HOME 業務全般制度改正 公益法人会計基準改正で財務諸表の記載内容が大幅変更!混乱せず対応するには?
業務全般制度改正 2024/12/03

公益法人会計基準改正で財務諸表の記載内容が大幅変更!混乱せず対応するには?

この記事をシェアする

2025年4月から公益法人の会計基準が変わり、財務諸表などの記載内容が大きく変化します。
これに伴い、業務フローや会計システムの見直しが必要となることも予想されます。
今回の記事では、公益法人会計基準改正の要点と実務対応の注意点について整理します。

公益法人会計基準の改正経緯と改正のポイント

近年、公益法人の増加に伴い、公益法人が行う活動範囲や寄附金収入も拡大の傾向を見せています。
これにより、公益法人における財務情報の透明性と明瞭さの向上がより一層求められるようになりました。
こうした背景をもとに、2024年「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」が衆議院本会議にて可決・成立となり、2025年4月から新しい公益法人会計基準が適用されることになりました。


改正の基本方針と主要な改正ポイント
新しい会計基準で最も重要となるのは「財務諸表本表は簡素でわかりやすく、詳細情報は注記等で記載する」という基本方針です。
これにより、主に以下のような変更が行われる予定です。

  • 財務規律の柔軟化・明確化に伴う財務諸表での情報開示の充実化
  • 区分経理の実施の原則化による公益目的事業財産の可視化
  • 定期提出書類の簡素化・合理化
  • 財務諸表全体のわかりやすさの向上
この改正によって、公益法人特有の詳細な情報は注記や附属明細書で開示されることになり、財務諸表本表の記載や構造は一般企業のものと近い構成となります。
そのため、分析がしやすくなり、比較可能性や利用可能性も高まることが期待されています。
公益法人特有の会計業務を徹底サポート
公益法人向けERPシステム

一般企業とは異なる独自のルールや、煩雑な予算管理・会計処理に悩まされることが多い公益法人会計。重要な会計業務をミスなく、かつ効率的に行うには、MJSの公益法人特有の会計処理に特化したERPシステム!

詳しく見る

公益法人会計基準の具体的な変更点

新しい会計基準では、「財務規律の柔軟化・明確化に伴う財務諸表での情報開示の充実化」と「区分経理の実施の原則化」という二つの要請に応えるものとして、財務諸表をよりシンプルでわかりやすくし、詳細情報は注記で開示するという形態に変更します。
特に重要となる具体的な変更点は以下の通りです。


財務報告の目的の変更
新基準では財務報告の目的自体が再定義されます。
現行基準は行政監督のための財務規律判定を目的にしていましたが、新基準では資源提供者をはじめとする多様なステークホルダーへの情報開示を目的とすることになります。
これは、公益法人への寄附が増加する中で、提供した資金や資産が適切に使用されているかを資源提供者が確認したり、資金提供を検討している法人が対象の公益法人における財務基盤や事業実績を確認したりすることへの重要性が高まっているための変更です。
公益法人の財務諸表を閲覧する人が増えたことにより、公益法人会計に不慣れな人でも理解できる財務情報を提供する必要が出てきたといえます。


貸借対照表に関する変更
表示区分の企業会計との統一
現行基準における貸借対照表の区分は、基本財産・特定資産・その他固定資産となっていますが、この区分ではわかりにくいという課題がありました。
そのため、新基準における財務諸表の本表では一般企業の財務諸表と同様、流動資産・固定区分を表示し、基本財産・特定資産の情報は必要に応じて注記で開示することとなります。

貸借対照表内訳表の位置づけ変更
新基準では原則としてすべての公益法人に区分経理が義務付けられるため、今まで作成不要とされていた公益法人でも貸借対照表内訳表の作成が必要となります。
ただし、実務での負担が大きくなるため、従来の貸借対照表内訳表は廃止となり、注記事項として位置づけられることとなります。
新基準にて注記事項として開示する貸借対照表内訳表は、従来よりも柔軟な記載方法が認められると想定されています。


正味財産増減計算書から活動計算書への名称変更
現行基準における正味財産増減計算書は活動計算書へと名称が変更されます。
なお、公益法人の活動実態をより適切に示し、一般的な企業会計の財務知識で読み解ける財務諸表を目指すために、名称だけでなく以下のような内容の変更も行われています。

  • 一般純資産と指定純資産の区分は本表ではせず注記で表示する
  • 純資産全体の増減を経常活動区分とその他活動区分の区分で表示する
  • 費用科目を活動別分類で表示する

注記・附属明細書の情報開示の充実
新基準では、財務諸表本体がシンプルになる反面、注記による情報開示が大幅に充実化されます。
実務においては以下の注記項目における改正が重要です。

