この記事のポイント
- 少額なリース資産とは、新リース会計基準においてオンバランス化の例外として簡便処理が認められるリース資産であり、代表的な判定方法として300万円基準と新品時5,000米ドル基準がある。
- 300万円基準はリース契約1件当たりのリース料総額、5,000米ドル基準は原資産の新品時価値を基準として判定するため、自社の会計方針として採用する判定方法を定め、継続して適用することが重要である。
- 少額なリース資産に該当しないリースは使用権資産とリース負債を計上するため、2027年4月の強制適用までに判定ルールや対象契約を整理し、実務体制を整備する必要がある。
2027年4月から、新リース会計基準が強制適用されます。
原則としてすべてのリース取引がオンバランス化されますが、少額なリース資産に該当する場合は、簡便処理を適用できます。
ただし、300万円基準や5,000米ドル基準など判定方法には複数の考え方があり、会計処理や実務負担にも影響します。
本記事では、少額リース資産の判定基準や会計処理、実務上のポイントをわかりやすく解説します。
新リース会計基準における少額なリース資産の判定と根拠
2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から、新リース会計基準「企業会計基準第34号」が強制適用されます。
上場企業をはじめ、日本基準による財務報告を行う企業では、新基準への対応が必要になります。
新リース会計基準の特徴
新リース会計基準の最大の変更点は、借手側でファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分がなくなることです。
短期リースや少額リースなどの一部を除き、原則としてすべてのリース取引について、使用権資産(借りた資産を使用する権利)とリース負債(リース料を支払う義務)を貸借対照表に計上する必要があります。
このように、リース取引を貸借対照表に資産と負債として計上することを「オンバランス化」といいます。
※関連記事:新リース会計基準が2027年から強制適用!会計処理と税務処理のズレに要注意
少額なリース資産の簡便処理
すべてのリースをオンバランス化すると、経理担当者の負担は大きくなります。
そこで、新基準でも「少額なリース資産」については、現行基準と同様に、資産計上せず賃借料として費用処理できる簡便的な取り扱いが設けられています。
この簡便処理を適切に活用できるかどうかで、新基準適用後の経理業務の負担は大きく変わります。
2027年4月1日以降開始される事業年度から強制適用
新リース会計基準
そもそもリース会計基準とは何か、何が現行基準から改正されたのか、対象となる企業や企業への影響、対策方法についてご紹介いたします。
少額なリース資産の判定方法
少額なリース資産には複数の判定方法があります。
企業は会計方針として採用する判定方法を定め、一度選択した方法は首尾一貫して適用する必要があります。
以下は代表的な判定方法です。
リース契約1件当たりの金額による基準(300万円基準)
現行基準から形を変えて引き継がれているのが「300万円基準」です。
企業会計基準適用指針第16号では、「企業の事業内容に照らして重要性が乏しいリース取引」で、「リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下」である場合を、少額なリース資産の簡便処理の対象としています。
この考え方は、新リース会計基準でも企業会計基準適用指針第33号22項に引き継がれています。
リースの重要性
この基準では、事業内容に照らして「そのリースに重要性があるか」という評価が重要です。
判定の単位は原則としてリース契約ごとになります。
例えば、同じ台数のパソコンを借りる場合でも、1つの契約にまとめている場合と複数の契約になっている場合とでは、リース契約1件当たりの金額が異なり、判定結果が変わることがあります。
300万円に近い契約については、契約単位を正確に把握して判定することが重要です。
※出典:企業会計基準委員会「企業会計基準適用指針第 16 号リース取引に関する会計基準の適用指針」
企業会計基準委員会「企業会計基準適⽤指針第 33号 リースに関する会計基準の適⽤指針」
新品時の原資産価値による基準(5,000米ドル基準)
IFRS第16号の考え方を踏まえ、新品時の原資産価値がおおむね5,000米ドル以下程度の原資産を対象とした判定方法です。
「事業内容に照らした重要性」の評価は不要で、判定は契約単位ではなく、原資産ごとの新品時の価値を基準に行います。
「原資産」とは単独で使用できる資産をいい、例えば、パソコン1台や車1台です。
この基準では、契約単位ではなく新品時の原資産価値が判定のポイントとなります。
金額基準の選択とリース料総額の考え方
簡便処理の判定方法は自社のリース契約の傾向を踏まえて選択することが重要です。
|
300万円基準 |
5,000米ドル基準 |
| 判断ポイント |
リース契約1件当たりの金額 |
原資産ごとの新品時の価値 |
| 想定されるケース |
少額な機器を一括契約で借りるケースなど |
パソコンなど比較的少額な資産を多数利用するケースなど |
少額なリース資産の会計処理
少額なリース資産と判断されるかされないかでは、会計処理が大きく異なります。
たとえ同程度のリース取引であっても、少額なリース資産になるかどうかの判定結果次第で、仕訳の手間はまったく違うものになるため、リース契約段階での慎重な見極めがそのあとの業務量を左右します。
