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経理/財務公認会計士の仕事術 最終更新日:2026/07/09

第88回 比較分析のいろいろ(28) ~中小企業実態基本調査の売上高階級別B/Sの分析(その2)

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前回に続き、中小企業庁が毎年実施している「中小企業実態基本調査」についてお送りいたします。長く続いてきた本シリーズも今回で最終回になります。今回は「売上高階級別B/Sの分析」についてご説明いたします。

1.はじめに

本連載では現在、「中小企業実態基本調査」(中小企業庁)の活用法を取り上げていますが、前回と今回で中小企業のB/S項目の構成比について売上高階級別分析を進めています。

2.中小企業のB/S項目の構成比を売上高階級別に見てみよう(その2)

中小企業の売上高階級別B/Sの構成比(2022年度決算実績)は【図表1】のとおりとなっています。
【図表1】中小企業の売上高階級別B/Sの構成比(2022年度決算実績)(前回と同じ)
売上高階級 流動資産 固定資産 流動負債 固定負債 純資産 資産額
割合
企業数
割合
全売上高階級の平均 54% 46% 28% 30% 42% 100% 100%
500万円以下 52% 48% 55% 52% △7% 0% 6%
500万円超~1千万円 32% 68% 34% 37% 29% 1% 7%
1千万円超~3千万円 37% 63% 28% 53% 19% 2% 19%
3千万円超~5千万円 40% 60% 22% 48% 30% 2% 12%
5千万円超~1億円 46% 54% 20% 44% 36% 5% 17%
1億円超~5億円 51% 49% 20% 38% 42% 20% 27%
5億円超~10億円 54% 46% 26% 32% 42% 11% 6%
10億円超 57% 43% 32% 24% 44% 59% 6%
(注)1.中小企業実態基本調査(令和4年度(2022年度)決算実績)の「2.資産及び負債・純資産(法人企業)-(4)産業別・売上高階級別表」のExcelファイルを加工の上、筆者が作成。資産合計を100としたときの各B/S項目の割合を計算した(以下の各表も同様)。
2.「資産額割合」欄は全売上高階級の資産総額を100としたときの、各売上高階級の資産総額の割合を計算した。また、「企業数割合」欄は全売上高階級の母集団企業数を100としたときの、各売上高階級の母集団企業数の割合を計算した。
前回は、「(1)純資産の構成比の分析」と「(2)負債(流動負債・固定負債)の構成比の分析」を実施しました。以下では、「(3)資産(流動資産・固定資産)の構成比の分析」を進めていきます。
(3)資産(流動資産・固定資産)の構成比の分析
【図表1】の資産額割合を見ると、「10億円超」の階級が全体の59%を占めており、資産の多くの部分がこの階級に集中していることが分かります。一方で、企業数割合では「10億円超」の階級は全体の6%に過ぎません。これは、大企業が少数でありながらも、資産を多く保有していることを示しています。
次に、流動資産と固定資産の構成比を全売上高階級の平均で見ると、流動資産が54%、固定資産が46%となっています。そして、売上高階級別に見ると、概ね売上高階級が低くなるほど、流動資産の構成比が下がる(固定資産の構成比が上がる)傾向が認められます(ただし、「500万円以下」の階級だけは該当していません)。流動資産の割合が高い企業は、資金繰りが良好である可能性が比較的高いと考えられます。特に「10億円超」の階級では流動資産が57%と高く、短期的な資金需要に対応できる体制が整っているものと考えられます。
一方で、固定資産の割合が高い企業は、資産の流動性が低く、資金繰りに課題がある可能性があります。「500万円超~1千万円」の階級では68%、「1千万円超~3千万円」の階級では63%と高く、資金調達の柔軟性に欠ける可能性があります。
さらに状況を探るため、以下、「①流動資産」と「②固定資産」の主要項目別内訳を見ていくことにします。
①流動資産
中小企業の売上高階級別B/Sのうち、流動資産の主要内訳項目別の構成比(2022年度決算実績)を算出して見ると、【図表4】のとおりとなっています。
【図表4】中小企業の売上高階級別B/S(流動資産の内訳)の構成比(2022年度決算実績)
売上高階級 流動資産 うち
現金預金
うち
売上債権
うち
棚卸資産
全売上高階級の平均 54% 24% 13% 9%
500万円以下 52% 29% 6% 4%
500万円超~1千万円 32% 23% 3% 4%
1千万円超~3千万円 37% 22% 4% 4%
3千万円超~5干万円 40% 24% 6% 5%
5千万円超~1億円 46% 28% 7% 5%
1億円超~5億円 51% 29% 9% 6%
5億円超~10億円 54% 27% 11% 9%
10億円超 57% 22% 15% 10%
【図表4】に掲げた流動資産の主要勘定別の内訳を見ると、概ね売上高階級が低くなるほど、売上債権や棚卸資産の構成比が下がる傾向が見られます。特に売上債権はその傾向が顕著であり、これが主たる要因となっているようです。売上高階級が低いほど、保有しておく棚卸資産も少なく、取引規模が小さいため売上債権の発生も少ないことが想定されます。また、規模の小さい企業では掛売上よりも現金売上が多いといったこともあるかもしれません。
なお、流動資産のうち最も構成比が高いのは、いずれの売上高階級でも現金預金であり、全売上高階級の平均では24%で、売上高階級別に見ても22%~29%の範囲に分布しています。資金繰りの安全性等を考えると、どの売上高階級でもこの程度の現金預金は保有しておく必要があるということなのかもしれません。
②固定資産
中小企業の売上高階級別B/Sのうち、固定資産の主要内訳項目別の構成比(2022年度決算実績)を算出したところ、【図表5】のとおりとなっています。全売上高階級の平均で見ると、固定資産の構成比は46%(流動資産の構成比は54%)となっています。概ね売上高階級が低くなるほど、固定資産の構成比が上がる傾向が見られます(ただし、「500万円以下」の階級だけは該当していません)。その理由を探るため、以下、固定資産の主要項目別内訳を見ていくことにします。
【図表5】中小企業の売上高階級別B/S(固定資産の内訳)の構成比(2022年度決算実績)
売上高階級 固定資産 うち有形固定 うち
投資等
有形固定
うち
建物等
うち
土地
全売上高階級の平均 46% 33% 13% 16% 12%
500万円以下 48% 33% 14% 15% 11%
500万円超~1千万円 68% 38% 19% 20% 29%
1千万円超~3千万円 63% 48% 21% 24% 13%
3千万円超~5千万円 60% 41% 17% 21% 18%
5千万円超~1億円 54% 41% 19% 19% 13%
1億円超~5億円 49% 36% 15% 17% 12%
5億円超~10億円 46% 34% 12% 18% 11%
10億円超 43% 30% 12% 14% 12%
【図表5】を見ると、概ね売上高階級が低くなるほど、有形固定資産、その内訳である建物等、土地、それぞれの構成比が上がる傾向がある程度認められます。これらの資産は売上高が増えるのに比例して残高が増えるものではないが、売上高が低くても最低限のものは保有しているということかもしれません。
なお、固定資産のうち最も構成比が高いのは、いずれの売上高階級でも有形固定資産であり、概ね固定資産の3分の2ほどが有形固定資産となっています。次いで構成比が高いのは、投資その他の資産(投資等)であり、概ね固定資産の3分の1ほどが投資等となっています。なお、無形固定資産の構成比は、全売上高階級の平均で1%(売上高階級別では0%~3%の範囲)に留まっています。
投資等の構成比について、「500万円超~1千万円」の階級だけ 29%と突出して高くなっていることが分かります。業種別に見たところ、主として「不動産業、物品賃貸業」が影響していることが分かりました。ただし、「不動産業、物品賃貸業」の中でも「500万円超~1千万円」の階級だけが77%と突出して高くなっていたことから、イレギュラーな事象と想定されますが、その理由までは読み取ることができませんでした。
以上見てきたように、売上高の階級によって企業のB/S項目の構成比が大きく異なることが分かります。特に売上高階級が低い方の層では全売上高階級の平均との乖離も大きくなる傾向が見られるため、自社に近い売上高階級との比較も行うなど、必要に応じて比較対象をアレンジすることが考えられます。

