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経営確定申告 2021/12/14

医療費控除、その支払いは控除対象?確定申告に向けて申請方法や計算例をチェック

医療費控除とは所得控除の1つであり、確定申告をすることによって所得税や住民税を減額することができるものです。
今回は、医療費控除の制度概要を解説するとともに、具体的にどのような費用が医療費控除の対象になるのかについて、ケーススタディを交えて解説します。

医療費控除とは

■通常の医療費控除について
先述の通り、医療費控除とは所得控除の一種です。
対象は基本的に、年間(該当する年の1月1日から12月31日までの間)の医療費が10万円を超えている人となります。
また、この医療費には、通院などに必要な交通費や、扶養している配偶者や子どものための支払いを含むことも認められています。

医療費控除額は、「支払った医療費から保険金などを引いた金額」から、「10万円」もしくは「総所得金額の5%」のいずれか少ない方を差し引いて算出します。
そのため、その年の総所得金額が200万円以上であれば10万円、200万円未満であれば、総所得金額の5%の金額が差し引かれることとなります。

総所得金額が200万円未満の場合の計算方法
医療費控除額=(支払った医療費の額-保険金など)-総所得金額の合計額の5%
総所得金額が200万円未満だった場合の医療費控除の計算例
前提条件:今年の総所得金額 100万円、医療費 12万円、保険金なし
医療費から差し引かれる額:
100万円×5%=5万円

医療費控除額:
(12万円-0)-5万円=7万円

■医療費控除は特例(セルフメディケーション税制)も選択可能!
通常の医療費控除は年間10万円を超える医療費が対象となるため、医療費があまりかからない方には適用されにくい制度です。そこで特例として、2017年にセルフメディケーション税制が創設されました。
この制度は、健康診断やインフルエンザの予防注射を受けているなど、健康の保持増進や疾病の予防を行っている人を対象に、セルフメディケーション税制対象医薬品の年間購入額が1.2万円を超えるという条件で、医療費控除の適用ができるというものです。対象医薬品は、薬局やドラッグストアで購入できるOTC医薬品(市販薬)で、そのパッケージには特例対象であることを示すマークが記載されています。また、購入時に発行されるレシートにも★や◆などの印がついている場合があります。

ただし、セルフメディケーション税制と通常の医療費控除は選択適用となっているため、セルフメディケーション税制を適用する場合には、通常の医療費控除の適用はできません。
選択に迷ったときは以下のように算出して、どちらが有利になるかを確認します。

通常の医療費控除とセルフメディケーション税制の選択適用例
前提条件:今年の総所得金額 400万円、医療費 11万円、保険金なし、セルフメディケーション税制対象医薬品の年間購入額 5万円、健康診断受診済み
通常の医療費控除
医療費から差し引かれる額:
総所得金額が200万円以上なので10万円

医療費控除額:
(11万円-0)-10万円=1万円
セルフメディケーション税制
医療費控除額:
5万円-1.2万円=3.8万円
→セルフメディケーション税制を選択するのが有利
かかった医療費が年間10万円未満であったとしても、セルフメディケーション税制を選択すれば、上記と同様の算出方法で医療費控除の適用を受けられる場合があります。

■医療費控除を受けるために必要な手続き
医療費控除を受けるためには、青色申告者・白色申告者ともに、医療費控除の明細書を所得税の確定申告書に添付して所轄税務署に提出する必要があります。会社で年末調整をされているサラリーマンであっても、医療費控除を受けるためには、確定申告を実施する必要があるのです。
確定申告は慣れていない人には複雑な印象があるかと思いますが、e-taxを使えば比較的簡単に実施できます。通常の医療費控除の場合は、国税庁が公開している医療費集計フォームが便利です。医療費集計フォームはエクセル形式になっており、データをe-taxの確定申告書等作成コーナーで読み込ませて反映できます。ただしセルフメディケーション税制には使用できないので、注意しましょう。
なお、医療費の領収書は、税務署から提示を求められることがあるため、確定申告期限から5年間は保管しておく必要があります。添付書類には、健康保険組合から送られてきた「医療費のお知らせ」を使用できる場合もあります。

