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経理/財務税務(税金・節税) 2025/04/17

その為替差益、実は課税対象かも!為替差益の課税ルールを個人・法人別にスッキリ整理!

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近年、外貨建の資産・負債を保有する個人や企業が多くなる中で、為替変動に伴う為替差損益への注目が集まり、外貨預金や海外投資が身近になってきています。
今回の記事では、個人・法人それぞれの視点から、為替差損益の基本と為替差益に関する税務処理のポイントを解説します!

為替差損益の基本

売買価額や取引価額が外国の通貨で表示されている取引を外貨建取引といいます。
企業の場合は、海外からの仕入れをドル建てで支払う、海外への商品販売の売上をドル建てで受け取るといった取引が該当します。
個人の場合は、外貨預金を保有したり海外投資を行ったりする際に外国通貨を扱うケースなどがあります。
日本の会計制度では、外貨建取引を帳簿に記載する際に日本円に換算する必要があり、取引日や決算日、決済日といったタイミングごとにレートを使い分けて処理する仕組みになっています。
その結果、為替レートが変動すれば、同じ取引金額であっても最終的に円貨としての受取額や支払額が増減し、為替差損益と呼ばれる差が発生します。
為替差益とは、このような外貨建取引の際、為替レートの変動が会計上プラスに働いた結果生じる利益のことで、損益計算書上は営業外収益に計上されます。
同様に、損失のことを為替差損といいます。


為替差益が生じる例
以下の例を考えてみましょう。

例:
  • 取引時の為替レート:1ドル = 140円
  • 決済時の為替レート:1ドル = 150円
  • 海外取引先への商品販売額:1,000ドル

取引時の売上と売掛金の計上額
1,000ドル × 140円 = 140,000円

決済時の売掛金の計上額
1,000ドル × 150円 = 150,000円

売掛金が140,000円から150,000円へと増加し以下の為替差益が発生します。

150,000円 – 140,000円 = 10,000円

※関連記事:外貨建取引の仕訳はどうする?海外取引で重要な円換算をチェック!
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個人における為替差益の税務処理

個人が外貨建取引を行った際は以下のように税務処理を行います。


所得区分と確定申告
個人が外貨預金などの海外投資を行った際に生じる為替差益は、一般的には雑所得に区分されます。
ただし、個人事業主が海外との取引で売掛金や買掛金を外貨建で取り扱うなど、事業に関連して外貨建資産・負債を保有している場合は、事業所得に該当する可能性もあるため注意しましょう。
また、個人が持っている外貨預金を預入時点よりも有利な為替相場で換金すると為替差益が生じます。
為替差益は給与所得者であっても年末調整の対象とはならないため、この金額を含めた給与以外の所得(雑所得)が年間20万円を超えると確定申告が必要となります。


外貨預金や海外投資による差益
個人が保有する外貨預金については、実際にドルやユーロを円換算しない限り課税はされません。
外貨建資産・負債は含み益の段階では課税されず、実際に売却や円換算が行われたタイミングで為替差損益が確定し、雑所得などでの申告対象となるのです。
この点は法人の期末評価とは大きく異なります。
なお、外国株式を外貨建で譲渡する際、譲渡対価には譲渡損益部分と為替差益部分の両方が含まれることになりますが、個人の場合は全額を譲渡時の株式譲渡所得で処理することとされているため、別途雑所得として取り扱う必要はありません。

※参考資料:国税庁「外貨建取引による株式の譲渡による所得


損益通算の可否と注意点
外貨預金などで雑所得がマイナスになった場合でも、同じ雑所得区分でプラスの所得があれば相殺することができます。
そのため、同一年内に複数の雑所得が発生している場合は、適切に確定申告を行うことで損益通算が可能です。
ただし、給与所得や事業所得といった他の所得区分との損益通算は認められていないため注意しましょう。
特に、給与所得以外の所得が年間20万円を超える場合は、原則として自分で確定申告を行う義務があります。
差益が想定より大きくなるケースもあるため、早めに取引の記録やレート情報を整理しておくことが重要です。
なお、個人事業主の場合、外貨取引のうち事業所得に該当する部分については、事業所得として他の所得と損益通算が可能です。
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法人における為替差益の税務処理

