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経理/財務会計処理 2022/10/04

交際費はどこまで損金算入できる?年末年始の事例で解説!

忘年会に新年会、お歳暮、年賀状。年末年始のシーズンは、1年の中で特に交際費の支出が増える時期ではないでしょうか。
交際費は税務調査でも重点的に調査される項目の1つであり、経理処理にも注意が必要です。ただし、交際費として損金算入できる基準は少しわかりにくく、処理を間違ってしまうケースが多いことも事実です。
そこで今回は、年末年始のシーズンにありがちな事例とともに交際費とできるかどうかの判断ポイントを解説します。

  • 投稿日:2019/01/22
  • 更新日:2022/10/4

交際費の原則

交際費とは、税法上の規定で以下の通りに定められたものです。

交際費、接待費で一定のもの、機密費、その他の費用で、法人がその得意先、仕入先、その他事業に関係ある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの

わかりやすく言うと、業務を円滑に進めるために、取引先との親睦を深める行為に対してかかった費用のことを指します。具体的には、仕事上の付き合いのある人に対する飲食、旅行、観劇などを通じてのおもてなし、さらに、お中元・お歳暮、祝い金・香典などが該当します。


交際費となる主な費用
国税庁は、次のような費用を交際費の金額に含まれるものとして例示しています。(一部抜粋)

  • 会社の周年記念または社屋新築記念での宴会費、交通費、記念品、土木建築などでの進水式、起工式などの費用(福利厚生費に該当する費用は除く)
  • 下請工場、特約店、代理店などになるため、またはするための運動費などの費用
    ※ただし、こうした取引関係を結ぶために相手方の事業者に対して金銭や資産を交付する費用は、交際費に該当しないこととされています。
  • 社外の者の慶弔、禍福に際し支出する金品などの費用
  • 得意先、仕入先その他事業に関係のある者を旅行、観劇等に招待する費用
  • 製造業者または卸売業者が、その製品または商品の卸売業者に対し、当該卸売業者が小売業者等を旅行、観劇等に招待する費用の全部、または一部を負担した場合のその負担額
  • 得意先、仕入先等の従業員等に対して取引の謝礼などとして支出する金品の費用
※参考資料:国税庁「第1款 交際費等の範囲


交際費とならない主な費用
一方で以下の費用については、交際費とならないとされています。(一部抜粋)

  • 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
  • 1人あたり5,000円以下(役員、従業員間のものは除く)の飲食費
  • 以下の費用
    • カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいなどを贈与するための費用
    • 会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用(これに該当する場合2には含まれない)
    • 社会事業団体などへの寄付金
    • 売上値引や売上割り戻し
    • 広告宣伝費や福利厚生費
    • 給与課税される従業員の昼食代などの費用
※参考資料:国税庁「交際費等の範囲と損金不算入額の計算

上記の通り、1人あたり5,000円以下の飲食費については、交際費ではなく会議費として計上します。
なぜなら、会議費として計上する場合は、特に制限なしでどの企業でも損金算入が可能であるためです。
一方で交際費の場合は損金算入可能な上限額が企業規模によって決まっています。

交際費で損金算入できる額

法人が支出する交際費は、税務上では原則として損金不算入とされています。
ただし、企業規模によって決められている上限までは損金算入することも可能です。


期末の資本金などの額が1億円以下の法人
資本金または出資金が1億円以下(中小法人)の法人における交際費については、次のAまたはBのうち、いずれかより有利な方の金額を損金算入できる特例が設けられています。
それを超えた分については、損金となりません。

A 交際費のうち、接待飲食費の額 × 50%相当額以下までの金額
接待飲食費とは、社外の人との飲食に関する接待費を指します。
この時、領収書等を保存して以下を明らかにする必要があります。

  • 飲食のあった年月日
  • 飲食に参加した得意先、仕入先などの氏名または名称およびその関係
  • 飲食に参加した者の数
  • その飲食に要した費用の額、飲食店等の名称および所在地
  • その他飲食に要した費用であることを明らかにするために必要な事項
B 年間800万円以下の金額
単純に交際費のうちの年間800万円までが損金算入できます。
例えば、年間で交際費を1000万円負担した場合、800万円までが経費となり、差額の200万円は経費で落とせません。
事業年度が12カ月未満の場合は、月数で案分した金額が該当することになります。
※資本金5億円以上の法人による完全支配関係のある法人(100%子会社等)については、資本金が1億円以下の法人であっても、特例の適用対象から除外されるため注意が必要です。


期末の資本金などの額が1億円超100億円以下の法人
資本金または出資金が1億円超の企業の場合は、上記Aの金額のみしか損金算入できません。
したがって、こうした法人は、接待飲食費以外の、お中元・お歳暮などの費用などについては、損金算入が認められないこととなります。


