この記事のポイント
- 生成AIの利用率は2024年度から2026年度にかけて、企業・事業主で55%から84%、会計事務所で39%から75%へ上昇し、日常的な利用が広がっている。
- 生成AIの活用は、データ分析だけでなく文書・資料作成や専門業務にも広がり、利用者の多くが業務の質向上や作業時間の短縮を実感している。
- 生成AIの普及に伴い、機密情報の漏洩やハルシネーションへの対応が課題となる一方、利用ルール未整備の組織も多く、安全な利用環境や教育・サポート体制の整備が重要である。
株式会社ミロク情報サービス(MJS)は、企業および会計事務所における生成AIの導入・活用状況や意識の変化を把握するため、2026年7月に「生成AIの導入・活用に関する実態調査 第3弾」を実施し、その結果を「会計事務所白書」としてまとめました。
調査からは、生成AIの利用がこの2年間で大きく広がり、活用する業務や利用するツールも多様化していることがわかります。
その一方で、誤情報(ハルシネーション)への対応や情報セキュリティ、社内ルールの整備など、新たな課題も見えてきました。
今回の記事では、最新の調査結果をもとに、企業・事業主と会計事務所における生成AI活用の変化と、今後押さえておきたい課題を解説します。
調査概要
- 調査名:
- 会計事務所白書2026
生成AIの導入・活用に関する実態調査 第3弾
- 調査主:
- 株式会社ミロク情報サービス
- 調査対象:
- 全国の企業・事業主および会計事務所 計818名
- 企業のバックオフィスまたはIT担当者、事業主: 606名
- 税理士、公認会計士、会計事務所職員: 212名
- 調査期間:
- 2026年7月10日(金)〜 2026年7月31日(金)
- 調査エリア:
- 全国
- 調査手法:
- インターネット調査
生成AI利用率の急拡大と業務活用の多様化
2024年度の調査と比較すると、この2年間で生成AIの利用状況に大きな変化が見られました。
生成AIの利用率が2年で倍増!
生成AIそのものの利用状況については、企業・事業主の利用率が、2024年度調査では55%だったことに対し、2026年度調査では84%まで上昇しました。
さらに、会計事務所の利用率は39%から75%へと倍近くまで増加し、企業側の伸びを上回るペースで普及が進んでいます。
Q 「生成AI」を使ったことはありますか?
企業・事業主
会計事務所
会計事務所では、顧客の資産や税務情報などの機密情報を扱うことから、2024年度当初は生成AIの利用に慎重な姿勢があったと考えられます。
実際、2026年度調査でも「機密情報の漏洩」が生成AI利用時の主な不安として挙げられており、情報の取り扱いは引き続き重要な課題となっています。
その一方で、調査では「専門性の高い業務を担う会計事務所ほど、一度効果を実感すると利用が急速に広がりやすい傾向」が指摘されています。
実際に生成AIを利用した会計事務所では、業務の質の向上や作業時間の短縮などの効果が実感されています。
日常的な利用が定着
生成AIを毎日利用している人は、企業・事業主で38%、会計事務所で32%となり、週3〜4回使う人と合わせると、いずれも高頻度の利用者が6割を超える結果となりました。
単発の試用にとどまらず、日常的に利用されるようになっていることから、生成AIの活用が「試す段階」から「使いこなす段階」へと進んでいることがうかがえます。
Q 「生成AI」を使ったことが「ある」と答えられた方に伺います。生成AIをどのくらいの頻度で使用していますか?
有料版・無料版の利用状況
一方で、「有料版」と「無料版」の利用割合には、両者で違いが見られました。
Q 「生成AI」を使ったことが「ある」と答えられた方に伺います。生成AIは有料版と無料版どちらを使用していますか?
企業・事業主では無料版の利用が64%を占めており、まずは手軽に利用できる無料版から生成AIを取り入れているケースも多いと考えられます。
一方、会計事務所では、文書作成やデータ分析をはじめ、記帳代行や仕訳・元帳チェックなど専門業務での活用も想定されます。
こうした業務で継続的に活用するため、より充実した機能や利便性を求めて有料版を選択するケースが相対的に多い可能性があります。
ChatGPT一強から多角化へ
利用している生成AIツールについては、2024年度調査ではChatGPTの利用率が8割前後を占めていましたが、2026年度調査では複数のツールを併用する動きが広がっています。
Q 「生成AI」を使ったことが「ある」と答えられた方に伺います。どのような生成AIを使われましたか?(※複数回答可)
企業・事業主
会計事務所
企業・事業主では、WordやExcelなどMicrosoft 365の各種サービスと連携して利用できるMicrosoft Copilotの利用割合が高くなっています。
一方、会計事務所では、長文の読解・整理や文章作成などにも活用できるClaudeの利用割合が、企業・事業主より高い結果となりました。
こうしたツールごとの特徴も、利用傾向の違いに影響している可能性があります。
また、自由記述では、NotebookLMを活用した議事録や資料の要約のほか、Perplexity、Canvaなど特定の用途に対応したツールも挙げられています。
ChatGPTが引き続き広く利用される一方で、目的や機能に応じて複数のツールを使い分ける・併用する動きが進んでいるようです。
会計事務所白書2026
生成AIの導入・活用に関する実態調査 第3弾
生成AIの利用が急速に広がる一方、情報セキュリティや社内ルールの整備など新たな課題も見えてきました。企業・事業主と会計事務所における生成AI活用の実態と変化を紹介します。
生成AIの業務活用が本格化
では、実際にどのような業務で生成AIの活用が期待され、どんな効果が出ているかを具体的に見ていきましょう。
