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経理/財務会計処理 2023/06/27

外貨建取引の仕訳はどうする?海外取引で重要な円換算をチェック!

近年では、インターネットの普及とともに海外取引が以前より簡単に行えるようになりました。
しかし、外貨建てで行われる海外取引の会計処理については理解しきれていない場合もあるでしょう。
今回は外貨建取引について、実務でよく目にする輸出入取引と外貨建給与を中心に解説します!

外貨建取引の概要と押さえておきたいポイント

外貨建取引とは、売買価額などの金額が外国の通貨(外貨)で表示されている取引のことです。
以下のような取引が外貨建取引にあたります。

  • 取引価格が外国通貨で表示されている物品の売買やサービスの授受
  • 決済金額が外国通貨で表示されている資金の借入や貸付け
  • 券面額が外国通貨で表示されている社債の発行
  • 外国通貨での前渡金、仮払金の支払いまたは前受金、仮受金の受入れ
ただし、外貨での取引であっても、その取引を会計帳簿に記帳する際は日本円で記載しなければならないため、換算作業を行う必要があります。


外貨建取引の円換算
外貨で表示されているものを日本円に変更することを、円換算といいます。
円換算は以下のように行います。

円換算額 = 外貨による取引金額 × 為替レート

為替レートは、同じ通貨でも複数公表されており、電信売相場(TTS)、電信買相場(TTB)、TTSとTTBの仲値(TTM)があります。
TTSは銀行が顧客へ外貨を売る時の相場、TTBは銀行が顧客から外貨を買うときの相場です。
TTMはその仲値ですので、以下の算式のように表すことができます。

TTM =(TTS + TTB)÷ 2

外貨建取引を円換算する際のレートは、原則として取引日のTTMを使う決まりとなっています。
実務の場合だと大手銀行のホームページなどで公表されているレートがよく使われますので、チェックしてみてください。
ただし、継続適用を条件に、売上などの収益や売掛金などの資産については取引日のTTB、仕入れなどの費用や買掛金などの負債については取引日のTTSを使用することも認められています。


為替差損益が生じる理由と損益計算書での表示
外貨建取引が通常の取引と異なるのは、外貨の為替レートが日々変動する点です。
そのため、外貨建売上があった場合、帳簿に記載する「外貨建売上高 × 為替レート」の金額も、売上の計上時・決算時・決済時でそれぞれ変動します。
こうした為替レートの変動が損益に与える影響を明示するために使用される勘定科目が、「為替差益・為替差損」勘定です。
決算時点で、期中に発生した為替差益と為替差損は相殺処理を行い、為替差益の残高が多い場合は損益計算書の営業外収益に、為替差損の残高が多い場合には損益計算書の営業外費用に記載します。
また、為替レートの変動で生じるリスクを回避するために、為替予約を行うこともできます。
為替予約とは、取引日時点であらかじめ決済日における円換算レートを銀行などと決めておくことです。
為替予約は、行った時点でその取引の円換算額までを銀行と予約して固定することができ、為替変動リスクを軽減させることができます。
ただし為替予約には利用条件があり、為替差損益等の取り扱いも通常とは異なりますのでご注意ください。


商品売買関連の外貨建取引での円換算方法
外貨建取引の円換算は、取引日・決算日・決済日において検討する必要があります。
一般的な外貨預金や外貨建債権債務についての換算方法は、以下の通りです。
時点 外国預金等・外貨建債権債務に使用するレート
取引時点 取引日の為替レート
決算時点 決算日の為替レート
決済時点 決済日の為替レート
※長期の外貨建金銭債権については、取得日の為替レートでの計上が認められる場合があります。
※決算時点での外貨建有価証券については上記とは処理が異なります。
※為替予約については考慮しないものとします。

【企業向け】輸出入取引が行われた場合

輸出入取引とは、海外の取引先に商品を販売したり、海外から商品を購入したりする取引のことです。
このような取引で外貨を使用した場合、円換算して帳簿に記載する必要があります。
この時、現金売上であれば取引日と決済日が同じなので、この取引から為替差損益は発生しません。
しかし、掛売上の場合は売掛金が外貨建てで計上されることになるため、その売掛金が最終的に決済されるまでの間は、為替レートの変動による影響を受けることになります。
この決済が期中に終わらず、翌期以降に行われる場合には、決算日ごとに売掛金を決算日時点でのレートで円換算する必要があるのでご注意ください。


