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経理/財務税務(税金・節税) 2026/02/17

移転価格税制は中小企業でも要注意!税務調査で指摘されやすい取引と今すぐ確認したい実務対応

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移転価格税制は、大企業だけの問題と思われがちですが、近年では中堅・中小企業であっても税務調査で指摘を受けるケースが増えています。
製品の販売価格だけでなく、ロイヤルティや役務提供、グループ内ローンなど、国外関連者との取引は幅広く対象となるため、自社では意識していなかった取引がリスクとなることも少なくありません。
本記事では、移転価格税制の基本的な仕組みから、問題となりやすい取引類型、企業が押さえるべき実務上のポイントまでをわかりやすく解説します。

移転価格税制とは?制度の目的と基本的な仕組み

移転価格税制とは、海外の関連企業との取引について、第三者との通常の取引と同じ水準の価格で行われているかを検証し、必要に応じて課税所得を調整するための制度です。
税務調査の結果、国外関連者との取引価格が、第三者との通常の取引であれば成立しない水準であると判断された場合には、移転価格税制に基づいて取引価格が引き直され、移転価格課税が行われる可能性があります。


移転価格税制の背景
このような制度が設けられている背景には、関連会社間の取引では、第三者との取引に比べて価格を自由に設定しやすいという事情があります。
「グループ内の取引だから」という理由から、契約条件や価格の根拠を厳密に定めないまま取引が継続され、取引価格が市場の実態とかけ離れていても問題が表面化しにくいという課題があるのです。
例えば、本来であれば120円で販売できる製品を海外子会社に100円で販売した場合、日本法人では本来得られるはずだった20円分の利益が計上されません。
その一方で、海外子会社では仕入価格が低く抑えられるため、その20円分の利益が海外側で計上されることになります。
このような取引を通じて利益が国外に移転すると、日本で課税される所得が減少することになります。
移転価格税制は、こうした取引価格を通じた利益移転により、国内の課税所得が不当に圧縮されることを防止するために設けられています。
なお、この制度では、企業に租税回避の意図があったかどうかは問われず、結果として取引価格が不適切と判断されれば、課税調整の対象となります。


移転価格税制の対象者
移転価格税制は、企業規模にかかわらず、国外の関連企業との間で一定の要件を満たす取引を行っているすべての法人に適用される可能性があります。
ここでいう「国外関連者」とは、日本法人が株式等の50%以上を直接または間接に保有している外国法人のほか、出資比率にかかわらず、経営や意思決定に実質的な影響力を及ぼしている外国法人を指します。
これは海外子会社の典型でもあるため、海外子会社を持つ法人は、自社の取引が移転価格税制の対象となる可能性があることを前提に、取引内容や価格設定の妥当性について検討しておく必要があります。


移転価格税制の適用範囲
移転価格税制の対象となるのは、国外関連者との取引のうち、第三者との通常の取引と比べて、法人が受け取る対価が不当に低い、または国外関連者に支払う対価が不当に高い取引です。
国外関連取引とは、国外関連者との間で行う資産の販売、資産の購入、役務の提供などの取引をいいます。
棚卸資産などの有形資産取引だけでなく、技術使用料や商標使用料といった無形資産取引、役務提供、グループ内ローンや債務保証といった金融取引も含まれます。
このため、後述する文書化義務には一定の基準が設けられているものの、文書化が不要な場合であっても、国外関連者との間で発生する取引価格は、原則として移転価格税制の対象となります。
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独立企業間価格の算定方法

独立企業間価格とは、国外関連者との取引について、同様の条件下で資本関係のない第三者同士が取引を行った場合に成立すると考えられる価格をいいます。
つまり、第三者との通常の取引で採用される、本来あるべき価格のことです。


基本三法
移転価格税制では、関係会社間で行われた取引について、取引価格を独立企業間価格の算定方法に基づいて引き直し、所得の再計算が行われます。そのため、独立企業間価格の算定方法を理解しておくことは非常に重要です。
独立企業間価格の算定方法にはいくつかの種類がありますが、ここでは OECD 移転価格ガイドラインで示されている方法のうち、実務上基本となる「基本三法」について解説します。
基本三法とは、独立価格比準法(CUP法)、再販売価格基準法(RP法)、原価基準法(CP法)の3つです。