業務での活用領域の変化
業務に活用したい内容についても、2024年度と2026年度の調査では差が出ています。
Q 職場でどのような業務に生成AIを使ってみたい、または試してみたいですか?(※複数回答可)
企業・事業主
会計事務所
企業・事業主については、2024年度は「データ分析」がトップでしたが、2026年度は「企画や報告のための資料作成」や「メールなどの文書作成」が「データ分析」を上回る結果となりました。
会計事務所でも、2026年度は「メールなどの文書作成」、「企画や報告のための資料作成」が「データ分析」と並び、上位となっています。
さらに会計事務所の自由記述では、「記帳代行・仕訳/元帳チェック」、「税務相談」など実務に直結した業務も挙げられており、生成AIを専門業務のサポートにも活用しようとするニーズがうかがえます。
生成AIの導入効果
2026年度に新たに質問として加えられた、「生成AIの活用によって感じた変化」では、作業時間の削減だけでなく、業務のクオリティ面でも効果を感じている人が多いようです。
Q 「生成AI」を使ったことが「ある」と答えられた方に伺います。生成AIの活用によってどのような変化を感じましたか?(※複数回答可)
こうした結果から、生成AIは単なる業務効率化のツールとしてだけでなく、「アウトプットの質を高める手段」としても評価されていることがうかがえます。
会計事務所白書2026
生成AIの導入・活用に関する実態調査 第3弾
生成AIの利用が急速に広がる一方、情報セキュリティや社内ルールの整備など新たな課題も見えてきました。企業・事業主と会計事務所における生成AI活用の実態と変化を紹介します。
生成AIの利用リスクと課題
業務に定着してきた生成AIですが、まだ課題は残ります。
実際にどのような意見が多いかを見ていきましょう。
「ハルシネーション」への検証姿勢
ハルシネーションとは、生成AIが誤った情報を正確であるかのように出力することです。
この点についての確認・検証姿勢については、会計事務所と企業・事業主の間で明確な差が見られました。
Q 「生成AI」を使ったことが「ある」と答えられた方に伺います。生成AIが誤った情報を正確であるかのように出力する「ハルシネーション」が話題となっていますが、生成AIの出力内容についてどの程度確認・検証していますか?
企業・事業主の過半数が「重要な内容のみ確認し、軽微な情報はそのまま使う」と回答したのに対し、会計事務所では過半数が「必ず別の情報源で裏付け確認を行う」と回答しています。
顧客の財務・税務に関する専門情報を扱う会計事務所では、情報の正確性を慎重に確認する姿勢がより強いことがうかがえます。
生成AIの利用にあたっての不安要素
「生成AIを使うにあたって不安に思うことや困っていること」の変化からは、組織が抱える課題のフェーズが変わってきたことが読み取れます。
Q 生成AIを使うにあたって不安に思うことや困っていることがあれば、当てはまるものをすべてお選びください。(※複数回答可)
企業・事業主
会計事務所
2024年時点では「生成AIが業務でどのように活用できるかわからない」、「どの生成AIを使用したらいいかわからない」といった、使い始め特有の悩みが上位を占めていました。
しかし、2026年調査では、企業・事業主、会計事務所の双方で「機密情報の漏洩が不安」が最多となっています。
実際に生成AIの利用者が増える中で、関心が「どのAIを使うか」、「どう使うか」といった悩みから、機密情報の漏洩など実際の運用に伴うリスクへと移ってきたことがうかがえます。
追いつかないルール整備の問題
セキュリティへの懸念が高まる一方で、社内ルールの整備状況にはまだ遅れが見られます。
職場のルールや制限の有無について、「ルールが定められていない」と回答した企業・事業主は53%で、2023年調査の80%から減少しています。
一方、会計事務所についても89%から70%へと減少していますが、企業・事業主ほど大きな変化は見られませんでした。
Q 従業員・スタッフが許可なく個人アカウントの生成AIを使用する問題「シャドーAI」が話題となっていますが、あなたの職場では生成AIの使用に関するルールや制限がありますか?
企業・事業主
会計事務所
依然として過半数の組織でルールが定められておらず、利用の広がりに管理体制が追いついていない状況です。
機密情報の漏洩に対する不安など、情報セキュリティやプライバシー確保への意識が高まる一方で、相談先として「自分で調べる」とする回答も多く、組織としてのサポート体制には課題が残っていることがうかがえます。
今後、生成AIの利用がさらに広がることを考えると、個人のリテラシーに頼るだけでなく、組織として安全な利用環境やルール、教育・サポート体制を整えていくことが重要だといえるでしょう。
※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
会計事務所白書2026
生成AIの導入・活用に関する実態調査 第3弾
生成AIの利用が急速に広がる一方、情報セキュリティや社内ルールの整備など新たな課題も見えてきました。企業・事業主と会計事務所における生成AI活用の実態と変化を紹介します。
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今回の「会計事務所白書2026」の調査結果から、生成AIは会計事務所・企業・事業主ともに利用が大きく広がり、「使ってみる」段階から「いかに安全かつ効果的に使いこなすか」を考える段階へと進んでいることがわかりました。
一方で、情報セキュリティへの不安や社内ルールの未整備、相談体制などの課題も残されています。
今後は、生成AIによる業務効率化や品質向上を図りながら、適切なルールの策定や従業員教育など、組織として安全に活用できる環境を整えていくことが重要となるでしょう。