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経理/財務税務(税金・節税) 最終更新日:2026/05/12

シンガポール税務、GSTのInvoiceNow義務化で何が変わる?導入の段階と日系企業の次の一手【2026年最新】

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アイコンこの記事のポイント
  • InvoiceNowとは、Peppol仕様に準拠したシンガポールのeインボイスネットワークで、デジタルインボイスの送受信に対応しており、GST実務では一定のGST登録事業者に段階的な義務化が進められている。
  • InvoiceNowの義務化は2025年以降段階的に拡大し、2028年4月以降は新規GST登録義務者を対象に適用され、2031年までに既存事業者にも売上規模に応じて展開される。
  • 対応の本質はシステム導入にとどまらず、会計・税務連携基盤の整備や経理フロー再設計を含む全社的な業務プロセス改革である。

シンガポールでビジネスを展開する日系企業にとって、シンガポール税制への対応は重要な経営課題の一つであり、とりわけGST実務はデジタル化の進展により大きな転換期を迎えています。
その中心にあるのが、電子インボイスネットワーク「InvoiceNow」の段階的な導入です。
近年、対応が求められる企業が順次拡大しているため、制度概要と適用スケジュールを正確に把握しておく必要があります。
本記事では、シンガポールの税制およびGSTの基本から、InvoiceNow導入の全体像、実務対応のポイントまでを解説します。

シンガポールの税制とGSTの仕組み

シンガポールはアジアのビジネスハブとして知られており、企業誘致を意識したシンプルな税制が特徴です。
法人税率は17%と世界的にも低い水準にあり、各種優遇措置を考慮すると実効税率はさらに低くなるケースもあります。
個人所得税の最高税率は24%で、日本の最大55%と比較して低水準にあり、給与に対する毎月の源泉徴収制度も設けられていません。


GSTとは
日本の消費税に相当するGST(Goods and Services Tax:財・サービス税)は、1994年に導入されたシンガポールの間接税です。
税率は2022年まで7%でしたが、2023年に8%、2024年に9%へと段階的に引き上げられました。
日本と異なり軽減税率はなく、原則として単一税率が適用されています。


GSTの仕組み
シンガポールのGSTは、最終消費者が負担する税金を事業者が代わりに納付する間接税です。
GST登録事業者は、売上時に顧客から徴収したGST(Output GST)から、仕入や費用に含まれるGST(Input GST)を差し引いた純額を、IRAS(Inland Revenue Authority of Singapore:内国歳入庁)へ申告・納付します。
Input GSTが上回る場合には還付を受けることも可能です。

シンガポールのGSTと日本の消費税はともにインボイスに基づく税額控除の仕組みとなっており、要件を満たしたインボイスに記載された税額のみが控除の対象となります。
ただし、日本では適格請求書発行事業者への登録は選択制ですが、シンガポールでは年間課税売上高100万SGD(シンガポールドル)を超えた事業者には登録が義務付けられています。

また、GSTの申告・納付は原則として四半期ごとに行われます。
課税対象は、シンガポール国内における課税取引(財貨・サービスの提供)および輸入取引ですが、輸出取引や国外向けサービスなどについては、GSTは実質的に課されません。
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シンガポールGSTのInvoiceNow義務化の概要とスケジュール

シンガポールでは、GSTのデジタル化の一環として、InvoiceNowを活用したインボイスデータ連携が段階的に導入されています。
対象事業者や適用時期が順次拡大されているため、制度の概要とスケジュールを把握しておくことが重要です。


InvoiceNowとは
InvoiceNow(インボイスナウ)とは、2019年に導入されたシンガポールにおけるeインボイスの情報通信ネットワークであり、Peppol仕様に準拠したデジタルインボイスの送受信に対応した仕組みです。
一定のGST登録事業者は、InvoiceNowの仕組みを活用して、インボイスデータをIRASに送信することが段階的に求められています。
この制度の目的は、インボイス処理のデジタル化による業務効率化に加え、業務プロセスの自動化、コスト削減、不正なGST還付の抑止、還付手続の迅速化などにあります。
なお、InvoiceNowはIRASへのデータ連携に活用される場合がありますが、段階的な導入であり、GST申告書の提出は引き続き必要です。


eインボイスとデジタルインボイス
eインボイスとは
eインボイス(Electronic Invoice)とは、電子形式でやり取りされる請求書全般を指します。
PDFやExcel形式の請求書も含まれる広い概念です。

デジタルインボイスとは
デジタルインボイスとは、標準化・構造化された規格に基づき、請求書データを機械的に処理できる形式でやり取りされる請求書を指します。
国際的には、Peppol(Pan-European Public Procurement Online:ペポル)が標準フォーマットとして広く利用されており、シンガポールのInvoiceNowもこのPeppol仕様に基づいて構築されています。
会計システム同士がネットワークを通じて接続され、XML形式などの構造化データを直接やり取りすることで、請求書の作成・送信・受領から会計システムへの取り込みまでのプロセスを自動化することが可能です。
なお、PDFやWordファイルで作成された請求書や、紙の請求書をスキャンした画像データは、構造化されたデータ形式ではないため、デジタルインボイスには該当しません。

※関連記事:請求処理の課題、後回しにしていない?デジタルインボイスで効率化を!


