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経理/財務消費税 2019/06/20

迫る消費税法改正に必見の対策!中小企業に特例や補助金はある?

2019年10月の消費税法改正の実施に向け、経理ドリブンでは毎月、各業界の消費増税・軽減税率導入についての経理に関する情報や影響を発信しています。今回対象とするのは「中小企業」。大企業にはない特例や補助金などの制度を中心に、中小企業の経理担当者必見の情報をご紹介していきます。

中小企業に必要な消費増税と軽減税率対策の4つの確認事項

中小企業庁は、中小企業に向けて、消費税法改正に関する経営への影響をなるべく早く適切に確認する必要があるとしています。それぞれの確認事項は下記の通りです。
  • 自社の商品が軽減税率の対象となるか
    「酒類・外食を除く飲食料品」、「週2回以上発行され、定期購読されている新聞」が軽減税率の対象になります。
  • 軽減税率制度実施により変更となる事務
    軽減税率と「区分記載請求書等保存方式」や「適格請求書等保存方式(インボイス方式)」に対応する必要があります。
  • 軽減税率制度実施に向けた国の支援策
    中小企業向けの軽減税率に対するレジなどのハード・ソフト面の改修や導入などの支援が行われています。詳しくは下記をご確認ください。
  • 消費税率引き上げに伴う価格転嫁対策
    発注元の企業による増税分の価格を下請けとなる中小企業に負担させることは、「消費税転嫁対策特別措置法」で規制されています。
    ※関連リンク:内閣府「消費税価格転嫁等対策」

中小企業の消費増税・軽減税率導入の特例

2019年10月からは「区分記載請求書等保存方式」のルールに則って、商品を税率ごとに区分した上で請求書や領収書の発行や保存を行う必要があります。
ただし、会計システムの改修が間に合わない場合や対応できる人員がいない中小企業では、消費税法改正のタイミングで、売上や仕入れを消費税率ごとに区分することが難しいケースもあります。
そこで、課税売上が5,000万円以下の企業を対象に簡易的な計算で税額を表すことができる「税額計算の特例」が設けられました。売上、仕入れそれぞれの特例について簡単にご紹介していきます。

売上税額の特例
売上げの一定の割合について、まとめて軽減税率対象として税額を計算できる特例です。適用期間は最長2019年10月1日から4年間(2023年9月30日まで)で、事業者の状況に応じて3種類の特例を選択することが可能です。
  • 仕入れを管理できる小売・卸売事業者
    売上税額=仕入総額÷軽減税率対象品目の売上に必要な仕入額
  • 「1」の特例を適用する小売・卸売事業者以外の事業者
    売上税額=通常の連続する10営業日の売上総額÷通常連続する10営業日の軽減税率対象品目の売上額
  • 「1」、「2」の計算が困難で、主に軽減税率対象品目を販売する事業者
    売上税額=50%

仕入税額の特例
仕入れの一定の割合をまとめて「軽減税率対象の仕入れ」と見なして税額を計算することができる特例です。実施期間は、2019年10月1日から1年間(2020年9月30日まで)とされています。
  • 売上を管理できる卸売事業者・小売事業者
    仕入税額=売上総額÷軽減税率対象品目の売上額
  • 「1」の特例を適用する事業者以外の事業者
    前々年または前々事業年度の課税売上が5,000万円以下の中小事業者について、事後選択により、簡易課税制度が受けられるので、簡易課税制度の方法で仕入税額を計算する。

※参考資料:税額計算の特例等

中小企業向けの軽減税率補助金とは

中小企業庁では、2016年4月1日から「中小企業・小規模事業者等消費税軽減税率対策補助金」の公募を受け付けています。この制度は、レジや受発注システムなどを使っている中小企業に対して、消費増税法改正による改修の経費の一部を補助するための制度です。その申請方法は対象や支援内容によって大きく3種類に分けられます。それぞれを表にまとめたので確認してみてください。

