一括償却資産は取得価額が20万円未満の資産を対象に、使用した年から3年間、計上した取得価額の3分の1を必要経費に計上できるというものです。少額の減価償却資産、一括償却資産は、双方とも償却資産税がかかりません。
さらに、中小企業の場合には「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」という特例もあります。これは中小企業が取得価額30万円未満の少額減価償却資産を取得した際、300万円内で損金処理できる制度です。ただし償却資産税はかかります。
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少額の減価償却資産 |
一括償却資産 |
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例 |
対象資産 |
取得価額10万円未満 |
取得価額20万円未満 |
取得価額30万円未満 |
対象企業 |
すべて |
すべて |
中小企業 |
損金算入制度 |
取得した事業年度 |
取得した年度から3年間 |
取得した事業年度 |
損金算入可能額 |
取得価額の全額 |
取得価額×12/36 |
取得価額の全額 |
償却資産税 |
非課税 |
非課税 |
課税 |
例えば、ある中小企業が28万円のパソコンを10台購入して即時に280万円を支払った場合、計280万円を資産ではなく経費として計上できます。ただし、税込経理を採用していた場合は取得価額が30万円を超えてしまうので、「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」の対象からは外れてしまいます。このように税抜、税込処理で償却方法が変わってしまうこともあるので注意が必要です。
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固定資産に関する基礎知識を紹介しました。適切な処理には、まず資産の判断を正しく行うことが重要です。中小企業であれば特例を償却資産の節税対策として活用することもできるので、自社の資産が当てはまるかチェックしてみてください。今回の内容に基づいて、会社の各資産における分類を明確にしておくと管理がスムーズになります。