独立価格比準法(CUP法)
独立価格比準法(CUP法)は、国外関連者との取引価格と、比較対象となる第三者との取引価格を直接比較する方法です。
例えば、日本の親会社が海外子会社に販売している製品と同一の製品を、独立した第三者にも販売している場合、その第三者への販売価格を基準として、独立企業間価格を算定します。

再販売価格基準法(RP法)
再販売価格基準法(RP法)は、国外関連者が第三者に対して資産を再販売する際の販売価格から、通常得られると考えられる利潤を差し引いて、独立企業間価格を算定する方法です。
主に、販売機能を担う会社が関与する取引に用いられます。

原価基準法(CP法)
原価基準法(CP法)は、資産の取得原価や役務提供に要した原価に、通常の利潤を加算して独立企業間価格を算定する方法です。
製造原価やサービス提供コストに、適正な利益率を上乗せした金額が、独立企業間価格となります。


その他の算定方法
基本三法は、取引価格そのものを直接比較できるため客観性が高い方法です。
一方で、同様の条件で比較できる取引を見つけることが難しいケースも多く、実務では基本三法に代えて、取引単位営業利益法(TNMM)が用いられることも少なくありません。

取引単位営業利益法(TNMM)
取引単位営業利益法(TNMM)は、国外関連取引から得られる営業利益の水準を、類似した機能やリスクを有する第三者企業の営業利益水準と比較する方法です。
公開されている企業の財務データベースを活用して比較が可能であるため、比較対象を見つけやすく、実務上採用されることの多い算定方法です。


算定方法の比較
独立企業間価格の算定方法には、特定の優先順位が設けられているわけではありません。
取引の内容や実態を踏まえ、その取引に最も適した方法を選択することが認められています。

算定方法 概要
独立価格比準法(CUP法) 比較対象となる第三者間取引の価格と直接比較して算定
再販売価格基準法(RP法) 再販売価格から通常の利益を差し引いて算定
原価基準法(CP法) 製造原価に適正な利益を加算して算定
取引単位営業利益法(TNMM) 類似する機能やリスクを有する第三者の営業利益水準と比較して算定
※参考資料:財務省「移転価格税制の概要

移転価格税制が問題となる取引

移転価格税制は、棚卸資産の売買に限らず、無形資産取引や役務提供、金融取引など、国外関連者との様々な取引が対象となります。
ここでは、実務上特に問題となりやすい取引類型を整理します。


棚卸資産の販売
移転価格税制で最も典型的な取引が、国外関連者との棚卸資産の売買です。
日本の親会社が海外子会社に対して製品や部品を販売する場合、取引価格の設定次第で、グループ内の所得配分に影響を及ぼすことになります。
例えば、国外関連者が税率の低い国に所在している場合、販売価格を低く設定すると、日本法人で計上される利益は減少し、その分、海外子会社での利益が増加します。
このような価格設定が第三者との通常の取引であれば成立しない水準であると判断されれば、日本の税務当局から移転価格課税を受けるリスクがあります。


ロイヤルティなどの無形資産や役務提供取引
無形資産取引では、製造ノウハウやブランドなどの使用に対するロイヤルティの料率や金額が検証対象となります。
例えば、日本本社が研究開発を主導し、海外法人が製品の販売のみを行っている場合、製品に関する機能やリスクは日本本社側に多く帰属すると考えられます。
このようなケースでは、海外法人から日本法人に対して、ロイヤルティなどの形で利益の一部が還元されることが想定されますが、ロイヤルティがそもそも設定されていない場合や、料率が著しく低い場合には、取引条件が第三者との通常の取引であれば成立しないものとして、税務調査で問題となる可能性があります。
同様に、役務提供取引についても、日本本社から海外子会社に対して行われる技術指導や経営支援について、適切な対価を収受しているかどうかは重要な検討ポイントとなります。
対価を徴収していなかったり、その金額が過少である場合には、実質的に海外子会社への利益供与であると認定されるおそれがあります。


