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業務全般スキルアップ/キャリアアップ 2019/02/05

日本の帳簿の歴史から学ぶ。変革期を迎える「経理」の仕事で生き残るには

現代における経理の黒船的な存在「フィンテック」によって、帳簿管理などの経理業務がAIに代替されてしまうという情報を耳にした方も多いのではないでしょうか。それに加えて2019年10月からは消費税が10%に上がり、これに伴った軽減税率とインボイス制度が本格的に導入されます。記帳方法が大きく変わる可能性があるなど、会計業界や経理担当者の周囲の環境はこれまでにないほどの大きな変化を迎えようとしています。このような変革期に経理の現場に立つ担当者はどのような意識を持って臨めばよいのでしょうか。今回は、2月23日の「税理士記念日」にちなんで経理担当者の大先輩である「江戸時代~明治時代」の経理の仕事と当時の環境をご紹介します。デキる経理になるための精神を先人たちから学んでみましょう。

日本最古の帳簿は江戸時代初期に生まれた

江戸時代の呉服屋は主に「見世物商い」や「屋敷売り」という販売手法をとっていました。支払いは盆と暮れの年2回だったということから、商品の引き渡し時には代金を支払わず、後日支払う「掛け取引」が行われていたことが考えられます。日本で現存する最も古い帳簿「足利帳」にもそれらが記されています。足利帳は伊勢(現在の三重県)で呉服屋を営んでいた伊勢冨山家の1615~1640年までの呉服や金融業の売買と純資産の増減を記録したものです。いわゆる「単式簿記」で、現代の勘定科目でいう「売掛金」「在庫商品」「貸付金」の合計を当時の貨幣量に換算し、その金額から「預り金」「借入金」などを差し引いて、純資産を算出しています。現在、会計の基礎になっている「複式簿記」のようにBS(貸借対照表)PL(損益計算書)の計算結果の一致を見比べることはできませんが、それでも400年以上前から商人(あきんど)たちの中にはある一定の会計技術が確立されていたことがうかがい知れます。

西洋の帳簿とは違う、日本の江戸時代の帳簿の特徴

現存する江戸時代の帳簿と、現在の帳簿の基本になっている西洋の帳簿には大きな違いがあります。
まず、江戸時代の帳簿には、それぞれの店の商売の流儀を漏らさないために「第三者には見せないようにしている」という秘匿性があります。当時の西洋の商人たちが帳簿を付ける大きな目的は、公証人などに見せるため基本的にオープンでした。一方、日本の帳簿は外に見せることはほとんどありません。秘匿性を高めるため、記帳する際は、その家でしか分からない「符帳(ふちょう)」という暗号を使うケースもあったようです。その結果、三井越後屋の「永代目録帳」、鴻池両替店の「算用帳」などは、当時では珍しい複式簿記のような財産と損益の二重計算などの高い会計技術を有していたものの、他の商人に伝わることはほとんどありませんでした。また、記帳も現在のような横書きではなく、和紙に縦書きで記録されていたのも大きな違いのひとつです。

江戸幕府の財務の統括者「勘定奉行」は経理担当者から成り上がれた

下町だけでなく、江戸幕府の財政や農政、それに関わる会計を統括したのは「勘定奉行」でした。正確には経理などの実務を行うのが「勘定・勘定方」で、彼らが働く役所を「勘定所」、そのトップを「勘定奉行」と称します。通常、勘定奉行になるには世襲や各藩の藩主を監視する「目付け」などを経験して就任するケースが多かったのですが、一方で「勘定・勘定方」、現在でいう「経理担当者」からキャリアをスタートして、実務や経験を買われて勘定奉行に昇進することも少なからずあったようです。
例えば、江戸時代中期の下級武士「細田時以(ほそだ・ときより)」の場合、財政関係の実務を行う「勘定」からキャリアを始め、「金奉行」「勘定組頭」「勘定吟味役」と経理一本の現場からのたたき上げで、最終的に大きな権力を持つ「勘定奉行」にまで出世しました。このように内部昇進できたのは当時の江戸幕府の人事システムでは極めて異例です。企業と役人、商人と武士という違いはありますが、実力次第でのし上がるチャンスがあるのは、今も昔も変わらないのではないでしょうか。

勘定奉行の主な業務
前述した通り、勘定奉行の主な業務は幕府の財政業務です。他の幕府の役人に指示を出す立場で、例えば年貢や金を管理する「蔵奉行」、幕府の金銭を管理する「金奉行」、川で人を運搬していた業者から徴税する「川船改役(かわぶねあらためやく)」などを統括していました。
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江戸時代は秘密にされていた記帳の方法ですが、現在は本やセミナーで新しい知識を得ることができます。江戸の呉服屋「三井越後屋」が、現在、デパート「三越」をはじめとする三井財閥として存在しているのも、他の店が知らない二重計算で財産と損益を管理できたところによる効果も大きいと考えられます。現代の経理担当者も、フィンテックの知識や技術を習得し、経理業務にアウトプットすることができれば、細田時以のように管理部門などへのキャリアアップにつなげられるのではないでしょうか。

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