期末の資本金などの額が100億円超の法人
資本金または出資金が100億円超の大規模法人については、原則通り交際費全額が損金不算入となります。

ケース別、交際費となる費用

実際に年末年始にありがちなシーンを例に、交際費となる費用について整理していきます。


取引先との忘年会や新年会の飲食代
取引先との忘年会や新年会は交際費と認められます。また、グループ会社間のイベントで、親会社・子会社などの役員を招待した場合にも、交際費となります。 中小企業であれば、年間で交際費が800万円を超えない限り、交際費として損金算入が可能です。
また、大企業であっても、参加者1人当たりの飲食代を5,000円以下とするなどの要件を満たすことによって、会議費として損金算入できる可能性があります。

経理担当のポイント
忘年会や新年会を主催する際は、事前にこれまでの交際費を計算しておきましょう。
交際費ではなく、一人当たり5,000円以下の会議費として損金算入する場合には、「業務をおこなう上で必要な場だったか」ということを証明するための書類を残しておくことも重要です。


取引先との忘年会や新年会に出席するための交通費
自社が取引先を接待する目的で催した忘年会や新年会のお店に行くまでの交通費については、往復ともに交際費に含まれます。同様に、取引先の出席者分の交通費を自社で負担した場合も交際費とすることが可能です。
ただし、取引先が主催する忘年会や新年会に出席するために、自社の社員が会場まで移動した際の費用は、交際費とはせず、交通費として処理します。この場合は通常の交通費精算と同様の手順での経理処理で、損金算入が認められます。

経理担当のポイント
取引先との忘年会に出席する自社の従業員には、交通費の金額を集計しておくことや、タクシー代などの領収書を必ず取得しておくことを事前に伝えておきましょう。
そうすることで、交際費として損金算入ができないリスクを下げる目的があります。


お歳暮の費用
取引先や得意先にお歳暮を贈る会社はたくさんあるでしょう。お歳暮やお中元は、交際費となります。そのほか、新年の挨拶に持参することが多い手土産も、交際費に含まれます。

経理担当のポイント
総務の担当者からお歳暮のリストなどを入手しておき、税務調査時に領収書と合わせて提示できるようにしておきましょう。

ケース別、交際費とならない費用

続いて、交際費とはならない費用について解説していきましょう。


社内の食事会やイベント
社員同士での交流を深める目的で食事会やイベントを企画する企業も多いでしょう。
こうした社内の従業員同士のイベントは、交際費には含まれず、福利厚生費として処理することになります。(会の目的や金額によっては会議費とする余地もありますが、今回は交流を深める目的ということで、福利厚生費とします)
ただし、福利厚生費を損金算入するためには、そのイベントの機会が全従業員に対して平等に提供されていること、また、金額があまりに高額ではないことなどの要件を満たす必要があります。
そのため、そのイベントの開催を全従業員に告知したことを示す書類やメールは残しておくようにしましょう。

経理担当のポイント
社内の人間のみでのイベントは交際費ではなく福利厚生費となります。
損金算入をするためには、全従業員に平等に提供されているということを示すよう、イベントの案内書類や参加メンバー表を残すなどしておきましょう。

※関連記事:法定福利費と福利厚生費の違いは?非課税となる基本要件と、社宅や通勤手当に関する条件を解説


社名・ロゴが入ったカレンダーなど
カレンダーや手帳は交際費として認められていません。これは、年末に取引先に贈与する社名や商品のロゴ入りカレンダーも同様です。これらは基本的には広告宣伝費となります。

経理担当のポイント
カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいなどを贈与するための費用は交際費とはなりません。事前に何を配るかをチェックし、対象物が交際費となるのかどうかを確認しましょう。


年賀状
一般的な年賀状は、交際費ではなく通信費に分類されます。極端に金額が大きくなるようなケースを除いて、通常の郵送代などと同様に通信費に計上して損金算入して問題ありません。

経理担当のポイント
年始セールの告知など広告色の強い年賀状は、広告宣伝費とする場合もあります。取引先に年賀状を配布する場合には、広告宣伝が主な目的になっていないのかを確認するために、大まかな記載内容を把握しておきましょう。


※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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経営者や営業などから「交際費で落として」と言われるままに処理してしまうと、税務調査時に十分に説明できないケースもあります。領収書を残すだけでは十分な証拠となり得ない場合もあるので、稟議書を作成するなどして日頃から気を付ける必要があるでしょう。
対象費用が交際費に含まれるかどうかで迷った場合は、まず交際費の定義に戻り、そのうえで、今回紹介した交際費になるもの、ならないものの具体例も含めて確認してみてください。

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