グループ内貸付けや債務保証
近年、グループ内で行われる金融取引についても、税務当局の関心が高まっています。
特に、グループ内ローンにおいては、借手である海外子会社の信用力を踏まえた金利設定が求められます。
金利は、借手の信用力を定量的・定性的に評価したうえで設定する必要があり、複数の国でグループ内ローンを行う場合などは、外部の税務専門家への相談が推奨されます。
債務保証についても注意が必要です。
海外子会社が現地の金融機関から資金を借り入れる際に、日本の親会社が債務保証を行うケースは少なくありませんが、この場合も、海外子会社から適切な保証料を収受しているかどうかが検証対象となります。
保証料の算定には複数の専門的な手法が存在し、単純に同業他社の保証料水準を参考にするだけでは、不十分として問題となる可能性があります。
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移転価格税制について企業が押さえるべきポイント

移転価格税制は、ひとたび課税されると影響額が大きく、企業経営に与える影響も小さくありません。
ここでは、企業が実務上押さえておくべき重要なポイントを整理します。


税務コストの増大
移転価格課税は、一般的な税務調査と比べて影響額が大きく、指摘を受けた場合の税務コストが高額になりやすい点が特徴です。
国外関連取引は対象範囲が広く、事業の主要な取引がそのまま課税対象となるため、一度課税されると金額が大きくなりがちです。
また、移転価格税制では法人税の除斥期間が通常の5年ではなく7年となる点も、影響額が拡大する要因です。
さらに、日本で移転価格課税を受けた場合でも、相手国での課税がそのまま残り、二重課税が生じるケースがあります。
二重課税を排除するには、租税条約に基づく相互協議が必要となりますが、時間やコスト、専門的な対応が求められるため、実務上は容易ではありません。
このため、移転価格課税を受けると、結果として企業の税務コストは大きく増加することになります。


文書化対応やAPAの重要性
移転価格リスクへの対応として重要なのが、取引内容や価格算定の根拠を整理した文書の整備(文書化)です。
文書化を通じて、取引価格の妥当性を説明できる状態にしておくことは、税務調査への備えとして欠かせません。

また、移転価格リスクをより確実に排除する手段として、事前確認制度(APA)があります。
APAとは、国外関連者との取引に用いる独立企業間価格の算定方法などについて、事前に税務当局から合理性の確認を受ける制度です。確認内容に従って取引と申告を行っている限り、原則として移転価格課税を受けることはありません。
APAには、日本の税務当局のみと合意するユニラテラルAPAと、相手国の税務当局とも合意するバイラテラルAPAがあります。
特にバイラテラルAPAを取得すれば、二重課税リスクを大幅に低減できます。
一方で、申請には資料作成や当局対応が必要となるため、実務上は税務専門家の関与が推奨されます。

※関連記事:海外進出の課税リスクとは?移転価格税制からグローバル・ミニマム課税まで“必ず押さえたい税制”を紹介


中小企業での扱い
近年は、税務調査における課税対象の裾野が広がっており、中堅・中小企業であっても、移転価格が問題となるリスクは十分にあります。
前節で触れた文書化義務が免除される場合であっても、税務調査においては、独立企業間価格を算定する根拠資料の提出を求められることがあります。そのため、日頃から取引内容や価格設定の根拠を整理しておくことが重要です。
また、中国やベトナムなどのアジア諸国、アメリカ、欧州諸国の中には、移転価格税制が厳格に運用されている国・地域もあります。
進出先の国独自の考え方に基づいて課税されるケースもあるため、海外展開を行う企業は、進出先における税務リスクを事前に把握しておく必要があります。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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移転価格税制は、海外子会社との取引について、第三者との通常の取引と同じ水準の価格で行われているかを検証する制度です。
対象は有形資産に限られず、無形資産や役務提供、金融取引にも及び、中小企業であっても税務調査で指摘を受ける可能性があります。
まずは自社の国外関連取引を洗い出し、リスクの有無を確認したうえで、課題が見つかった場合には、国際税務に強い専門家へ早めに相談することが重要です。

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