InvoiceNowの義務化スケジュール
2026年現在、GST登録事業者については、以下の通り段階的にInvoiceNowを活用したインボイスデータの送信が求められる予定です。
対象事業者 適用開始日
(記載日以降)
設立日から6カ月以内に自主的にGST登録を行った事業者 2025年11月1日
新たに任意でGST登録を行う既存事業者 2026年4月1日
すべての新規のGST登録義務者 2028年4月1日
合計年間売上高200,000SGD以下の既存GST登録事業者
合計年間売上高200,000SGD超〜
1,000,000SGD以下の既存GST登録事業者
2029年4月1日
合計年間売上高1,000,000SGD超〜
4,000,000SGD以下の既存GST登録事業者
2030年4月1日
合計年間売上高4,000,000SGD超の既存GST登録事業者 2031年4月1日
※合計年間売上高は、暦年中に終了する会計期間における、GSTの課税売上高・免税売上高・非課税売上高の合計額です。
※参考資料:IRAS「GST InvoiceNow Requirement


2028年4月以降は、新規のGST登録義務者についてInvoiceNowの利用が義務付けられる点に特に注意が必要です。
また、要件の詳細については、今後シンガポール政府が公表するe-Taxガイドなどで補足される予定であるため、最新情報を継続的に確認することが重要です。
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日系企業が取るべき実務対応のポイント

シンガポールにおけるInvoiceNowの導入およびGST制度との連携強化は、現地法人を有する企業に限らず、シンガポールと取引関係を持つ日本企業にも影響を及ぼす可能性があります。
特に、シンガポールに子会社や支店を有する企業、現地でGST登録を行っている企業、あるいは今後進出を検討している企業にとっては、制度の動向を踏まえた対応が不可欠です。
こうした環境変化に対応するためには、単なるシステム対応にとどまらず、グローバル全体での業務プロセスやガバナンスの見直しが求められます。
以下では、日系企業が実務上押さえておくべき対応のポイントについて整理します。


グローバルな視点で全社的な対応を進める
デジタルインボイスへの対応は、単なるシステム導入にとどまるものではありません。
本記事で解説したような各国の法令に個別対応するだけでなく、可能な限り全社共通で利用できる請求書管理基盤の構築を検討することが重要です。

会計・税務システムと連携可能なプラットフォームを選定する
請求書業務に特化したシステムにとどまらず、会計・税務システムと連携可能なプラットフォームを選定することで、業務効率と統制の両面でメリットが期待できます。対応が遅れると、適切なインボイスの発行ができず、取引やキャッシュフローに支障をきたすおそれがあるため注意が必要です。

共通プラットフォームの導入を進める
海外子会社に対応を委ねた結果、拠点ごとに運用がばらつき、意図せず現地の税務コンプライアンス違反に至るケースも少なくありません。
こうしたリスクを回避するためには、日本本社や地域統括会社が主導して対応状況を把握し、共通プラットフォームの導入を進めることが有効です。
これにより、業務効率化とガバナンス強化の両立が図れます。


システム対応と経理フローを見直す
InvoiceNowへの対応では、システム導入だけでなく、経理フローや社内業務の見直しが不可欠です。
データ連携を前提とした業務プロセスや統制の整備が重要となります。

IMDAの認定リストの確認
シンガポールのGST対応においては、まず現地法人が利用しているシステムが、IMDA(Infocomm Media Development Authority:シンガポール情報通信メディア開発庁)の認定リスト(InvoiceNow-Ready Solution Providers)に掲載されているかを確認することが重要です。

※参考資料:IMDA「InvoiceNow-Ready Solution Providers(IRSP)一覧

社内フローの整備
システム対応と並行して、社内フローの整備も不可欠です。
InvoiceNowの導入によりインボイスデータの連携が進むことで、取引情報の正確性や統制の重要性はこれまで以上に高まります。
そのため、送信前の確認プロセスや承認フローの見直しが求められます。

マスターデータの管理方法や請求書の発行・受領プロセス全体の再設計
新たなインボイスシステムの導入にあたっては、マスターデータの管理方法や請求書の発行・受領プロセス全体を再設計する必要があります。
自社が義務化の対象となる前に、システムベンダーや税務専門家と連携し、対応方針を具体化しておくことが重要です。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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GSTのInvoiceNow義務化は、新スケジュール公表により既存のGST登録事業者にも順次適用が拡大されます。
対応期限に余裕があるうちに、GST登録の要否の確認、インボイス・会計システムの選定、経理フローの整備などについて、日本本社や地域統括会社が主体となって計画的に進めることが重要です。

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