法人が外貨建取引を行った際は以下のように税務処理を行います。


法人の為替差損益の認識
法人が外貨預金や外貨取引を行った場合は、主に取引日・決算日・決済日で為替レートを確認して為替差損益を認識します。

取引日
商品やサービスの販売・仕入れなどを外貨で行った場合、取引発生日のレートを用いて円換算を行い、売上や仕入れを計上します。
外貨預金についても取引発生日の為替レートで記帳します。

決算日
決算時に帳簿に計上されている外貨預金や外貨建の資産・負債については、原則として期末日のレートで円換算を行う必要があります。
期末の評価替えによって生じる差益・差損はたとえ未実現であっても、会計上は当期の利益・損失として計上され、税金計算にも影響することになります。

決済日
実際に入金や出金が行われたタイミングで、最終的な為替差損益が確定します。
決算で評価替えを計上した後、実際に決済が行われる時点で為替レートが変動していることは十分あり得るため、前期までに計上した差益と当期の差損益を決済日のタイミングで精算することになります。


発生時換算法・期末時換算法
法人の外貨建取引の換算方法には「発生時換算法」と「期末時換算法」の2種類があります。

発生時換算法
外貨建取引の円換算を取引発生時のレートで行い、決済時に生じた為替差損益のみを認識する方法です。
期末に未決済の外貨建債権債務については評価替えを行わないため、未実現の為替差損益は計上されません。

期末時換算法
期末時に保有する外貨建資産・負債を期末レートで再評価し、未実現の為替差損益も当期の損益として認識する方法です。

上記のうち、法人税法上で原則となる方法を法定換算方法といいますが、これは資産や負債の性質により異なります。
例えば、外貨建債権・債務、外貨預金などでは以下のように区分されます。

区分 法定換算方法
決済期限が1年以内のもの(短期) 期末時換算法
決済期限が1年超のもの(長期) 発生時換算法
ただし、法人の場合は法定換算方法とは異なる方法を選択できるケースもあります。
その場合、通貨の種類ごと、資産区分ごとに、税務署への届出が必要です。
一度届け出た換算方法は原則として3年間は継続して適用しなければならないため注意しましょう。

※参考資料:国税庁「外貨建資産等の期末換算方法等の届出


法人税申告における調整と届出
会計上、外貨建取引による為替差損益が計上されていても、それがそのまま法人税上も認められるとは限りません。
例えば、会計上は期末の評価替えで為替差損を計上しても、期末時換算法を選択していなければ税務上はこの損失が認められないため、損金不算入として別表4の加算欄での調整が必要となります。
このように、会計と税法には差異が発生するため注意しましょう。
特に取引額が大きい企業ほど差額の金額も大きくなり、会計上の利益と税務上の課税所得の差額も大きくなる可能性があります。
税務署への届出をしていない場合は法定換算方法が適用されますが、想定していた換算方法が適用されていなかったというのはよくあるケースです。
期末評価の方法一つで納税額が大きく変わる可能性があるため、制度をよく理解したうえで適用されている換算方法を確認し、場合によっては届出を行いましょう。


為替変動に備えるために必要なこと
円安・円高の振れ幅は政治情勢や金融政策などに影響され、短期間で大きく変わることも珍しくありません。
為替レートの変化は輸出入取引が多い企業の経営上大きな影響があるため、担当者には適切なリスク管理が求められます。

為替予約
為替の変動リスクを抑えるために、多くの企業が為替予約を用いています。
為替予約とは、外貨建の売掛金について、あらかじめ銀行と契約したレートで決済できる仕組みを指します。
例えば、1ドル=145円で契約しておけば、1ドルが130円に下落しても145円での決済となります。
ただし、相場が150円に上昇しても145円で決済しないといけないため、メリット・デメリットが表裏一体である点には注意が必要です。

会計システムの活用
外貨建取引の量が多いほど、為替レートの変動による差益・差損が損益や税金に与える影響は大きくなります。
外貨での債権債務管理に対応した会計システムを活用することで、為替差損益の自動計上も可能になるため、積極的に利用することをおすすめします。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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外貨建取引における為替差損益は、取引・決算・決済の各タイミングで適用される為替レートによって変動します。
税務処理は個人・法人ともに特有の論点がありますが、会計システムを活用することで期中から為替変動を把握し、想定外の納税リスクを避けられるように準備しましょう。

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