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経営計画 2018/08/21

なるほど!経理演習「原価計算にチャレンジしよう」

経理としてスキルアップしたいが、理論や知識の習得だけではつまらない。そんな方のためにスタートした本企画。今回は実務に近い形の演習問題として、原価計算にチャレンジしてもらいます。出題は、前回同様「経営を強くする戦略経理(前田康二郎・高橋和徳・近藤仁)著」の中からピックアップしてアレンジを加えています。



経営を強くする戦略経理
日本能率協会マネジメントセンター
著者:前田康二郎、高橋和徳、近藤仁

関連リンク(Amazon):経営を強くする戦略経理

問題:
次の製品の原価はいくらか?

とある文房具メーカーが新製品を企画しています。売価2,000円で月産2,000個の予定。下記の条件下での製造を仮定すると、この商品の標準原価はいくらになるでしょうか?

  • 材料費は1個につき550円
  • 工場と機械の償却費は月10万円
  • 金型を300万円で購入、この金型で6万個生産予定
  • 製造には3名必要。人件費は1人月20万円
  • 水道光熱費など、その他加工費は月50万円の予定
  • 工場は25日稼働で1日8時間

製造業の社長は、こうした原価計算が得意です。と言うのも、得意先などで「おたくの工場ならどれくらいでできる?」と、不意に見積もりの相談を持ちかけられるケースが多いからです。もちろん正式な見積もりは後日出せばいいのですが、その場でシミュレーションをして概算を出せればビジネスチャンスをつかむことができます。

そんな社長の右腕となるためには、社長と共通言語である原価計算に長けた経理になることが求められます。製造業の経理部門なら必須のスキルと言えます。ぜひ、チャレンジしてみてください。
気になる答えは…

答え

STEP1:1個生産するための時間を算出
原価計算の第一歩は、商品1個を生産するためにどれくらいの時間がかかるかを算出すること。かつては、ストップウォッチで実際の製造時間を計測していたと言われています。それくらい大事なポイントです。今回の演習では、総稼働時間を生産個数で割って算出します。

●1個生産するために必要な時間は?
25日 × 8時間 × 60分 = 12,000分(月の総稼働時間)
12,000分 ÷ 2,000個(月産個数)= 6分

1個生産するために必要な時間は6分
この時間がかかるほど原価は高くなります。工場の総稼働時間はそれほど変えることはできませんから、1個あたりの生産時間を短くするには月産個数の目標を上げる必要があります。月産個数はいわば工場の稼働力。「うちの工場ならこれくらいいけるな」と言うように、自社の工場の能力を把握しておくことが大事です。
STEP2:加工費に材料費と金型償却費をプラス
次に、加工費の合計を算出します。加工費には人件費も含みます。人件費に工場と機械の償却費、水道光熱費などの経費をプラスします。このコストを工場の総稼働時間で割ることで、1分あたりのコストを算出。これに1個生産するための時間をかけることで1個あたりの加工費がわかります。

●1個生産するための加工費は?
20万円/月 × 3人 = 60万円/月(人件費)

60万円/月 + 10万円/月(償却費)+ 50万円/月(水道光熱費)= 120万円/月(全体の加工費)

120万円 ÷ 12,000分(月の総稼働時間)= 100円(1分あたりのコスト)

100円 × 6分(1個生産に要する時間)= 600円(1個生産に要するコスト)
1個生産に必要な加工費は600円
さらに、金型償却費を考慮すると、
300万円 ÷ 6万個=50円/個
材料費は550円/個
原価合計は、
600円(加工費)+ 550円(材料費)+ 50円(金型償却費)= 1,200円
粗利は、
2,000円(売価)− 1,200円(原価)= 800円

問題:
原価を下げるためには?

さらに、問題です。上記の原価では粗利率が40%と、低水準です。利益率を高めるために売価を上げたいところですが、競合商品との競争力の面で据え置きせざるを得ません。原価をこれ以上下げるためにはどうすればいいでしょうか。
気になる答えは…

答え

生産数を上げる
予定の月産2,000個を3,000個に上げるとどうなるでしょうか。操業度に関わらず、人件費や他の加工費の増加はないものとしてシミュレーションします。

●1個生産するために必要な時間は?
12,000分 ÷ 3,000個(月産個数)= 4分
4分 × 100円(1分あたりのコスト)= 400円(加工費)

加工費が600円から400円に下がり、原価は1,000円になりました。

2,000円(売価)− 1,000円(原価)= 1,000円

売価据え置きで粗利が1,000円に、粗利率は50%に改善します。
このように、生産性を向上させ、より多くの製品をつくり、加工費単価を下げることが製造業の利益の源泉と言えます。
**********

日本企業は、オートメーション化と規律によって戦後から製造業の現場で大きな力を発揮してきました。そこには、社長の右腕となって活躍する経理担当の姿が数多見られたようです。現代の生産性向上には、ロボットやAIなどのテクノロジー、人間のモチベーションを左右する働き方改革など、様々な側面が影響します。しかし、生産性向上の手段が変わっても、原価計算の重要性は変わることはありません。時代の流れを見据えつつ、経理としての基本をしっかり身に付けていきましょう。

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