輸出入取引の例
ここからは、輸出入取引が行われた場合に必要な処理について、具体的な例で説明していきます。

例:A社は海外の取引先に商品100ドルを輸出しました。
輸出日の為替レートは1ドル100円、決算日の為替レートは1ドル105円、決済日の為替レートは1ドル110円でした。
取引日・決算日・決済日の会計処理はどのようになるでしょうか。

売上を計上する際、売掛金は円換算すると10,000円になりますが、最終的な入金時は11,000円となり金額が変動します。
この差額1,000円は、為替レートが変動したことによって発生したものなので、為替差益を計上します。
ただし、この例では売上計上から入金までの間に決算を挟むため、決算日時点での会計処理も実施します。
決算日での為替レートでは10,500円となるため、取引日との差額500円を為替差益として計上します。
そのうえで、決済日の属する期でさらに入金時との差額500円を計上するように会計処理を行います。

取引日
借方 金額 貸方 金額
売掛金 10,000 売上 10,000
決算日
借方 金額 貸方 金額
売掛金 500 為替差益 500
決済日
借方 金額 貸方 金額
売掛金 500 為替差益 500
上記の例とは逆に、取引後に1ドルが90円代に低下し売掛金の金額が小さくなった場合は、損失が生じていることになるので為替差損を計上することになります。

【個人向け】外貨建給与の支払いが行われた場合

海外に従業員を派遣した際、現地での生活費に充てるために赴任先の国の通貨で給与の支払いを行うことがあります。
このような給与を外貨建給与といいます。
外貨建給与は、支払う企業側にとっては、特に為替変動のリスクがなく、追加の会計処理が生じることもありません。
ただし、赴任者にとっては関心の高い内容ですので、経理担当者としてはしっかりと説明できるようにしておく必要があります。

外貨建給与は支給が行われると、外貨建預金となります。
この預金を外貨のまま預けておく、もしくは使用する分には、為替変動によるリスクが生じることはありません。
しかし、日本円に換算した場合には、その預金を預け入れた日の外貨レート(給与支給日のレート)と払出日の外貨レートとの差額について為替差損益が生じることになります。
※個人の場合、期末で外貨建資産や負債を保有していても、企業のように決算日時点の為替レートに換算して為替差損益を計上する必要はありません。


海外赴任における円換算の例
外貨建給与の円換算が論点になるケースとして、海外赴任者に対して支払われる給与の円換算における具体的な例をあげてみましょう。

例:A社の従業員であるBさんはアメリカに赴任しました。
赴任期間中の給与は毎年50,000ドルをドル建てで支給される契約になっています。
赴任日の為替レートは1ドル100円でしたが、赴任日から1年経過した日の為替レートは1ドル80円になりました。
赴任1年目・2年目の給与の円換算額はいくらになるでしょうか。
給与の支給時期は、赴任日と赴任日から1年経過した日とします。

Bさんにとって、外貨建給与の金額は50,000ドルで固定です。
そのため、赴任中に米国現地での支払いに使う分には、赴任1年目でも赴任2年目でも特に為替レートの影響は受けません。
ただし、Bさんが日本円での決済に外貨建給与を使用する場合は、円換算する必要があります。

各給与の円換算額
赴任1年目の給与の円換算額 5,000,000円
赴任2年目の給与の円換算額 4,000,000円
Bさんが赴任1年目で支給を受けた外貨建給与の一部を2年目に円換算したとすると為替差損が生じることになり、赴任2年目にはBさんにとって不利な方向に為替が動いていることがわかります。
そのため、企業の担当者は、海外赴任者に対して、赴任中の外貨建給与の支払いには為替変動リスクがあることを説明する必要があるのです。
さらに、必要に応じて日本円での給与の支払いを選択肢として提供し、両者が納得できる給与の支給方法を選択できるよう話し合うことが重要になります。
※ただし、日本円での給与の場合は現地通貨に換算することによる為替変動リスクが生じることも考慮する必要があります。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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為替変動のリスクは少なくできる方が良いですが、海外取引がある場合は為替差損益の計上を避けることができません。
外貨建取引の円換算における基本の考え方をしっかりと理解したうえで実務にあたることが重要になります。

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