貸借対照表関係
会計区分別内訳
現行の貸借対照表内訳表に相当するもので、公益目的事業財産の現況や財産残額算定の基礎情報を示す役割があります。

資産及び負債の状況
現行の財産目録に相当する情報を提供し、使途拘束資産該当資産の表示を行います。

使途拘束資産の内訳
使途拘束資産とは、内部資金の積立てまたは外部資金提供者からの使途指定がある資源により得られた、法令に基づく控除対象財産として認められている資産のことです。
使途拘束資産の内訳は資産の形態に基づく分類を補完する情報として開示されるものとなります。

活動計算書関係
財源区分別内訳
現行基準の正味財産増減計算書における一般正味財産と指定正味財産の区分表示に代わるものとして、財源区分別の内訳情報の表示を行います。

控除対象財産(6号財産)の発生年度別残高
控除対象財産の6号財産とは、寄附など外部資金提供者が定めた使途に充てるため保有している資金のことです。
この期末残高について、発生年度別に明細を示すなどの対応が必要になります。

事業費・管理費の形態別区分
現行基準の正味財産増減計算書の形態別表示に相当する情報を注記で提供します。
活動計算書の活動別費用を補足し、費用の性質別内訳や共通費用の配賦状況を明確にするものとなります。

附属明細書に関する情報開示
附属明細書で、使途拘束資産(控除対象財産)の明細や中期的収支均衡に関する情報などが表示されることになります。
公益法人特有の会計業務を徹底サポート
公益法人向けERPシステム

一般企業とは異なる独自のルールや、煩雑な予算管理・会計処理に悩まされることが多い公益法人会計。重要な会計業務をミスなく、かつ効率的に行うには、MJSの公益法人特有の会計処理に特化したERPシステム!

詳しく見る

新基準への移行に関する実務について

新基準への移行を円滑に進めるために重要なのは、現状の会計処理の棚卸しと新体制に向けた整備です。
現行の会計処理と新基準で求められる会計処理の差異を明確にし、対応が必要な項目を洗い出す必要があるでしょう。
以下の点を重視しながら、決算前の早いタイミングで今後の対応方針を固め、対応すべき事項を明確にするとともに、スケジュールを検討する必要があります。


社内業務フローの見直し
新基準への変更は日常的な会計処理から決算業務まで、幅広い業務フローの見直しが必要となります。
特に重要なのは以下の二点です。

区分経理の徹底
日々の取引記録の段階から、適切な区分での記帳をより徹底する必要があります。
使途拘束資産の管理など、新たな対応も必要となるため、会計処理に関する情報を適切に記録・管理する仕組みが求められます。

注記情報の収集・作成体制の整備
決算業務においては、注記情報の作成プロセスが大きく変わります。
財務諸表本表の作成に加えて、注記情報の作成手順を検討し、確立する必要があるでしょう。


会計システムに関する対応
今回の改正では科目だけではなく財務諸表の基本的な構成も変化していることから、単なる機能の追加や修正ではなく、財務諸表作成の基盤となる部分の根本的な見直しが必要となるでしょう。
場合によってはシステムの設定変更だけでなく買い替えも視野に入れる必要があります。

注記情報部分への対応
これまで本表で表示していた詳細情報の多くが注記へ移行することから、新基準における注記情報の作成について検討と設定変更を行う必要があります。

勘定体系の見直し
新基準では貸借対照表や活動計算書の区分表示も変更となっていることから、勘定体系を見直し設定を変更する必要があります。

区分経理の原則化への対応
会計区分別内訳や事業区分別内訳の作成機能があると便利です。
また会計システム上で各取引を適切な区分に振り分け、必要な注記情報を自動的に作成できる機能があるとよいでしょう。


これらの対応は大がかりになることが予想されるため、全社的に周知するなど、組織全体で取り組む問題として認識することが重要です。
なお、公益法人に関する最新の法規則情報は、公益法人Informationに掲載されていますので、定期的に内容を確認するようにしてください。

※参考資料:公益法人Information

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
公益法人特有の会計業務を徹底サポート
公益法人向けERPシステム

一般企業とは異なる独自のルールや、煩雑な予算管理・会計処理に悩まされることが多い公益法人会計。重要な会計業務をミスなく、かつ効率的に行うには、MJSの公益法人特有の会計処理に特化したERPシステム!

詳しく見る
**********

2025年4月から新会計基準が適用されると、公益法人では財務諸表の作成方法が大きく変わることから、業務フローの見直しや会計システムへの対応が必須となります。
今回解説した改正のポイントを押さえつつ、早い段階から計画的な対応を進めることで、混乱を最小限に抑えることができるでしょう。

人気記事ランキング - Popular Posts -
記事カテゴリー一覧 - Categories -
関連サイト - Related Sites -

経理ドリブンの無料メルマガに登録