少額なリース資産の簡便処理が認められる場合
少額なリース資産として簡便処理を選択した場合は、通常の賃貸借取引に準じて、毎月のリース料を賃借料などの勘定科目で費用計上します。
リース料を支払った場合の仕訳は以下の通りです。
例:ノートパソコンのリースについて
- 月額リース料:83,000円
- 契約期間:36カ月
- リース料総額:298.8万円
- 300万円基準を満たす契約
| 借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
| 賃借料 |
83,000 |
現金 |
83,000 |
少額なリース資産の簡便処理が認められない場合
金額基準を満たさず、簡便処理を使えない場合は、資産と負債を両建てで計上する必要があります。
その場合の仕訳は以下の通りです。
例:大型の社用車のリースについて
- 月額リース料:90,278円
- 契約期間:6年
- リース料総額:650万円
- 現在価値:600万円
| 借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
| 使用権資産 |
6,000,000 |
リース負債 |
6,000,000 |
旧会計基準では、リース資産・リース債務とも呼ばれていましたが、新基準では、「使用権資産」、「リース負債」という名称がよく用いられます。
使用権資産は、リース負債の計上額に、開始日までに支払ったリース料や付随費用などを加減して算定します。
また、リース負債は、原則として、リース開始日時点の未払リース料から利息相当額を控除した現在価値で算定します。
リース料の支払い
期中にはリース料を支払いますが、リース料には、リース負債の元本返済分と利息部分が含まれていますので、それぞれ分けて処理し、支払った分の債務が減少します。
先ほどの例と同様の条件で利率等を考慮し、初回支払時の利息部分を13,348円とした場合、仕訳は以下の通りです。
| 借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
| リース負債 |
76,930 |
現金預金 |
90,278 |
| 利息費用 |
13,348 |
|
|
決算時
決算時点では、通常の固定資産と同様に、使用権資産について減価償却費を計上します。
先ほどの例と同様の条件で減価償却費(72カ月の均等償却)を計上した場合、仕訳は以下の通りです。
| 借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
| 減価償却費 |
83,333 |
減価償却累計額 |
83,333 |
2027年4月1日以降開始される事業年度から強制適用
新リース会計基準
そもそもリース会計基準とは何か、何が現行基準から改正されたのか、対象となる企業や企業への影響、対策方法についてご紹介いたします。
新リース会計基準適用に向けて2027年までにやるべきこと
ここからは、新リース会計基準適用に向けて準備しておくことを解説します。
300万円基準は対象期間やリース料の範囲にも注意
300万円基準を適用する場合、リース契約1件当たりの金額は、原則として借手のリース期間を対象に算定します。
ただし、実務上の負担に配慮し、借手のリース期間に代えて契約期間を用いることも認められています。
また、リース料に維持管理費用や保守サービスの対価が含まれている場合には、その合理的な見積額を控除して判定できる場合があります。
自社が採用する判定方法や対象期間、維持管理費用の取り扱いなどをあらかじめ整理し、継続的に適用できる体制を整えておきましょう。
財務指標への影響を確認しておく
少額なリース資産に該当しないと判定された契約は、新基準適用後は原則として資産計上(オンバランス化)されるため、貸借対照表上の総資産・総負債が一気に増加します。
その結果、自己資本比率や総資産利益率(ROA)といった指標が急激に悪化する可能性があり、投資家や金融機関への説明が必要になる場合があります。
そのため、判定を正確に行えるかどうかは、財務諸表や財務指標の算定結果に影響します。
本来オンバランスすべき契約を誤って簡便処理すると資産・負債の計上漏れとなり、逆に必要以上に厳しく判定すれば、仕訳業務が増えます。
したがって、リース契約が多くある企業では、少額なリース資産の判定が経理の実務負担にも大きな影響があることを踏まえて、事前に検討対象となるリース契約を洗い出しておく必要があります。
※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
2027年4月1日以降開始される事業年度から強制適用
新リース会計基準
そもそもリース会計基準とは何か、何が現行基準から改正されたのか、対象となる企業や企業への影響、対策方法についてご紹介いたします。
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新リース会計基準では、少額なリース資産に該当するかどうかによって、会計処理や実務負担が大きく変わります。
300万円基準と5,000米ドル基準の違いを理解し、自社に適した判定方法を選択したうえで、継続的に適用できる運用体制を整えておくことが重要です。
2027年4月の新リース会計基準適用までに、少額なリース資産の判定方法や運用ルールを整理しておきましょう。