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経理/財務消費税 2019/09/25

業界別!消費税の増税・軽減税率の影響と対応について【農林水産、建設、宿泊業】

消費増税が施行される2019年10月1日がいよいよ目前に迫ってきました。経理ドリブンでは、これまで飲食食品製造卸売リースなど、消費増税の影響が大きいとされる業界をピックアップして対策や情報を発信してきました。今回の対象は農林水産、建設、宿泊業界です。どのような影響や注意点があるのか、チェックしてみてください。

農林水産業の注意点

農林水産業で扱う農作物などの食品は、当然、軽減税率の対象となります。ただし適用範囲の定義は産業によって異なることがあります。例えば、農業では生きている家畜は軽減税率の対象にならず、加工されて枝肉になることで初めて対象になります。一方、水産業では生きている魚類が軽減税率の対象になります。このように同じ農林水産業でも対象の捉え方が異なる場合があるので、注意が必要です。

■農林水産業で軽減税率の対象になる生産物の例
産業名 軽減税率の対象になる 軽減税率の対象にならない
農業 野菜、米、果実、食肉、生乳、コーヒー豆、食用鳥卵、かぼちゃの種子(製菓などの原料用)、酒米 生きている家畜、果実の苗木、栽培用の種子、種もみ、花き、イグサ、ペットフード
林業 食用のキノコ、山野草 樹木、木材、観賞用の植物
水産業 食用の魚類、貝類、海藻類、甲殻類、養殖した魚類、輸入した魚類(食用) 観賞用の熱帯魚、飼料用の魚類

さらに、軽減税率の対象がある場合、区分記載請求書等保存方式への対応が迫られる可能性もあります。区分経理が困難な小規模事業者は特例の適用も検討してみてください。
また、農林水産業は免税事業者が多いことも特徴の一つです。免税事業者は2023年に導入されるインボイスに対して、「課税事業者に変更し、インボイス発行事業者の登録をする」もしくは「免税事業者のままでいる(インボイスは発行できない)」のどちらかを選ぶ必要がありますので、こちらも検討が必要です。

※関連記事:飲食業界だけじゃない!?迫りくる軽減税率・インボイス制度開始に、企業の対策待ったなし!(新米経理の会計奮闘記 第8回)

建設業の注意点

一般的に、建設業で食品を扱うことはほとんどないため、軽減税率への対応は必要ないと考えられます。ただし、一般の企業と同様、取引先への手土産や菓子折り、現場の作業員の弁当、飲料などの経費は軽減税率を適用した処理が必要です。この点については、経理担当者はあらかじめ、どの商品が軽減税率の対象なのかを理解し、関係者にも周知しておきましょう。 区分記載請求書保存方式の対応についても、建設業は基本的には必要ありません。
しかしインボイスについては、建設業には「一人親方」のような小規模の免税事業者も多いため、農林水産業と同様「課税事業者になる」か「免税事業者のままでいる」かを選ばなければならない場合があります。該当の事業者は念頭に入れておいてください。

こうして見ると建設業にとって消費増税の影響は少なそうですが、実は建設事業者が最も注意しなくてはならないのは軽減税率ではなく、「工事に適用される税率」です。工事は長期的なこともあり、契約が2019年10月1日を跨ぐ場合も多くあります。では、契約、受け渡しなど、工事のどの段階で税率が決まるのでしょうか。
一般的な工事は「請負に係る資産の譲渡等」に分類され、この場合、消費税の適用時期は「目的物の全部を完成して相手に引き渡した日」、あるいは「その約した役務をすべて完了した日」(一部作業の請負工事など)が消費税の適用時期となります。つまり、引き渡し日や作業完了日が2019年10月1日以降の場合は、それ以前に着工していても税率10%が適用されるのです。そのため、消費増税前の9月30日までに完成という計画を立て、工事を進めている事業者も多いようです。

宿泊業の注意点

宿泊業では「客室の冷蔵庫内」、「ルームサービス」、「売店」、「宴会場」など、各所で飲食料が販売されています。これらの飲食料はすべてが軽減税率の対象となるとは限りません。「飲食料の販売」は軽減税率対象となりますが、「食事の提供」は対象範囲外だからです。

上記の例の場合、それぞれの区分は以下の通りです。

■飲食料の販売(軽減税率の対象内)
  • 客室の冷蔵庫内にある飲食物
  • ホテル内の売店で販売する飲食物

■食事の提供(軽減税率の対象外)
  • ルームサービス
  • 宴会場での食事提供

※関連記事:業界別!消費税の増税・軽減税率の影響と対応について【飲食業界編】
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今回は農林水産業、建設業、宿泊業の消費税率引き上げ・軽減税率導入の影響と対応のポイントについて解説しました。建設業のように、軽減税率への注意だけでなく、消費税の適用時期に気を付けなければならない事業者も多くあります。2019年10月1日を過ぎると、消費税に携わっている経理担当者には他の社員から質問や相談が寄せられることも多々あるでしょう。まだ理解が深まっていない、対策を練っていないという経理担当者は、消費増税後に慌てないように、自社業界の消費増税・軽減税率導入の影響からリサーチして早々に対応を模索してください。

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