■通常の医療費控除について
先述の通り、医療費控除とは所得控除の一種です。対象は基本的に、年間(該当する年の1月1日から12月31日までの間)の医療費が10万円を超えている人となります。
また、この医療費には、通院などに必要な交通費や、扶養している配偶者や子どものための支払いを含むことも認められています。
医療費控除額は、「支払った医療費から保険金などを引いた金額」から、「10万円」もしくは「総所得金額の5%」のいずれか少ない方を差し引いて算出します。
そのため、その年の総所得金額が200万円以上であれば10万円、200万円未満であれば、総所得金額の5%の金額が差し引かれることとなります。
総所得金額が200万円未満の場合の計算方法
医療費控除額=(支払った医療費の額-保険金など)-総所得金額の合計額の5%
総所得金額が200万円未満だった場合の医療費控除の計算例
前提条件:今年の総所得金額 100万円、医療費 12万円、保険金なし
医療費から差し引かれる額:
100万円×5%=5万円
医療費控除額:
(12万円-0)-5万円=7万円
100万円×5%=5万円
医療費控除額:
(12万円-0)-5万円=7万円
■医療費控除は特例(セルフメディケーション税制)も選択可能!
通常の医療費控除は年間10万円を超える医療費が対象となるため、医療費があまりかからない方には適用されにくい制度です。そこで特例として、2017年にセルフメディケーション税制が創設されました。この制度は、健康診断やインフルエンザの予防注射を受けているなど、健康の保持増進や疾病の予防を行っている人を対象に、セルフメディケーション税制対象医薬品の年間購入額が1.2万円を超えるという条件で、医療費控除の適用ができるというものです。対象医薬品は、薬局やドラッグストアで購入できるOTC医薬品(市販薬)で、そのパッケージには特例対象であることを示すマークが記載されています。また、購入時に発行されるレシートにも★や◆などの印がついている場合があります。
ただし、セルフメディケーション税制と通常の医療費控除は選択適用となっているため、セルフメディケーション税制を適用する場合には、通常の医療費控除の適用はできません。
選択に迷ったときは以下のように算出して、どちらが有利になるかを確認します。
通常の医療費控除とセルフメディケーション税制の選択適用例
前提条件:今年の総所得金額 400万円、医療費 11万円、保険金なし、セルフメディケーション税制対象医薬品の年間購入額 5万円、健康診断受診済み
通常の医療費控除
医療費から差し引かれる額:
総所得金額が200万円以上なので10万円
医療費控除額:
(11万円-0)-10万円=1万円
医療費から差し引かれる額:
総所得金額が200万円以上なので10万円
医療費控除額:
(11万円-0)-10万円=1万円
セルフメディケーション税制
医療費控除額:
5万円-1.2万円=3.8万円
→セルフメディケーション税制を選択するのが有利
かかった医療費が年間10万円未満であったとしても、セルフメディケーション税制を選択すれば、上記と同様の算出方法で医療費控除の適用を受けられる場合があります。医療費控除額:
5万円-1.2万円=3.8万円
→セルフメディケーション税制を選択するのが有利
■医療費控除を受けるために必要な手続き
医療費控除を受けるためには、青色申告者・白色申告者ともに、医療費控除の明細書を所得税の確定申告書に添付して所轄税務署に提出する必要があります。会社で年末調整をされているサラリーマンであっても、医療費控除を受けるためには、確定申告を実施する必要があるのです。確定申告は慣れていない人には複雑な印象があるかと思いますが、e-taxを使えば比較的簡単に実施できます。通常の医療費控除の場合は、国税庁が公開している医療費集計フォームが便利です。医療費集計フォームはエクセル形式になっており、データをe-taxの確定申告書等作成コーナーで読み込ませて反映できます。ただしセルフメディケーション税制には使用できないので、注意しましょう。
なお、医療費の領収書は、税務署から提示を求められることがあるため、確定申告期限から5年間は保管しておく必要があります。添付書類には、健康保険組合から送られてきた「医療費のお知らせ」を使用できる場合もあります。
※関連リンク:国税庁「医療費を支払ったとき」