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人事/労務働き方改革 2024/09/10

健康経営で業績アップ?従業員の健康管理がもたらす企業への影響とは

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企業にとって従業員の健康管理は重要なものですが、これを経営戦略としてより積極的に取り入れる手法を健康経営といいます。
健康経営は、従業員の健康を守りながら、企業の生産性・競争力を高める経営手法です。
本記事では、健康経営の概要や関連する各種認定制度などについて解説します!

健康経営の定義と期待される効果

健康経営とは、企業が従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する経営手法のことです。
健康経営を実践することで、従業員の活力向上や事業の生産性向上など組織の活性化につながり、結果的に企業自体の業績向上や株価向上が見込まれるとされています。
なお、健康経営は政府も重視しており、日本再興戦略にも国民の健康寿命の延伸に関する取り組みの一つとして取り上げられています。
また、健康経営銘柄や健康経営優良法人など、健康経営に積極的な企業を選定・認定し支援する取り組みも行われています。


健康経営における具体的な取り組みの例
健康経営を実現するために、企業では以下のような取り組みが行われています。
定期健康診断の実施 従業員が定期的に健康診断を受けられる体制を作り、病気の早期発見・早期治療を可能にします。
生活習慣の改善 従業員が健康的な生活を選択できるように、健康に関する教育やプログラムを提供し、食生活、飲酒、喫煙状況などの改善を促します。
職場環境の改善 従業員の身体的・精神的健康に配慮し、労働時間の削減や業務環境の改善を行い、従業員が働きやすい環境を整えます。
これらはあくまで一例ですが、こうした取り組みによって従業員の健康を守ると同時に生産性を高めていくのが健康経営です。


健康経営がもたらす効果について
健康経営が短期的にもたらす効果として、従業員の疾病予防が挙げられます。
従業員の健康問題を未然に防ぐことで、従業員にとっては医療費の削減に、企業にとっては医療費負担の軽減につながります。
さらに、従業員の健康状態が良好になれば、仕事に対するパフォーマンスの向上も期待できます。
長期的な目線での効果については、企業のイメージアップによる採用力の向上や従業員の勤続年数の増加などが挙げられます。
健康経営に取り組む企業は、求職者にとって魅力的な職場と認識されるため、優秀な人材が集まりやすくなります。
また、従業員の健康状態が良好であれば、継続して勤務する可能性が高まります。

健康経営銘柄と健康経営優良法人

健康経営に優れた企業かどうかを判断できる仕組みとして、健康経営銘柄と健康経営優良法人があります。


健康経営銘柄
健康経営銘柄とは、東京証券取引所の上場会社のうち、健康経営に優れている企業を選定する取り組みのことです。
2024年には、26業種52社が選定されました。
健康経営銘柄として選定されるためには、例年8月から10月に実施される健康経営度調査への回答が必要です。
そのうえで一定の選定基準を満たした企業が、その年の健康経営銘柄として、業種ごとに原則1社選定されます。
また、各業種最高順位企業の平均より優れている企業については、銘柄選定候補として、1業種最大5枠まで選定されます。
健康経営銘柄に選ばれると、企業として社会的責任を果たしていることをアピールすることができます。

※参考資料:経済産業省「 健康経営銘柄選定フロー(2024年)


健康経営優良法人認定制度
健康経営優良法人認定制度とは、特に優良な健康経営を実践している企業を公表する制度です。
2024年の認定では、大規模法人部門で2,988法人、中小規模法人部門で16,733法人が認定されました。
健康経営優良法人に認定されると、以下のようなメリットがあります。

  • 社会的責任を果たす企業として認識され、企業イメージが向上する
  • 健康経営優良法人のロゴマークを使用できるようになり、取引先や求職者に対して優良企業としてのアピールができる
  • 貸付利率の引き下げや特別利率での貸付、保証料の減額など、金融機関などからのインセンティブを受けることができる
  • 国や自治体の補助金を申請する際、加点要素として考慮されることがあり、申請が受理される可能性が高まる
健康経営優良法人の認定を受けるためには、各保険者(協会けんぽや健康保険組合など)が実施している、企業の従業員の健康増進を目的とした健康宣言事業に参加する必要があります。
そのうえで、健康経営に関する具体的な取り組みを申請書に記載し、健康経営優良法人認定事務局に提出すると、審査が行われます。
なお、健康経営優良法人には認定要件があり、健康診断の実施率、健康管理の方針の策定、職場環境の改善などが含まれます。
要件を満たすためには日ごろからしっかり健康経営について実践している必要があり、長期的な取り組みが必要になる場合もあります。
ただし、健康経営優良法人は上場企業以外の企業も対象になるため、中小企業もぜひチャレンジしていただきたい認定制度です。

※参考資料:経済産業省「健康経営優良法人の申請について

健康経営優良法人の取り組み例と健康経営の推進ポイント

ここからは、健康経営に関する具体的な取り組みや留意点について確認していきます。


健康経営優良法人の取り組み例
健康経営優良法人認定事務局のホームページでは、健康経営優良法人として認定された企業が行っている、従業員の健康増進に向けた様々な取り組みを掲載しています。
その中から、どのような取り組みが健康経営の成功につながっているのかをまとめて紹介します。

中小企業での取り組み例
中小企業では、残業時間の削減や従業員の健康意識の改善に取り組む例が多く見られます。
従業員が健康問題で休職した際、休職者の業務をカバーするための負担が想定より大きかったことが健康経営に取り組む契機となった某企業では、従業員からローテーション制で健康経営のリーダーを任命し、健康経営の重要性を認識できる体制づくりを実施しました。
これにより従業員が自ら健康経営の施策に携わることができ、全社的に健康意識が向上したとのことです。
他にも、従業員への健康教育プログラムを導入したことで、健康診断の受診率や喫煙率が改善された例などが見られます。

大企業の取り組み例
大企業では、より全社的な目線での健康意識の改善や、従業員間のコミュニケーション活性化に着目した施策が行われています。
某企業グループでは、従業員の健康データを活用し個別の健康管理プログラムを作成したり、アンケート調査を通じたメンタルヘルスの早期発見・対応の体制を作ったりしています。
また、従業員のワークライフバランスを推進するために、フレックスタイムや在宅勤務など、従業員の希望に応じた勤務形態を選択できる制度を導入している企業も多いようです。

※参考資料:ACTION!健康経営(日本経済新聞社)「事例・レポート


健康経営を推進するにあたってのポイント
企業が実際に健康経営を推進するためには、以下のポイントに留意が必要です。

健康経営を経営の一環として捉えること
まずは、経営層が健康経営を経営の一環として捉えることが鍵となります。
経営者自らが健康経営の重要性を理解し、積極的に関与することで、従業員の意識も高まります。

多くの従業員の参加を促すこと
健康経営は、できる限り全社的に取り組むことが望ましく、多くの従業員が参加することで効果が上がるともいえます。
そのためには、従業員が納得できるような施策を展開することが重要です。
まずは働きやすい職場環境の整備や健康増進の推奨など、目につきやすい施策から始めるのも効果的です。
そのうえで、健康意識を向上させるプログラムなどを実施し、従業員が自分ごととして取り組む意識を醸成することが求められます。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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健康経営は、企業の成長と従業員の健康を両立させるための鍵となる重要な戦略です。 中小企業も大企業も企業規模に関わらず、先進企業の事例を参考に、自社に合った健康経営の取り組みを導入することをぜひ検討してみてください。

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