3.おわりに

本連載では現在、中小企業の売上高階級別B/Sの活用について取り上げており、今回は資産の内訳項目別にブレイクダウンして特徴を分析しました。
今回の分析から、売上高が高い企業ほど流動資産の構成比が高く、取引規模が大きくなると、売上債権や棚卸資産の構成比が高まっていく傾向が見られました。一方で、いずれの売上高階級でも現金預金の構成比は20%台に分布しており、資金繰りの安全性等を考えると、どの売上高階級でもこの程度の現金預金は保有しておく必要がある様子が見てとれました。
これらの結果から、中小企業のB/Sを分析する際には、売上高階級別のデータを活用することが有用であると考えられます。中小企業の経営者の方々は、自社の財務状況を売上高階級の近い同業他社と比較することで、改善点や強化すべきポイントを検討する材料とすることができるでしょう。
(注)本稿の分析は、執筆当時に公表されていた中小企業実態基本調査のデータを用いて行っています。その後、新しい年度のデータも公表されていますが、本稿では個別の数値水準そのものではなく、データをどのように読み取り、比較分析に活用するかという視点や流れをお伝えすることを意図しています。その点をご理解いただければ幸いです。
(提供:税経システム研究所)
**********

いかがでしたでしょうか。「中小企業実態基本調査」を使った「売上高階級別B/Sの分析」のご紹介でした。
これまで連載して参りました「公認会計士のすごい仕事術」シリーズは今回をもって終了とさせていただきます。これまでお伝えしてきたことが、少しでも読者の皆様の実務上の参考になれば幸いです。
なお、このコラムの提供元である税経システム研究所については下記をご参照ください。

税経システム研究所
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