■A型 複数税率対応レジの導入等支援
補助率3/4 補助上限額20万円
軽減税率などに対応したレジの導入や改修を目的とした補助金です。レジの種類や複数税率の対応範囲によって6種類の申請形式に分かれます。
小分類 概要
A-1型
レジ・導入型
複数税率対応の機能を有する「POS機能のない」レジが対象。その導入費用を補助対象とします。
A-2型
レジ・改修型
「複数税率非対応のレジ」を対応可能なレジに改修する場合の費用を補助します。
A-3型
モバイルPOSレジシステム型
タブレット、PC、スマートフォンを用いて、複数税率対応した継続的なレジ機能サービスを利用し、レシートプリンタなどの付属機器を組み合わせることで、レジとして新たに導入するものを補助対象とします。
A-4型
POSレジシステム型
「POSレジシステム」を複数税率に対応するように改修又は導入する場合の費用を補助対象とします。
A-5型
券売機
「券売機」を区分記載請求書等保存方式に対応するように改修又は導入する場合の費用が補助対象です。
A-6型
商品マスタの設定
消費税軽減税率制度の実施前に、複数税率対応レジなどの「商品マスタ設定」をする場合の費用を補助対象とします。

リースによる導入(共同申請)も補助対象になります。その場合は、あらかじめ指定されているリース業者の製品、サービスの利用が必要です。

※参考資料:軽減税率対策補助金 指定リース事業者一覧

■B型 受発注システムの改修等支援
補助率 3/4
補助上限額 発注システム 1,000万円 受注システム 150万円
原則的に企業間のオンライン受発注システムである「EDI/EOS」などの電子発注サービスを既に利用している事業者が対象で、「区分記載請求書等保存方式」を含む消費増税・軽減税率に対応するために、請求書管理・受発注管理システムを開発・改修・導入する場合の補助になります。 その際、改修などを「指定業者に依頼する」か、もしくは「事業者で行う」かによって提出する申請書はそれぞれ異なります。
類型 概要
B-1型
受発注システム・指定事業者改修型
システムベンダーなどに発注して、電子的な受発注システムを改修・入替する場合の費用を補助対象とします。
B-2型
受発注システム・自己導入型
中小企業・小規模事業者などが自らパッケージ製品・サービスを購入し導入して受発注システムを改修・入替する場合の費用を補助対象とします。

■C型 書類作成システムなどの改修・導入支援
補助率3/4  補助上限額150万円
区分記載請求書等保存方式に対応した請求書の作成に関わるシステムの改修・導入を行う場合に使える補助金です。「指定事業者にシステムの改修などを依頼する」、「事業者自身でパッケージ製品を購入し導入する」、「請求書を発行するための専用事務機器を改修・導入する」で3種類の申請方式に分かれます。
類型 概要
C-1型
請求書管理システム(指定事業者改修・導入型)
システムベンダーなどに発注して、電子的な受発注システムを改修・入替する場合の費用を補助対象とします。
C-2型
請求書管理システム(ソフトウェア自己導入型)
中小企業・小規模事業者などが自らパッケージ製品およびサービスを購入し導入して「請求書管理システム」を改修・入替する場合の費用を補助対象とします。
C-3型
請求書管理システム(事務機器改修・導入型)
ハードウェアと一体化した請求書管理システム・事務機器を改修・導入する場合の費用を補助対象とします。

※参考資料:軽減税率対策補助金
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どの企業にも言えることですが、消費増税・軽減税率導入への対応は大きな負担になり得ます。できるだけスムーズに対応するには、事前に情報を入手し、支援制度などを正しく活用して環境を整えておくことが重要です。まだ対策が打てていない会社の経理担当者は、会社の経営と自身の業務を円滑に進めるために、今回紹介した支援制度の活用を提案してみてはいかがでしょうか。利用できるものを確実に利用していくことも、できる経理の仕事のひとつです。

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