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経営事業計画/経営計画 2023/07/04

粗利と利益の違いとは?粗利の活用法を知って事業方針を最適化!

日々の事業活動では、どうしても売上の推移に着目しがちです。
ただし、行列店が突然閉店してしまうことがあるように、売上だけを指標としていては、企業が存続できない場合があります。
そこで注目したいのが粗利です。
今回は、粗利や粗利率の概要と活用法について解説します。

粗利とは

損益計算書には売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益など多くの利益が記載されており、それぞれ少しずつ役割が異なります。
今回解説する粗利益、通称「粗利」はこのうちの売上総利益の俗称で、他の利益と比較して売上に最も近い数値となるものです。


粗利の意味と計算方法
粗利は、「本業での売上」と「その売上を獲得するために直接支払った費用」のみに着目して、その企業の大まかな利益を示した数字です。
間接的にかかる費用などは考慮しないため、最も単純で「粗い」利益であることから、一般的に「粗利」と呼ばれています。
粗利は、売上から売上原価または製造原価を差し引いて算出されます。

粗利
売上高 - 売上原価(または製造原価)

売上原価
期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高

製造原価
期首仕掛品棚卸高 + 当期総製造費用(当期の材料費・労務費・経費の合計額)- 期末仕掛品棚卸高

売上原価と製造原価の扱いは業種によって異なるものですが、どちらも商品の仕入れや製造にかかった費用を指すものです。

※小売業、製造業、またはどちらも兼ねた事業を行っている企業などにより、売上原価と製造原価をどのように捉えているかは異なりますので、ご注意ください。

粗利から把握できること

粗利から把握できることは以下の通りです。

  • 商品の売上価格が妥当か
  • 商品販売量が妥当か
  • 原価が妥当か
上記の通り、商品やサービスの売上に直接関連する情報の分析に役立ちます。
一方で把握できないことは以下の通りです。

  • 販売費及び一般管理費を含めた企業の状況
  • 上記に加えて利息などの営業外損益を含めた企業の状況
このように、売上原価以外の費用の情報については、粗利からだけでは把握することはできません。


営業利益との違い
損益計算書では、粗利の費用部分をもう少し細分化した利益として営業利益があります。
営業利益は、粗利を使うと以下の算式で算定されます。

営業利益 = 粗利 ― 販売費及び一般管理費

販売費及び一般管理費は、商品やサービスの売上に間接的にかかっている費用を含んでいます。
例えば、以下のものがあります。

  • 減価償却費
  • 広告宣伝費
  • 通信費
  • 役員報酬
  • 交際費
仮に粗利が黒字であっても、販売費及び一般管理費が多くかかってしまうと、営業利益は赤字になるという状況にもなりかねません。
その場合は、販売費及び一般管理費を削減する、売上高を増加させるなどの対策を検討する必要があります。
このように、各利益の数字から企業の状態を分析し、課題解決への糸口を見つけ出すことができます。

粗利率の計算と業種ごとの目安

他社と比較した経営状況や財政状況を把握したい時、規模の異なる企業間の場合は粗利の数値だけで判断することはできません。
そこで活用されている指標が、粗利率(売上総利益率)です。
粗利率はその企業が販売する商品やサービスの粗利が売上に占める割合を指します。


粗利率の計算
粗利率は以下の算式で計算されます。

粗利率(売上総利益率)= 粗利 ÷ 売上高 × 100

粗利率が同業種水準と比べて高い場合には事業がうまくいっている、低い場合は競争力が低下していると判断することができます。


業種ごとの粗利率
粗利率は、業種や規模によってある程度の目安があります。
一般的な平均は、飲食業で50%前後、小売業や製造業で20~30%前後、卸売業で10~15%前後とされています。
また、企業の規模が大きく、売上規模が大きくなるほど、粗利率は小さくなる傾向にあるとされています。

粗利の向上方法と活用方法

算出した粗利は今後の経営戦略に役立てていくことが重要です。


粗利の向上方法
粗利を向上させるには、以下2つの方法があります。

販売量・販売単価を上げる
粗利は販売量を増やすことで向上させることができます。
例えば、販売の際は主力製品に注力する、主力製品とセットで販売できる商品を提供するなど、販売方法を工夫する対策を検討してみましょう。
また、そもそもの販売単価を上げることも効果的です。
近年、増税や人件費の増加から商品を値上げする企業は増えています。
値上げには抵抗があるかもしれませんが、自社の商品・サービスに見合ったものとして見直してみることも重要です。

売上原価を下げる
粗利は、売上原価を下げることでも向上させることができます。
無駄な仕入れや製造工程がないか、より適した仕入先はないか、自社で作成できるものはないかなど、多面的に分析することで、削減できる部分が見つかることがあるでしょう。
このような確認は一度きりではなく、定期的に行うことが重要です。


粗利の活用方法
粗利は、事業全体はもちろん、部門、担当者、得意先別といったいろいろな切り口に分けて分析することができます。
粗利と営業利益、粗利と経常利益など、他の利益と比較することで、自社の中でどの段階での費用を改善すべきかを明確にすることもできます。
過年度の自社の状況と比較してみるのはもちろん、業種ごとの平均的な粗利率を参考に、自社を同業他社の状況と比較してみることも有用です。


営業担当者にとっての粗利
商品・サービスの販売を行っている場合、営業担当者の目標や評価指標は、売上を1つの基準として設定することが多くあります。
ただし、売上のみ向上していても、費用に着目できなければ事業は低迷してしまいます。
この場合、粗利は売上に直結した利益でありながらも、売上原価の情報も反映されていることから、営業にとっての目標値として適しているといえます。
また、粗利を従業員数で割り算した「1人あたり粗利益額」も、従業員が1人あたりどれぐらいの利益を生み出しているのかを示す指標として活用されています。
1人あたり粗利益額が高い担当者を評価するなどの方針を採れば、社内でのモチベーションアップにつなげることもできるでしょう。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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粗利は企業の売上と直結した利益ですので、全社員が意識することで経営を安定させるきっかけとなります。
また、財務分析を行う際には、今回紹介した粗利と併せて、営業利益などの他の利益も組み合わせて行うようにしましょう。

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