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経理/財務税務(税金・節税) 2024/04/09

中堅企業の新しい定義とは?令和6年度税制改正で変わる企業の分類をチェック!

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令和6年度税制改正は、多くの中小企業・中堅企業が抱えている経済的課題に対する解決を促し、成長を支援する内容になっています。
今回は、中小企業・中堅企業の定義を確認したうえで、賃上げ促進税制などの税制改正項目について解説します!

中小企業・中堅企業の定義と位置づけ

ビジネスの世界では様々な文脈で「中小企業」や「中堅企業」という言葉が使われています。
ここでいう中小企業と中堅企業の主な違いは市場での役割や成長の段階にあるとされており、中小企業は地域経済や特定分野などに対する小規模な事業を行っているのに対し、中堅企業はさらに成長を遂げたより広い市場や事業領域で事業を行っているというイメージが一般的です。
しかしこれまで法律上定義されていたのは中小企業のみで、中堅企業については令和6年度税制改正により初めて定義されることになります。


中小企業の定義
中小企業基本法の規定によると、中小企業は「資本金等または従業員数が一定基準以下の企業」を指すとされています。
この基準は業種により異なり、主に以下の通りとなります。
業種 以下のいずれかに該当する企業
資本金の額または出資の総額 常時使用する従業員の数
製造業 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
※参考資料:中小企業庁「中小企業基本法 第二条


中堅企業の定義
令和6年度税制改正により、大企業のうち「常時使用従業員数2,000人以下の企業」が新たに中堅企業と位置付けられることになります。
なお、この中堅企業の定義は、これまで指標の一つとして利用されてきた日本貿易振興機構(JETRO)による「直近決算の売上高が1,000億円未満または常用雇用者1,000人未満の会社」という定義とは厳密には異なるため、注意が必要です。
また、税制改正の内容は法律として公表されることにより確定するため、最終的な中堅企業の定義については、国会提出の産業競争力強化法の改正内容をご確認ください。

※参考資料:「新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案


改正後の大企業・中小企業・中堅企業の分類
令和6年度税制改正後の大企業・中小企業・中堅企業の分類は以下の通りです。
大企業 中小企業を除く、常時使用する従業員が2,000人超の企業
中堅企業 中小企業を除く、常時使用する従業員が2,000人以下の企業
中小企業 資本金または常時使用する従業員が一定基準以下の企業
※詳細は前表記載の業種ごとの分類に基づき判断します。
※参考資料:経済産業省「「新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました

【令和6年度税制改正】賃上げ促進税制改正の主要なポイント

令和6年度税制改正において、中小企業・中堅企業が注目すべきなのが「賃上げ促進税制」の改正です。
賃上げ促進税制は、企業が人材を確保しやすくすることを目的に、従業員の賃上げを支援するための税額控除について定めた制度です。
令和6年度税制改正では特に、中小企業に向けて新たに創設された「繰越控除制度」に注目が集まっています。
賃上げ促進税制では、これまで当期に税額が発生していない場合は控除が適用されませんでした。
しかし令和6年度税制改正によって控除限度超過額の繰越が可能となり、当期の税額から控除できなかった分は今後5年間にわたって繰り越して控除できるようになります。
また、教育訓練や人材投資、女性支援、子育て支援など、働きやすい職場づくりに対するインセンティブがより拡大され、その結果、中小企業も中堅企業も最大控除割合が増加することとなります。

なお、賃上げ促進税制を活用して税額控除を受けるためには、賃金の増加率を適切に計算するなど、正確な対応が必要です。
賃上げ促進税制は毎年改正があるため、改正の内容について都度理解しておくほか、必要に応じて税務専門家に相談することも重要となります。


中小企業向けの改正内容
中小企業に関する改正前後の規定内容は以下の通りとなります。
改正前 改正後
適用要件 雇用者給与等支給額が前年度より1.5%以上増加
マルチステークホルダー方針の公表 なし
控除率 給与等の増加割合 1.5%以上 15%
2.5%以上 30%
上乗せ 教育訓練費の増加

