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経理/財務管理会計 最終更新日:2026/09/15

標準原価計算でコストのムダが見える!原価計算基準から学ぶ差異分析の基本

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アイコンこの記事のポイント
  • 標準原価計算とは、あらかじめ設定した標準原価と実際原価を比較し、差異の原因を分析して原価管理やコスト改善につなげる手法である。
  • 原価差異は、直接材料費では価格・数量、直接労務費では賃率・作業時間、製造間接費では予算・操業度・能率などに分解することで、差異が生じた要因を把握しやすくなる。
  • 差異分析をコスト削減や経営判断に活かすには、分析結果を現場と共有して改善策につなげるとともに、実態との乖離を防ぐため標準原価を定期的に見直すことが重要である。

製造業の原価管理では、標準原価と実際原価の差を把握し、その原因を分析することが重要です。
とはいえ、「差異の計算式がなかなか覚えられない」、「不利差異と出ても、次に何をすればいいのかわからない」と、悩んでいる担当者も多いのではないでしょうか。
原材料費や人件費の高騰が続くいま、コストのズレをすばやくつかみ、改善につなげる力はこれまで以上に求められています。
今回の記事では、原価計算基準をもとに標準原価計算の基本を整理し、差異分析の具体的な計算方法や、算出した差異をコスト改善や経営判断に活かすポイントなどを実務目線で解説します。

標準原価計算とは

標準原価計算とは、製品1個あたりにかかる材料費・労務費・製造間接費について、過去のデータなどをもとにあらかじめ標準となる原価を設定し、実際の原価と比べてコストを管理する手法です。
似た手法に実際原価計算がありますが、こちらは実際にかかった原価を後から集計するものです。
一方、標準原価計算は、製造の前に目標となる原価を設定しておく点が異なります。

例えば、製品1個あたりの材料費を1,000円に収めるという目標を立て、実際には1,200円かかったとします。
このとき、200円の超過という事実を客観的な数字でつかむことで、原因の究明につなげられます。

※参考資料:企業会計基準委員会「原価計算基準


標準原価計算の目的
原価計算基準では、標準原価を設定する目的として、原価管理、予算編成、記帳の簡略化・迅速化などが挙げられています。
これらを実務上のメリットに置き換えると、主に次の3点に整理できます。

  • 原価管理:
    標準原価と実際原価の差を分析することで、コストのムダや改善すべきポイントを数値で把握しやすくなる
  • 予算策定:
    あらかじめコストを見積もりやすくなり、事業計画に沿った予算をスムーズに立てられる
  • 月次決算の迅速化:
    生産数量が確定した段階で標準原価を用いて売上原価を算出できるため、集計のリードタイムを短縮できる

標準原価の種類とそれぞれの特徴
標準原価には、設定水準や利用目的ごとに「現実的標準原価」、「理想標準原価」、「正常原価」などの種類があります。
原価計算基準ではそれぞれの特徴や位置づけが示されており、実務ではほかに基準標準原価という考え方も用いられます。
原価管理に最も適しているとされるのは、現場が到達可能な水準を設定し、状況変化にも対応しやすい現実的標準原価です。

種類 特徴 主な用途・位置づけ
現実的標準原価 通常生じる程度の減損(原材料の目減り)・仕損(不良品など)・遊休時間(作業が行われなかった時間)といった余裕を織り込み、達成が期待できる水準 原価計算基準で原価管理に最も適するとされ、実務の中心となる
理想標準原価 通常発生するロスや作業上の余裕を考慮せず、最高効率で達成できる水準 制度としての標準原価には含まれず、改善目標のベンチマークとして使う
正常原価 異常な変動を除き、正常な経営状態を前提として設定する水準 経済状態が安定した局面での棚卸資産評価や原価管理に用いる
基準標準原価 長期間改訂せずに固定して使用する水準 経年での原価の変化を比較・分析する基準軸として使う(原価計算基準の分類には含まれない)
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標準原価計算の差異分析の計算方法

差異分析とは、標準原価と実際原価のズレ(原価差異)を、直接材料費、直接労務費、製造間接費ごとに捉え、さらに価格や数量などの要素に分解して、差異が生じた原因を明らかにする作業です。
例えば、「今月は原価が10万円オーバーした」と総額だけわかっても、材料を高く仕入れたからなのか、現場で使いすぎたからなのか、原因までは把握できません。
実際は、原因まで切り分けてはじめて、次のアクションにつながるのです。

差異には、コストが予定より多くかかった「不利差異」と、予定より少なく済んだ「有利差異」の2種類があります。
どちらになるかは、標準原価と実際原価のどちらが大きいかで決まります。
実際原価が標準原価を上回れば不利差異、下回れば有利差異です。