※関連リンク:国税庁「医療費を支払ったとき」

医療費控除の対象になる?ならない?(本人のケース)

ここからは実際のケースに沿って、医療費控除の対象になるのかどうかを見ていきましょう。

■かぜをひいた場合
かぜをひいて病院を受診した場合は、以下が医療費控除の対象となります。
  • 診療代
  • 自宅から病院までの交通費
  • 医師から処方箋をもらって薬局で購入する薬代 など

では、病院には行かずに市販の風邪薬を買って治した場合はどうなるのでしょうか?
この場合も、かぜの治療のために使用した一般的な医薬品の購入費用については医療費控除の対象になります。

■入院した場合
病気やけがで入院した場合は以下が医療費控除の対象となります。
  • 入院中の治療費
  • 手術代
  • 医師から処方された薬代
  • 医師の指導による差額ベッド代 など

なお、次のものについては原則として対象にはなりませんので、注意が必要です。
  • 入院にあたって買った身の回りの品
  • 医師などへのお礼
  • 本人希望による差額ベッド代 など

■新型コロナウイルス感染症のPCR検査費用
新型コロナウイルス感染症のPCR検査費用については、医師の判断で検査を受けた場合のみが医療費控除の対象になります。
自分が感染しているかどうかを確認するために任意で受けたPCR検査の検査費用は、医療費控除の対象とならないので注意してください。 ただし、検査結果が陽性であり、その後、新型コロナウイルス感染症に係る治療も行った場合は、最初に任意で受けた検査費用についても医療費控除の対象になります。

医療費控除の対象になる?ならない?(生計を一にする親族のケース)

■生計を一にする親族
医療費控除は、自分だけではなく「生計を一にする親族」に対して支払った医療費についても控除対象となります。「生計を一にする」とは、日常生活の資を共にすることをいい、簡単にいえば、同じ財布で日常生活を過ごしていることを指します。
例えば、父親が同居する家族全員を養っている場合、子供がかかった医療費は父親の医療費控除の対象となります。また、一人暮らしや別居など住んでいるところが異なっていても、仕送りなどで生活している場合は同じ財布で生活していると考えられるので、その親族の医療費も控除の対象に含めることができます。

■子供の世話のための親族の交通費
先述した通り、患者本人が通院した際の交通費は医療費控除の対象になります。では、子供の通院や入院に、親族が付き添う場合はどうなるのでしょうか。
通院の場合、年齢や病状などによって子供一人で行かせるのが危険と考えられる際は、付き添う親族の交通費も医療費控除の対象となります。
ただし、入院している子供の世話のために親族が通院する場合は、患者である子供自身が行き来しているわけではないので医療費控除の対象とはなりません。

■子供が海外でけがをしたときの治療代
海外旅行中に子供がけがをして現地の病院を受診した場合はどうなるのでしょうか。結論として、外国の病院で支払った医療費についても、国内で支払った場合と同様に、医療費控除の適用対象となります。なお、ドルなどの外国通貨で支払った場合には、医療費を支払った日のTTM(外国為替の電信売相場と電信買相場の仲値)によって日本円に換算する必要があります。

※関連リンク:国税庁「所得税目次一覧 医療費控除」

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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医療費控除は確定申告が必要ですが、e-taxなど申告が手軽にできる方法も登場しています。使った医療費を申告することで税金の減額が受けられますので、対象となる支払いのある方はしっかり活用してくださいね。
また、通常の医療費控除では控除の対象とならない場合も、セルフメディケーション税制では控除の対象となる場合があります。本文で紹介した計算方法を使って、どのように対応するのが適しているのか確認してみるとよいでしょう。

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