教育訓練費が前年度より10%以上増加で控除率+10%

教育訓練費が前年度より5%以上増加、かつ、教育訓練費が雇用者給与等支給額の0.05%以上で控除率+10%
女性・子育て支援 なし プラチナくるみん、プラチナえるぼし、えるぼし(3段階目)いずれかの認定で控除率+5%
最大控除率 40% 45%
控除限度額 法人税額の20%
控除限度超過額の繰越 なし 5年間の繰越可能

中堅企業向けの改正内容
改正前(大企業) 改正後
適用要件
  • 雇用者給与等支給額が前年度より増加
  • 継続雇用者給与等支給額が前年度より3%以上増加
マルチステークホルダー方針の公表 資本金10億円以上かつ常時使用する従業員1,000人以上
控除率 給与等の増加割合 3%以上 15% 10%
4%以上 25%
上乗せ 教育訓練費の増加 教育訓練費が前年度より20%以上増加で控除率+5% 教育訓練費が前年度より10%以上増加、かつ、教育訓練費が雇用者給与等支給額の0.05%以上で控除率+5%
女性・子育て支援 なし プラチナくるみん、プラチナえるぼし、えるぼし(3段階目)いずれかの認定で控除率+5%
最大控除率 30% 35%
控除限度額 法人税額の20%
控除限度超過額の繰越 なし なし
※参考資料:自民党「令和6年度税制改正大綱

【令和6年度税制改正】賃上げ税制以外の中小企業・中堅企業の特例

最後に、賃上げ促進税制以外の中小企業や中堅企業向けの税制改正について、押さえておきたい内容も紹介します。


中小企業事業再編投資損失準備金の拡充及び延長
中小企業事業再編投資損失準備金制度は、経営力向上計画の認定を受けた事業者がM&Aを実施して株式等を取得する際に、取得価額として計上する金額のうち一定額を、その事業年度に損金算入できる制度です。
令和6年度税制改正では、成長意欲のある中小企業・中堅企業を支援することを目的に、複数回のM&Aを実施する際に積立率の拡充や措置期間延長を行うことになります。
現行 改正
積立率の拡充 70% 最大100%
措置期間の延長 5年 10年
この制度によってM&Aが実施しやすくなることで、各企業はより大きな市場や新たな業種への参入が可能になり成長につながることが期待できます。


交際費等の損金不算入制度の見直し
2024年4月1日以降、交際費から除外されて損金算入可能となる飲食費の金額基準が、1人当たり5,000円以下から1万円以下に引き上げられました。
なお、飲食費が1万円を超えた場合は、企業規模によって取り扱いが異なります。
中堅企業・大企業については、資本金の額等が100億円以下の企業の場合には、接待交際費が1万円を超えてもそのうちの50%は損金算入することが可能です。
中小法人についても同様に接待交際費の50%損金算入が認められますが、ほかに、飲食費以外の交際費についても年間合計800万円まで損金算入することが可能です。
改正後の交際費課税における詳細は以下の通りです。
大企業 中小法人
100億円超 1億円超100億円以下
飲食費
(10,000円以下/人)
全額損金算入
交際費等 飲食費
(10,000円超/人)
損金算入不可 50%損金算入 50%損金算入、または年間800万まで損金算入
飲食費以外 損金算入不可 損金算入不可 年間800万まで損金算入、超えた分は損金算入不可
このほかにも、令和6年度税制改正において中小企業が対象となる改正は多々ありますので、確認してみてください。

※関連記事:令和6年度税制改正大綱で経理担当者がチェックすべき改正点とは

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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中小企業・中堅企業向けの賃上げ促進税制の改正は、積極的に賃上げや労働環境の改善を行った企業に対して、より大きな税額控除が適用できる内容になっています。
その他にも中小企業・中堅企業の経済活動や投資を後押しする税制が定められていますので、今後の成長戦略に活かしていくとよいでしょう。

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