直接材料費差異:価格差異と数量差異に分解する
直接材料費の差異は、材料の単価のズレである価格差異と、消費量のズレである数量差異の2つに分けて計算します。
一般的に、価格差異は購買活動、数量差異は製造活動と関連が深いため、分けて計算すると、どこを改善すべきかが見えやすくなります。
計算式は次の通りです。

価格差異 =(標準単価 - 実際単価)× 実際消費量

数量差異 =(標準消費量 - 実際消費量)× 標準単価

例えば、標準単価100円/kg・標準消費量2kgに対し、実際単価110円/kg・実際消費量2.1kgで製品を作った場合、計算は次の通りです。

差異の種類 標準 実際 計算例 結果
価格差異 単価100円 単価110円 (100−110)×2.1 −21円(不利差異)
数量差異 消費量2kg 消費量2.1kg (2−2.1)×100 −10円(不利差異)

直接労務費差異:賃率差異と作業時間差異に分解する
直接労務費の差異は、時給などのズレである賃率差異と、作業時間のズレである作業時間差異の2つに分けます。
賃率差異は賃金水準や人員構成に、作業時間差異は現場の作業能率に関わるため、それぞれ確認すべき要因が異なります。
直接材料費と考え方は同じで、単価を賃率に、数量を時間に置き換えれば計算式が成り立ちます。

賃率差異 =(標準賃率 - 実際賃率)× 実際作業時間

作業時間差異 =(標準作業時間 - 実際作業時間)× 標準賃率

例えば、標準賃率1,000円/時間・標準作業時間3時間に対し、実際賃率1,050円/時間・実際作業時間3.2時間で作業した場合、計算は次の通りです。

差異の種類 標準 実際 計算例 結果
賃率差異 賃率1,000円 賃率1,050円 (1,000−1,050)×3.2 −160円(不利差異)
作業時間差異 作業時間3時間 作業時間3.2時間 (3−3.2)×1,000 −200円(不利差異)

製造間接費差異:予算差異・操業度差異・能率差異に分解する
製造間接費の差異は少し複雑で、予算差異、操業度差異、能率差異などに分解して分析します。
製造間接費には生産量に比例しない固定費(工場の家賃や減価償却費など)が含まれるため、設備の稼働状況を示す操業度差異を独立して把握する必要があるのです。
主な差異が示す内容は、それぞれ次の通りです。

  • 予算差異:
    予定した製造間接費と実際の発生額にどれだけ差があったか(費用発生のズレ)
  • 操業度差異:
    設備を予定どおり稼働できたか(稼働不足により固定費を十分に製品原価へ配分できなかったことによる差異)
  • 能率差異:
    予定した作業時間や活動量で生産できたか(作業効率の差)
製造間接費差異には、差異を3つに分ける三分法や4つに分ける四分法といった分析方法があり、どの方法を使うかによって差異の分け方や計算式が異なります。
そのため、それぞれの差異が何を示しているのかを理解したうえで、自社が採用する方法に沿って分析することが大切です。
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標準原価計算を経営判断に活かすには

差異分析をコスト削減につなげるためには、現場に返して改善を促すことが重要となります。
ここでは、算出した差異を実務でどう使うか、2つの観点から解説します。


差異の原因を現場と共有する
算出した差異の数値は、数値そのものだけでは現場で何が起きているかまではわかりません。
直接材料費の数量差異が不利と出た場合でも、背景には次のようにいくつかの要因が考えられます。

  • 材料の品質不良による歩留まりの悪化
  • 機械の不調や設定ミス
  • 作業者の習熟不足による廃棄ロス
原因がわかれば、調達先の見直しや作業手順の改定といった対策につなげられますが、そのためには現場のデータとの照合やヒアリングが必要です。

このように、差異分析を経理の中だけで終わらせず、現場に返して改善につなげることが、コスト削減につながります。


標準原価を定期的に見直す
一度設定した標準原価を長期間そのままにすると、現在の物価や生産能率と乖離し、実態を反映しない差異が発生しやすくなります。
例えば、材料価格が大きく上がっているのに古い標準単価のまま計算を続ければ、調達部門がコスト削減に取り組んでも不利差異が出続け、適切な評価ができません。
そこで、次のようなタイミングでは標準原価の見直しを行います。

  • 原材料や外注費の価格が大きく動いたとき
  • 新しい設備の導入や工程の変更で生産効率が変わったとき
  • 実際原価との差異が毎月同じ方向に出続けているとき
差異の数字を信頼できる状態に保つには、標準そのものを定期的に点検する習慣が欠かせません。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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標準原価計算は、標準原価と実際原価の差異を分析し、コスト改善につなげるための手法です。
差異を算出するだけで終わらせず、現場と連携して原因を分析し、具体的な改善策につなげることが重要です。
また、実態との乖離を防ぐためには、標準原価そのものを定期的に見直す必要があります。
差異分析を日々の原価管理に活かし、コストのムダや改善点を見つけるきっかけにしてみてください。

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